あらすじ: 1961年、パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)は、ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)が長年熱望する「メリー・ポピンズ」の映画化について話し合うためにロサンゼルスに向かう。傑作児童文学の著者である彼女は気難しい性格で周りを困惑させる。スタッフたちはどうにかしてトラヴァースに映画化の契約書に署名してもらおうと心を砕くが……。
2014年12本目の劇場での鑑賞作品。
平日のレイトショーで、観客は僕も含めて4人でした。
ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』の誕生秘話。
この映画を観る予定の方は、サラッとでも、『メリー・ポピンズ』を予習しておいたほうが良いと思います。
たぶん、欧米では、説明する必要もない、誰もが一度は読んだことがある定番作品なのでしょうけど、僕は「昔読んだことがあるはずなんだけど、どんな話だったかなあ……」という状況で観てしまって、ちょっと後悔しています。
『メリー・ポピンズ』の内容と、トラヴァース夫人の「トラウマ」とのつながりが、物語の大事な要素なので、『メリー・ポピンズ』を知らないと、かなり置いていかれてしまうんですよね。
映画は、観客が『メリー・ポピンズ』を知っている、という前提で進められていくので。
トラヴァース夫人がエマ・トンプソン、ウォルト・ディズニーがトム・ハンクス、助演にポール・ジアマッティやコリン・ファレルと豪華な役者たちが揃っており、地味で淡々と進みつつも、説得力がある映画だと思います。
エマ・トンプソンさんの意地悪ばあさんっぷり(冒頭のシーンで、さかもと未明登場かよ!と内心ツッコミを入れてしまいました)や、今回はエマ・トンプソンさんの演技を受けて立ちながら、しっかり自分の見せ場もつくっているトム・ハンクスさん。
ポール・ジアマッティさん、今回も良い仕事してるなあ、と。
それにしても、『メリー・ポピンズ』の制作って、こんなに難航していたのか……
世の中に原作になりそうな話なんて星の数ほどあるのだし、僕だったら「こんな意地悪ばあさんにつきあってられないよ!」って投げ出してしまったに違いありません。
「これを絶対につくる!」という執念みたいなものがないと、創作ってできないのだよなあ、と思い知らされたような気がします。
そして、創作のエネルギーは、必ずしもハッピーなものではないというか、むしろ、井戸の底から手の届かない星に手を伸ばすようなものなのかな、と感じました。
作品をつくることは、たぶん、その人自身にとっても「昇華し、自分を癒すこと」なんですよね。
あと、パパは踏ん張らなくっちゃな、と。
子どもに好かれても、嫌われても、「影響」を与えてしまう存在なのだから。
僕自身も昔から、想像の世界に逃れがちな人間だったので、なんだかトラヴァース夫人のお父さんのことが、他人事とは思えませんでした。
僕は「フィクションに人が救われる話」に弱いんだよなあ。
けっして派手ではないのですが、滋味あふれる作品だと思います。
これを観ると、映画『メリー・ポピンズ』を観てみたくなりますね。