琥珀色の戯言

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【読書感想】ひとりごはんの背中 ☆☆☆


ひとりごはんの背中

ひとりごはんの背中

内容説明
独身男女の部屋にお邪魔して、ごはんを作ってもらって、暮らしをのぞきまくる「厚顔ルポ」。お邪魔したシングルさんの家賃は、3万円台から43万円。職業は、OL、国家公務員、AV女優、教育コンサルタント、現役タレント、漫画家、帽子店経営者、元芸者、ヨーヨー世界チャンピオンなどなど。読めばたちまち、友だちの家でゆるーく飲みたいナ、と思わせてくれる2012年の必携書(?)です。


内容(「BOOK」データベースより)
シングルさんの部屋を訪ねて、いつも作っているごはんをいただき勝手にくつろぐ厚顔ルポ。21世紀のひとりぐらしの全貌がここに。

『モーニング』に連載されていた「ひとりぐらしの人の家にあがりこんで、その人が普段自炊しているご飯を作ってもらう」というコラムを書籍化したものだそうです。
僕は『モーニング』この5年くらいまったく手に取ったことがなく、この本は書店で偶然みかけて購入。
それにしても、「食」を話題にしたエッセイとかマンガって多いよなあ、なんて思いながら。


とりあえず、僕の学生時代の「ひとりぐらしの食事」は、かなり栄養価的にも、バリエーション的にもひどいものでした。
ほかの「ふつうの人」の実際はどうなんだろう、って、気になっていたのです。


この単行本には、37人(正確には37組、とすべきかも)の「シングルさん」が登場していて、けっこう手際よくつくられた「酒のつまみ系」の料理をつくる人もいれば、カップラーメンにお湯を入れるだけ、という人もいます。
いや、そういう趣旨の企画とはいえ、本当にカップめんを出してきた人がいるというのには驚いたのですけどね。


この本を読んでいると、やっぱり「デキる人は、ちゃんとした食事をしているなあ」あるいは「食事にもこだわりを持っている人が多いなあ」と考えずにはいられません。
僕が結婚して、子どもと一緒に生活をしていて痛感するのは、「子どもと一緒だと、人間は最低限くらいは規則正しい生活をするようになるのだなあ」ということです。
子どもは朝早く起きるし、朝食抜きにガマンなんてできないし、夜も素早く寝てしまいます。
そういう生活に、ストレスを感じることもあるのだけれど、たまに旅行に出かけていたりして、家でひとりで生活をしてみると、どんどん夜遅くまでネットサーフィンをしたり、偏った食事を摂るようになっていくのです。
ほんと、「家庭」っていうのは、うまくできているものなのです。
それ自体がストレス源となることはあっても、身体的には「健康的」なほうに人を導いてくれる。


この本は、僕が書店で見かけたときに期待したような「どこにでもいるようなシングルさんたちのリアルな食生活」を描いているとは、ちょっと言い難いのです。
こういう取材を受けてくれる人ということで、取材者たちの知人やその紹介、有名無名の芸能人、パフォーマーなどが多くを占めています。
個人的には、「もっとふつうの人が自炊した食事をみてみたかった」と思います。
途中からは、個性的な「シングルさん」が増えていき、料理よりも人のほうが主役になっていっているような気がしますし。


「27歳処女」という触れ込みの人の家で出てきた料理の話。

 ささみを一口食べる。ん、これは脂身? いや、ささみに脂身なんてないはず……。
「生ですよこれ? ハッハッハ」とキサラヅさん。
「えっ!! ほんとですか! 焼き直します!」
 ふだん料理しない人が少し工夫をするとなんらかの事故が起こる。「能町さんおなか痛くなってくださいよ〜おもしろいから」とキサラヅさんが無神経に言い放つが、翌日おなかを壊していたのは彼だった。ハッハッハ。


こういうエピソードって、「食べたものを紹介している」ようで、この部分だけで、この女性のふだんの暮らしぶりが伝わってきますよね。
ちなみに「処女」について、彼女は、こう話してくれたのだとか。

 彼女いわく――(1)セックスをしていないんじゃなくて、「『セックスしないをしてる』つもりになってきた。 (2)逆に私は貴重な存在かもと思っている。 (3)そもそも恋愛にくすぶっている私が1回だけ経験があるというのはアンバランスであり、それなら未敬遠のほうがいい。……とのこと!


ちなみに「外見的には問題があるとも思えず、いま話している限りふつうに明るい彼女が27年間男性経験がないというのは信じにくい」と能町さんは書いておられます。
それが「良い」とか「悪い」とかじゃなくて、「セックスしないをしてる」つもりになってくるもなのだなあ、なんて、ちょっと感心してしまいました。
世の中には、いろんな人がいるようで、そんなにみんな大きな違いなんてない。
その一方で、典型的な「ふつうの人」なんて、どこにもいない。


 タイトルやテーマから僕が勝手に思い描いていた「突撃隣りの晩ごはん」をシングルさんの家でアポなしで行う、という内容とは違っていましたが、この本って、なんだか「妙にダラダラと読み続けてしまう」のもまた事実。


 著者の能町みね子さんの「人見知りなのに、こんな他人の家に上がり込むような取材はイヤだ」というのと、「でも、やってみれば、毎回それなりにくつろいでしまっている」という姿には、いつも「飲み会なんて行きたくない」と思い、消極的に参加しているのに、いつのまにかその場にフィットしてしまっていることにうんざりしてしまう」という実感には、僕も共感できました。

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