- 作者: 山田拓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/01/16
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 山田拓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/01/26
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内容紹介
岐阜県最北端の飛騨市に、世界80ヵ国から毎年数千人の外国人観光客を集める人気ツアーがある。その最大の売りは「なにげない里山の日常」だ。小学生のランドセル姿に、カエルの鳴き声の拡がる田んぼに、蕎麦畑の中に立つ古民家に、外国人観光客は感動する。なぜ、なにもない日本の田舎が「宝の山」になりうるのか。地域の課題にインバウンドツーリズムで解決を図った「逆張りの戦略ストーリー」を大公開。
著者の山田拓さんは、1975(昭和50)年奈良県生まれで、株式会社美ら地球の代表取締役として活躍されています。
山田さんは、この仕事をはじめるまでの半生について書いておられるのですが、大学卒業後、アメリカのコンサルティング企業の日本法人に就職し、2年間アメリカで勤務したあと、同業他社に転職。アウトドアが好きで、趣味はトライアスロン。
うわあ、なんか外資系エリートっぽいキャリアだ……と身構えて読み始めたのです。
山田さんは、同時多発テロをきっかけに、人生について見つめなおし、当時の恋人であった現在の奥様とともに、ブログやサイトを更新しながら世界各国を500日以上放浪した末に、「日本の田舎に住もう!」と考えるようになったそうです。
海外でのさまざまな体験で、あらためて、日本の魅力が見えてきた、ということもあって。
山田さんが飛騨市に住むことになるまでには、さまざまな紆余曲折がありました。
実際にそういう行動を起こしてみると、人口が減っているはずの地方でも、都会からの移住者への風当たりはかなり強かったのです。
観光協会のアドバイザーに就任したものの、市長が変わると方針も変わり、それによって、前市長の肝いりだった自分の仕事も否定される、という、理不尽な体験もされています。
僕だったら、もうこんな田舎、いやだ!と投げ出してしまうこと必定なのですが、山田さんは、その熱意と行動力で、少しずつ地域を動かしていくのです。
これを読んでいて痛感するのは、どんなに素晴らしいアイディアをもっていたとしても、それを実現するのは簡単ではない、ということなんですよね。
2009年の秋に、『美ら地球』は、「飛騨里山サイクリング(HSC)」という自転車で里山をめぐるガイドツアーをスタートしたのですが、のちに世界中のガイドブックで高評価を集めることになるこのツアーも、最初は集客に苦労したそうです。
口コミ、といっても、参加者がいなければ、口コミで広めるのも難しいし、メディアやウェブ広告もコストの割に反応が乏しい。
色々と思案しましたが、とある答えにたどり着きました。現場で模索するスタッフと議論しているなかで、おとなり飛騨高山の陣屋の前で退屈そうに時間をつぶしている外国人が少なからずいるということに気づきました。前評判を聞いて高山に来たけれど、古い町並みと朝市が終わったら、あまりやることがない……と佇んでいたわけです。
私たちHSCの拠点である飛騨古川は、飛騨高山からJR高山本線の普通列車で3駅、特急に乗ると1駅の距離にあります。「よし!じゃ、陣屋の前の外国人に声をかけて電車で来てもらおう」ということにしました。
ところが、こちらからしたら「電車で3駅」でも、観光客側にとっては、そのくらいの距離でも、予備知識のないツアーのために移動するのは抵抗があるようで、なかなか参加してくれない。他のスケジュールも詰まっているし……ということで、著者たちは、さらに次の手を打ちます。
そこで、「電車に乗せるのがそれほど大変なら連れて帰っちゃおう!」と、送迎用のハイエースで高山陣屋に横付けすることにしました。そこでガラリとスライドドアをあけて、中からツアーの写真を見せて、外国人旅行者に手招きをするワケです。名付けて「美ら地球 ポン引き営業」。暫くの期間、地道にこれを続けてファースト・カスタマーを獲得することにしました。おかげさまで、こういった方々がツアーに参加してくれて、そのあと口コミを書いてくださるようになり、喜びの口コミコメントが集客につながるという流れが少しずつ太くなってきました。
今でも私たちの集客戦略は、こういった飛騨高山に到着された方々を獲得したり、海外の現地エージェントを訪問したりする地上戦と、ウェブを活用した空中戦の両方です。
個人旅行の時代だ、そうなればウェブマーケティングだ、という論調は多く聞こえてきますが、必ずしもウェブだけで集客が完了するわけではありません。特にファースト・カスタマー獲得は、その地の実情に合わせた現実的なやり方があると感じています。
ウェブでの宣伝や口コミが大事!
