琥珀色の戯言

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【読書感想】夫の不倫がどうしても許せない女たち ☆☆☆


夫の不倫がどうしても許せない女たち

夫の不倫がどうしても許せない女たち


Kindle版もあります。

夫の不倫がどうしても許せない女たち (朝日新聞出版)

夫の不倫がどうしても許せない女たち (朝日新聞出版)

内容(「BOOK」データベースより)
夫を監視し続ける女、手を挙げる女、自分も浮気をし返す女…裏切りは妄想を生み、やがて憎悪へと変わる―。夫婦が直面した破綻と再生を描く苦く生々しいノンフィクション。


 この本のタイトルには、ちょっと違和感がありました。
「夫の不倫がどうしても許せない」って、そういうのは「どうしても許せない」のが、「普通」なんじゃないのか?って。
 こうしてわざわざ一冊の本にするくらいだから、「なんだこれは……」というような事例が紹介されているのかと思いきや、読んでみると、意外とそうでもない。
 ありきたりの、悪く言ってしまえば、週刊誌の記事とか、「2chまとめサイト」とかにはゴロゴロ転がっているような「不倫された女性の体験記」がそれなりの数、収録されているだけ、という感じです。
 「不倫されたあと、どのように夫婦関係が修復されていったのか」「どう対応していくべきなのか」という「傾向と対策」的な話もほとんどありませんし、他の夫婦の修羅場を覗きみるという下世話な興味を満たしてくれるだけ、なんですよね。
 『朝日新聞出版』から出ているので、もう少しアカデミックな内容かと思ったのですが。
 「朝日新聞がここまで下世話な本を出した!」と、出版した側は考えている一方で、読む側は「こういうのは、もう飽和状態なんだけどねえ……」と。


 まあでも、こういう話って、読み始めると読めてしまうのもまた事実。
 長年連れ添った仲の良い夫婦でも、突然「魔が差した」り、妻と不倫相手の女性が仲良くなってしまう、なんていうこともある。
 

「なんだか様子がおかしいと思った」
 夫の不倫を疑うきっかけを問うと、多くの妻たちがこう答える。
 なんだか様子がおかしい。これはどういう意味なのだろう。女性たちに聞いてみると、夫の態度が決定的におかしいわけではない。だが、何かが以前と違うということらしい。いわゆる妻の勘、女の勘というのもか。
「私が最初におかしいと思ったのは、いつもならそのへんに置いてある夫の携帯電話が、テーブルの上からなくなったとき。家の中でもジャージのポケットに入れている。おや、と思いました」(45歳)
「私は夫の目の動きかなあ。ある日、『今日は遅くなるかも』と言ったとき、一瞬、目が動いた。前はそんなことなかったなと思って。何かがおかしい、と」(35歳)
「ある日の夫の『ただいま』という言い方が変だった。そのときはなんとなく聞き逃したけど、あとから思えば、あのころから夫は浮気していた」(40歳)
「週末だったかな、当時、6歳と4歳の娘たちと遊んでいる夫の眼差しが、いつもと違っていた。何がどう違うのかわからなかったけど。その一ヵ月後、夫が浮気していることが発覚した」(33歳)
 何かが違う、よくわからないけど違和感を覚える。そうしたいわゆる「妻の勘」と、夫の浮気が分かる前に、多くの女性たちが感じている。勘は侮れない。


 こういうのを読むと、「そういうものなのか……」と驚いてしまいます。
 一挙手一投足の「違い」にも、勘づくものなのか、と。
 その一方で、こういう話を聞くたびに「誤解」とか「濡れ衣」の割合も、少なからずあるんじゃないかな、と思うんですよ。
 こういう本では、「実際に浮気していた事例」が語られることが多いのですが「疑心暗鬼になっていて、勘違いしてしまった」というケースだってあるはず。
 この本のなかにも、「実は誤解だった」というエピソードも出てきて、「疑いはじめると、なんでも『クロ』に見えてくる」ことはあるようです。


 そして、悪いことはできないなあ、とも。

 三ヵ月ほどたったころ、金曜日に一泊の出張だと言って出かけた夫が土曜の夜になっても帰ってこなかった。その日、新幹線が雪で止まり、最終列車は東京駅にたどり着けない、というニュースがあった。
 車内の人が撮った映像なのだろうか、偶然、ほんの一瞬だが、その車内に夫らしき人物が見えた。
「隣に女性がいたのも視野に入りました。その瞬間、私の中で何かがキレた。どうして私だけが我慢しなければいけないのか。日曜日の昼ごろ、夫が帰ってきたときは子どもたちがいたから何も言えなかったんだけど、その晩、寝室で言いました。『私はあなたのなんなの?』と」


 事実だとしたら、これで浮気が露見するのって、すごい確率だよなあ、と、当事者には申し訳ないけれど、ちょっと感心してしまいました。
 新幹線が雪で止まり、車内の人が映像を撮影し、それが放送されたニュースを妻が観ているというのがすべて起こるって、まず起こりえないことではなかろうか。
 この運が、宝くじが当たるとか、万馬券がヒットするとかに働いていれば、よかったんでしょうけどね……


 ストレスがたまるとモノを壊しまくる女性や、「浮気返し」をする女性、夫を徹底的に「監視」する女性……
 これを読むと、一度「そういうこと」があると、配偶者との関係というのは、元通りにはならない、ということがわかります。
 たった一度でも「なかったこと」にはできない。
 そこで「別れる」か、「傷を修復してやりなおそうとする」かは、人それぞれです。
 どちらが正しいとか、決められるものでもない。


 この本のなかには、こういう「男性側」の意見も出てきます。

「身も蓋もない言い方だけど、妻は夫のことを放っておいたほうがいいんじゃないですかねえ」
 友人から紹介された上野大輔さん(50歳)はそう言った。三歳年下の女性と結婚して20年になるが、彼には常に「恋人」の存在があった。今はつきあって5年になる年上の彼女と、つきあって1年の20代の彼女がいるという。
「この人素敵だなと思うと、つきあいたくなっちゃうんですよ。なぜひとりじゃないんだと友人からもよく言われるけれど、逆になぜひとりでなければいけないんだろうと思う。妻ともちゃんとセックスしてますよ。僕、妻のこと大好きだし。妻のいいところは僕を放っておいてくれること。彼女も仕事をしていて忙しいせいもあるだろうけど、僕の行動を探らないんです。もし彼女が外で恋愛していても、もちろん僕も探ろうとは思わない。外で恋愛することを、妻を愛することとは違うと僕は思ってる。みんな恋愛と結婚は別だと言うし、それは一理あるけど、もっと相手そのものを見なければいけないんじゃないかなあ」


 まあ、こういう人って、たまにいますよね。
 僕にとっては「ああ、違う生き物がいるなあ」って感じなのですが。
 

 とりあえず、僕にとっては、不倫ってめんどくさいよな、という気分になる本でした。
 そういう人にかぎって、ということもあるのだろうから、「絶対にしない!」と言い切ってしまうと、それはそれでかえって嘘くさくなりそうだけど。


 新井貴浩さんも「生涯カープ!」って言って出ていって大バッシングされ、結局、野球人生の晩年にカープに戻ってきたし、それはそれで、カープファンに「おかえりなさい!」って言われているものなあ。

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