- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/02/01
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
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内容(「BOOK」データベースより)
映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込みあいに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りを賭けた大勝負に出るが―!?疫病神コンビVS詐欺師VS本家筋。予想を裏切る展開の連続で悪党たちがシノギを削る大人気ハードボイルド・シリーズの最高到達点!!
第151回直木賞受賞作。
作者の黒川博行さんは、愛媛県出身の65歳で、高校の美術教師を経て作家になり、警察やヤクザ、ばくちなどをテーマにしたハードボイルド小説を書き続けておられるそうです。
この『破門』は、ヤクザの桑原と建設コンサルタント(ということなんですが、僕には正直、この人が「カタギ」とは言いがたいのでは……と思いながら読んでいました)の二宮の「『疫病神』コンビ」を主人公とした5作目。
僕はいままで黒川博行さんの作品は未読だったのですが、今回の受賞をきっかけに手にとってみたのです。
「ハードボイルド」に特に思い入れはなく、「ヤクザもの」は苦手なので、受賞作じゃなかったら、縁がなかったのではないかなあ。
シリーズ5作目ということで、『疫病神』シリーズの1作目から読んだほうが良いのではないか、と逡巡したのですが、このシリーズに関しては、この『破門』から読んでも、とくにわかりづらいところはありませんでした。
シリーズをずっと読んできた人ならば、ニヤリとするような場面もあるのかもしれませんけど。
この作品、読んでいると、なかなか楽しいんですよね。
僕はヤクザ嫌いですが、黒川博行さんって、会話を描くのが上手い人だなあ、と。
けっこう長くて、驚くようなトリックやどんでん返しはなく、ストーリーの起伏にも乏しいこの小説が面白く読めるのは、会話の面白さと「現代ヤクザ事情」がリアルな感じに織り込まれているから、なのだと思います。
この男も先行きは暗いな――。まともなシノギのないヤクザが、いったいどうやって食っていくのだろう。川坂会直系組織の組員とはいえ、使い走りのその日暮らし、下っ端のまま一生を終えるのは眼に見えている。勤労意欲なし、金づるの女なし、ひとがいい分、貫目に欠ける。
いまヤクザの下っ端が食えるのはシャブの売買と振り込め詐欺くらいだろうが、シャブは捕まると初犯でも三年から五年の実刑、振り込め詐欺は数百万円の初期投資が要るという。
そう、セツオのようなヤクザには成り上がっていく道筋がない。経済活動というステージにおいて、個人事業者であるヤクザは堅気の何倍もシノギが厳しいのだ。
まあ、だからといって、ヤクザに「共感」もできないんですけどね……
僕としては、前半は二宮と桑原の会話のやりとりはテンポ良く読めて、なかなか面白かったのだけれども、後半3分の1くらいは息切れしてきて、「ああ、また監禁と暴力と金の話か……」と、食傷気味ではありました。
任侠の世界が好きな人にはたまらないのかもしれないけれど、ストーリー的には「長さの割には、何も起こらない小説だなあ……」とも思ったんですよね。
登場人物は滅法面白いのだけれど、物語は、あまり面白くない。
鈴木敏夫さんが仰っていた、この話に繋がってくるのかもしれません。
じつはショックだったのは別のこと。若い人に多かった感想です。「何だ、月へ帰っちゃうのか」、こんな感想を言ったのは一人二人じゃない。つまり単にストーリーを追っている。表現を気にしていない。ぼくはいままでずいぶん映画を観てきて、ストーリーなどはおぼろげだが、シーンはいまでもはっきり思い出せるという経験をしてきています。表現の仕方にこそ影響を受けてきた。そういう観方をしないのか。映画に期待しているものがまるで違ってしまっていることにショックを受けたんですよ。現代は、どう表現しているのかがすっとんでしまって、お話の複雑さのほうにだけ関心が向いている、そんな時代なんだなということを、あらためて思い知らされました。
僕も「ストーリーを追うだけで、表現の力に見向きもしない受け手」なのかな……
桑原という、ものすごく暴力的で強面なのだけれど、なんだか憎み切れない、絶滅危惧種的な「ザ・ヤクザ」という人物を「面白い男だなあ」と感じることができれば、それで十分、なのかもしれません。
この桑原って人物、なんだか『龍が如く』の真島吾朗みたいなんですよ。
って言われても、『龍が如く』を知らない人も多いとは思うけど。
「なるべく関わらないようにしたい」と言いつつ、やたら桑原に金をせびりまくる二宮との関係の腐れ縁っぷりは、「ああ、なんかこういう『非建設的なんだけど、離れられない二人』っているよね」と、妙な説得力がありました。
黒川さんは、どんなふうに取材をして、こんな会話とか、凹凸のある人間像をつくりだしているのだろうか。
率直なところ、「よくできているとは思うけれど、僕にはあまり向いていない小説」であり、「ストーリーの起伏よりも、人間関係を丁寧に描いた小説が好きな人のための作品」だと思います。
- 作者: 黒川博行
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