なんでこんな素晴らしいツアーなのに、みんな参加してくれないんだ!みんなの見る目がないのだから、しょうがない……
ネット時代の宣伝・広告って、逆に「ネットに頼りすぎていて、現場をみていない」ように感じることが多いのです。
こちらからの「売り文句」ばかりを押し付けて、相手の事情や希望に耳を傾けず、「こんなに良い商品なのに」と愚痴を言うだけ。
著者たちの強みというか、すごいところは、「客引き」なんていう、泥臭いやり方にまで踏み込んでいったことだと思うのです。
いきなり駅前で「私たちのツアーに参加しませんか?」なんて車に連れ込まれそうになったら、僕なら逃げるけど。著者たちが英語に堪能であったことも、大きな武器になったのでしょう。
田んぼの景色は本当に世界中の人々を魅了するようで、中心市街地から農村部に抜けた瞬間、外国人のゲストたちは驚嘆し、写真を撮りまくっているとガイドたちが教えてくれます。「なぜに田んぼがそこまで?」と感じる人もいるかもしれませんが、落ち着いて考えると納得がいくこともあります。私たちのゲストの大半は欧米系の方々で、生活空間では麦畑は見慣れた景色かもしれませんが、水田は存在しません。確かにフィリピンのイフガオの棚田のような世界遺産級の水田も世界中には存在しますが、世界遺産でなくても見慣れない水田は十分魅力的に映るようです。
また、田んぼの中に棲むアマガエルも超人気キャラとなっています。「本当にカエルが人気キャラなのだろうか?」。正直に言うと、私自身も抱いた感想ですが、ガイドたちから聞くと皆が口を揃えて「YES」と言います。
少し考えると納得がいく部分もあります。私は数年前にコスタリカという国を家族で訪れました。その際、青色、赤色、オレンジ色のカエルを見て、我が子とワイワイ騒いだ経験があります。こういう感覚からすると、「日本には、こんなタイプのカエルがいるのか!」というのは新鮮な発見になりますし、中には自分の生活圏にはカエルがいなくて初めて見る方もいるわけです。そうすると、カエル一匹でもかけがえのない宝、観光資源と捉えられるわけです。
この手のエピソードは枚挙に暇がありません。橋の上で川の流れを5分以上見つめて「何故にこのエリアはこれほどまでに水が豊かなんだ」とつぶやくオーストラリア人、「作物が身近になっているこの風景はなんと美しいのだ!」と感嘆するシンガポール人などなど、ひだびとが「当たり前」「なんもない」と謙遜する飛騨の日常風景は、実は世界中から訪れる方々から見れば、宝の山と言ってものではと思います。
こういう感覚って、自身も世界を旅してきた著者だからこそ、「実感できる」のかもしれませんね。
僕も何か国か旅行してみたのですが、飛行機で空港に到着する前に上空から眺めるその国の「概観」はそれぞれ違っています。
そして、日本の田んぼのような、整った緑に覆われた風景というのは、他の国では珍しい。日本人にとって砂漠や大渓谷が「絶景」であるのと同じように。
著者は、地方で仕事をしていく上での難しさについて、さまざまな角度から述べておられます。
人口減少著しい地方部においては、可能性溢れる新たなビジネスを創る際に大きなネックとなるのは、人材の確保であるといえます。この課題は年々厳しくなっているように感じます。
資源やアイディアがあっても、「人」がいない。
人がいないので、アイディアがあっても、実行に移せない。
なんのかんの言っても、優秀な人材の多くは、東京をはじめとする都会をめざすことが多いのです。
地方の活性化を実現した一例であるとともに、地方が抱え続けている問題を浮き彫りにしてもいる本だと思います。
- 作者: デービッド・アトキンソン
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2017/07/07
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デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
- 作者: デービッドアトキンソン
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/06/05
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- 作者: 藻谷浩介,山田桂一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/11/25
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