琥珀色の戯言

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【読書感想】カイジ「命より重い! 」お金の話 ☆☆☆


カイジ「命より重い! 」お金の話

カイジ「命より重い! 」お金の話


Kindle版もあります。こちらの方が安いのですが、マンガの部分は紙のほうが見やすそう。

カイジ「命より重い!」お金の話

カイジ「命より重い!」お金の話

内容(「BOOK」データベースより)
お金の本性を知らない、たくさんの“カイジ”へ。この世には、勝つ人だけが知っている残酷なルールがある。なぜ強者は勝ち続け、敗者はいつまでも脱出できないのか。こんな社会を生き抜く、圧倒的勝利の法則を見抜け。


【目次より】
序章 ようこそ、クズのみなさま
第1章 給料が少ない……? 現実を見ろ!
第2章 金は、自分で守らねばならないのだ!
第3章 知らないやつは勝負の前に負けている!
第4章 圧倒的勝利を呼ぶ、マネー思考を身につけろ!
終章 お金に振り回されないために、本当に必要な力


表紙の『カイジ』が、とにかくインパクトありますね。
カイジ』好きなら、思わず手にとってしまいそう。


この本の冒頭に、こんなクイズが出てきます。

【問題】あなたは、銀行から年利12%で100万円借りました。銀行から「返済が大変でしょうから、返済は月々1万円でいいですよ」と言われます。毎月の返済額が減るのは、あなたにとっても嬉しいことであり、さっそくその条件で契約しました。さて、あなたが借金を返済し終わるのは、何年後のことでしょうか?
(※なお、金利は「単利」とする)


A 5年
B 8.3年
C 10年


さて、いかがでしょう? 電卓を使わなくても、暗算で解ける問題です。


答えは書きませんので、「わからない」という方は、書店などで確かめてみてください。
端的に言ってしまえば、この【問題】にすぐ答えられる人は、この本を読む必要はないと思います。
答えがわからない、あるいは自信が無い、間違っている、という人向けの「お金、とくに借金に対する啓蒙本」なんですよねこれ。
僕にとっては、「すでに知っていることばかり」なのですが、そもそも、40過ぎのオッサンにとっては「知らないほうがおかしい」ような内容です。
しかしながら、気軽に「キャッシングという名の借金」を気軽してしまいがちな20代の若者にとっては、けっこう「知らないこと」ばかりなのかもしれません。

【問題】日本で消費者ローンの利用経験者数は、どのくらいいるでしょうか?


(1)100人に1人
(2)35人に1人
(3)8人に1人


 正解は、(3)です。

消費者ローンは、けっして「特別な人にだけ縁があるもの」ではないのです。

 さらに注目すべきは、消費者ローンの利用者についての次のような調査報告です。


「銀行・信用金庫などの金融機関」で借入を行い、与えられた利用枠が一杯になった段階で、次に「クレジットカード会社・信販会社」、最後に「消費者金融会社」で借入を行うという傾向にあるが、20代の若年層に関しては、借入当初から「消費者金融会社」を利用する傾向が高く、「金融機関」の利用は低位にとどまっている(「消費者ローン利用者・利用経験者の借入に関する意識調査」NTTデータ経営研究所)

若いと、利息などはあまり考えず、「借りやすいところ」から、つい借りてしまいがちなんですね。
一回の金額がさほど大きくないし、審査がラクというのは大きいのでしょうけど、ちょっと借りたことがきっかけで、多重債務者になっていくケースは珍しくありません。

 テレビCMなどで、各クレジットカード会社は、毎月の返済額が少なくなるような”リボ払い(分割払い)を勧めています。「ゆとりを持って返済」「毎月の返済額が変わらないので安心」「リボ払いに変更すると、ポイントが2倍!」などというフレーズで、カード利用者にリボ払いを促しています。


(中略)


