偉大なるコナミのMSXゲーム伝説 週刊アスキー・ワンテーマ<週刊アスキー・ワンテーマ>
- 作者: MSXアソシエーション
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/03/19
- メディア: Kindle版
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内容紹介
“MSX30周年企画”の一環として週アスPLUSにて連載された記事を1冊に。いまや世界で人気の『メタルギア』シリーズ第1作や、当時のスペックでアーケードゲームを移植して度肝を抜いた『グラディウス』など、誰でも知るタイトルから超マニアックなめずらしいタイトルまで54本を当時の思い出とともに今改めてプレイしつつ語る。コナミのMSX用ゲームをこれだけ網羅した本は日本初。書き下ろし「WiiやPCで、今、遊べるコナミのMSXゲームたち」も収録。
任天堂やセガなど、そのハードをつくっていたメーカーを除けば、ひとつの機種(といっても、正確にはMSXとMSX2の2系統)への、ひとつのメーカーのゲームソフトが、ここまで「伝説化」し、その機種自体の歴史を語ることにもなっている事例は、おそらくこの「コナミのMSXソフト」だけではないでしょうか。
日本のテレビゲーム史において、こんな「幸福な関係」が築かれていたのは、あとは「X68000と電波新聞社」くらいではないかなあ、と、X68000ユーザーとして、懐かしく思い出したりもしながら。
ハードの性能の限界すら、何度も超えてしまっていたという意味では、「コナミとMSX」というのは、まさに「最強のタッグ」だったのです。
僕の中学校時代の親友にもMSXユーザーがいたのですが、彼がMSXの『グラディウス2』のデモを、本当に嬉しそうに僕に見せてくれたときのことを、今でも思い出せます。
コナミのMSXゲームというのは、「MSXを持っていることを他機種ユーザーに誇りたくなるような存在」だったんですよね。
当時、ゲームではファミコンに押され、マイコンとしての性能では、NECや富士通、シャープの値段が高い機種にはかなわなかったMSXですが、だからこそ、ユーザーには「MSX愛」みたいなものがあったんですよね。
この本、『週アスPLUS』の連載を電子書籍にまとめたものなのですが、コナミは、本当にたくさんのMSXゲームを出していたということがわかります。
前述した『グラディウス2』や『メタルギア』『スナッチャー』などの歴史に残る名作から、あまり知られていない作品まで。
ところで、コナミのMSXゲーム第一作って、ご存知でしょうか?
僕も知らなかったのですが、1983年に発売された『わんぱくアスレチック』が、最初だったそうです。
いまからもう、30年以上前の作品なんですね。
同じ年には『けっきょく南極大冒険』が出ています。
このゲーム、いちおう「繁育シリーズ」として発売され、南極大陸の地理が覚えられるとうことで、“I Love 地理”というキャッチコピーがついていたそうです。
僕が遊んだのはファミコン版なのですが、この30年間、南極大陸の地理の知識が必要とされた記憶は、たぶん一度もありません。
それでも、当時「マイコンは勉強に『も』使える」「これからはコンピュータの時代だから」などと親を説得した子供は、僕だけではないはず。
さてゲームはペンギンを左右に動かすこと、ボタンでジャンプすることの2つ。アザラシにぶつかったりクレバスにハマったりするとタイムロスとなり、時間内にチェックポイントにたどりつけないとゲームオーバーとなる、ごくごくシンプルなもの。ちなみに旗と魚はただの得点である。ファミコンでは“ペギコプター”なるヘンなアイテムが追加されたが、MSX版には存在しない。そのこともありゲームとしては単調だが、スケーターズワルツの軽快な曲に乗せてひたすら滑り続けているとなんとなく癒やされてしまい、ついつい遊び続けてしまうタイプの魔性のゲームであった。この作品でペンギンはコナミの象徴となり、以後長らくキャラクターとしてあちこちに出演していくのだった。
そうか、MSX版にはなかったんですね、“ペギコプター”。
単調なんだけど、なんだかハマるゲームではありました。
MSXでは、続編の『夢大陸アドベンチャー』も発売されています。
この本を読んでいて嬉しくなるのは、著者が生粋のMSX好きで、紹介しているゲームを実際に遊んでいたのが伝わってくることなのです。
昔のゲームを紹介した本は、少なからず存在しているのですが、中には、他機種版のことが書いてあったり、実際に遊んでいれば(あるいは、書く前にちゃんと確かめておけば)ありえないようなレビューも散見されます。
ひとりのライターが、ある機種のすべてのゲームに通じている、ということが現実的にはありえないのはわかるのだけれど、やはり、そういうのって興ざめしてしまうわけで。
「コナミのMSXゲーム」というのは、「ひとりが遊びきれるくらいの分量になんとか収まっていて、それをちゃんとひとりで書ききっている」というのが、この本が類似の書籍に比べて抜きん出ている理由なのではないかな、と。
『グラディウス2』の記事なんて、30年後から過去をみて書いたのではなく、「当時のMSXユーザーの興奮がそのまま再現されている」のですよね。
1987年夏に発売された本作は、今も忘れられないほど大きな衝撃をMSXユーザーたちにもたらした。前作『グラディウス』も初の1MビットROMを使用し、MSXの限界に挑戦した名移植とうたわれたが、その続編として登場した『グラディウス2』は前作の名声に恥じないどころか、ファンの想像を超える圧倒的なグレードアップを実現したのである。輝く銀色の箱、オリジナルの箱絵。箱の裏には「グラディウス伝説、新たなる章へ…」、「MSX初 新開発SCC(ウェーブ音源LSI)搭載 全8音ポリフォニック音響の脅威」などなど、少年少女の心を躍らせるキャッチコピーの数々。前作の印象を覆す立体感のあるグラフィックと、MSX内蔵音源だけでは実現不可能な美しい音色と、それを最大限に活用した名曲の数々……と、ここでは到底書ききれない。
『グラディウス2』はMSXユーザーはもちろん、当時の各ゲーム雑誌でも大いに驚きをもって迎えられたのである。
僕も「MSXでこんなことができるのか、こんなかっこいい音が出るのか……」と心底驚きました。
「想像を超えるゲーム」って、なかなか出会うことがないのですが、MSXの『グラディウス2』は、まさにそんな作品だったのです。
デモの中で、「これ、悪役のヴェノムの主張のほうが正しそうな感じがする……」と思ったのも懐かしい。
当時は、まだまだハードの性能は低かったのだけれど、それだけの「伸びしろ」もあって、「こんなことができるなんて!」と驚くような技術やアイディアのゲームにいきなり出くわすことも少なくなかったのです。
値段も安いし、ゲームの画面も収録されているし、何より、読んでいると自分が中学生に戻ったような気分になれる、そんな本です。
僕はそんなに熱心なMSXユーザーではなかったけれど、当時のマイコンゲームに思い入れがある人にとっては、マストともいえる一冊だと思います。
次はぜひ、『レジェンド・オブ・電波新聞社』を!
PC-6001mkIIで『スペースハリアー』をつくった人は、今、何をやっているのだろうか。