 怖いのは、CMなどで宣伝されているリボ払いは”元利均等返済”だということです。返済期間が延びるにつれて、計算上の利子がどんどん増えていくと、どうなるでしょうか?
 そう。毎月の返済額に占める利子の割合が増える、つまり元本の返済がなかなか進まなくなるのです。
 さらに、このときの利息は”複利”で計算されています。より一層、利子が増え、完済しづらくなるのです。まさにどろ沼です。

 クレジットカード会社からすれば、威力のある”複利”でできるだけ長い間、借金していてもらいたいのです。だから”リボ払い”を勧めているわけです。決して消費者のためを思っているわけではありません。
 消費者金融の利用者は、じつに9割がこの”リボ払い”方式でお金を返済していたといいます。
 そして、当然返済ができなくなり、借り手は多重債務者の道にまっしぐらです。


お金を貸すほうも商売ですから、いかにして「相手をうまく言いくるめて、あるいは良い条件のように見せかけて、貸す側にとってメリットの大きい貸し方をするか」を工夫しています。
銀行だから、大手クレジット会社だから「良心的」とも限らないんですけどね、最近では銀行と消費者金融会社が提携している場合もありますし。



こういう「借金の世界」って、「1万円もこの台に入れてきたのだから、そろそろ出るはずだ、と、際限なくパチンコ台にお金をつぎ込む人」には「借金に関する知識」がほとんどなくてカモになり、「わかっている人」は同じお金を借りるにしても、比較的マシな条件で借りることができるわけです。
ひたすら、「二極化」してしまう。


「お金の借り方」というのは、知らなければ食いものにされ、知っていればそれなりに利用できる。
まあ、借りなくてすむのがいちばんだし、「自分では知っているつもり」で、ドツボにハマってしまうことも、少なくないのでしょうけど……
ギャンブルとかって、やめようと思っても、なかなかやめられないものではありますしね。


これまで、こういう「お金や借金に対する基礎知識に関する本」というのは、「わかりやすい」とされていたものでも、「ちょっと手持ちが乏しいから」「パチンコで負けてしまったから」と消費者金融のキャッシングに手を伸ばしてしまうような若者には敷居が高かったのではないでしょうか。
「文字だけの本なんて読めない」人もいるでしょうし。


しかしながら、この本は『カイジ』の名場面が散りばめられており、文章の量も少なめなので、そういう人たちにも「借金の知識の入門篇」として、手に取ってもらえる可能性が高いのではないかと思うのです。
僕はつい「『カイジ』を利用して、こんなありきたりの内容で荒稼ぎかよ」などと思ってしまうのですが、「これから大学に入学し、都会で一人暮らしをする息子に『ちょっとこれ読んでみれば?』と渡す本」として考えれば、このくらいでちょうどいい、というか、こうでないといけないんだろうなあ、と。
「このくらいのこと」を知っているのと知らないのとでは、大違いなので。
カイジ』を読んだことがあるのなら、そこですでに気づけよ、あのマンガ、カイジたちが、どんなにすごいひらめきや執念で「勝っている」ように見えても、実際は「帝愛という胴元の掌の上で踊っている」だけなのに……と言いたくもなりますけどね。
競馬で馬券を当てて、「ざまみろJRA日本中央競馬会)!」なんて快哉を叫んでいる人がいますが、誰がどのくらい勝とうが、胴元のJRAは痛くも痒くもないのと同じです。


あと、僕はこの著者の本を何冊か読んできたのですが、「これからどう生きていけばいいのか?」という問いに対して、「先が見えない世の中だから、自分磨きをしろ!」みたいな抽象的な結論しか書いていないことに、いつも拍子抜けしてしまいます。
竜頭蛇尾感大。
それはそうなんだろうけど、そんなことはいまさら言われなくても、みんなわかっていて、それでも先行きが不透明すぎて悩んでいるのに。
まあ、その部分はこの本の「メインディッシュ」ではないのですけど……


とりあえず、「これまで小遣い+バイト代で実家暮らしをしてきた高校生が、東京の大学に入って一人暮らしをはじめるときに読んでおいたほうが良い本」だと思っていただければ、間違いないかと思います。

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