- 作者: 木村俊介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2018/03/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindlle版もあります。
- 作者: 木村俊介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2018/04/01
- メディア: Kindle版
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内容紹介
『漫画』と読者を繋ぎ続ける「見えない糸」の正体を探る、創作読本。
荒川弘、いくえみ綾、海野つなみ、冬目景──彼女たちが語る《手の痕跡》 いまや女性漫画家による人気作、話題作を見ない日はないほど、ここ十数年で進化、成熟していったのが「彼女たちによる」仕事と思われる。彼女たちが何を開拓してきたのかを見つめることは、これまでの漫画表現に何が起きてきたのかを深く感じ取ることにもつながるのではないか?「仕事」として漫画家を〈選択〉し、これまで〈継続〉されてきた『ものづくり』の神髄に、稀代のインタビュアー・木村俊介が迫る一冊。
木村俊介さんのインタビューは面白い。
今回は、荒川弘さん、いくえみ綾さん、海野つなみさん、冬目景さんという4人の人気女性漫画家に、漫画家になったきっかけから、自分の作品とどう向き合ってきたか、創作について考え、模索してきたことなどについて、丁寧に話を聞いておられます。
木村さんの発言は出てこずに、漫画家たちの独白調で書かれていて、そばで話をゆっくり聞いているような感じがするのです。
読みやすい、でも、すごく奥が深い。
海野つなみさんは、こんな話をされています。
漫画は絵が大事なんだよなぁ、とつくづく実感したのは、『逃げるは恥だが役に立つ』の本編のほうの最終回を描いた時です。それも、主要な登場人物たちが、ふたりでずっと喋っているお話だったんですけれども。
最終回で、これまで展開してきた議論を畳むところでもあるんだから、凄く大事な場面でした。作品としては、対話の内容も重要だから、ふたりで喋り続ける場面を避けるわけにはいきません。
だから、自分で納得して描いたあとでも、アシスタントさんに見せて、「漫画の最終回として、大丈夫だろうか」という方向は、細かく確認しました。それで、やっぱりこれでいけるだろう、となった。
そうして描いたら、対話のコマとコマの間に、「あー」みたいにつぶやく絵だとか、喋っている場面の横で「確認よーし」みたいに入る絵だとか、ちょっとした絵を入れることで、ずいぶん読み味が変わるものなんだな、と痛感したんです。
そうした絵を入れたら、読みながら、呼吸ができるんです。何でもないような絵なんだけれども、入れるのと、入れないのとでは、ぜんぜん違う。
だから、なるべく絵を入れて、一拍ぶん、間合いを外してみたりすることで、呼吸をしながら対話を読み込めるように描いたんですけれども。
漫画家へのインタビューって、「漫画家になった理由は?」とか、「作品で伝えたいことは?」なんていう内容が多いのですが、木村さんは、4人の「絵や漫画を描く職人としてのテクニック」について、かなり深く訊いておられます。
この4人の共通点としては、長いキャリアのなかで、絵の描きかたについて、自ら工夫し続けていること、そして、とにかく、絵を描くことが好き、ということが挙げられます。
読みながら僕が感じたのは、彼女たちが描いている世界は、自ら体験したものではなく、「妄想」や「想像」に基づくものである、ということなんですよね。
荒川弘さんは、漫画家になる前に、実家で農業をやっていたので、実体験を作品に活かしておられますが、それは例外です。
いま、漫画という競争の激しい世界でプロとして生き残っている人たちの多くは、「子供の頃から、漫画ばかり描いていた人たち」なのです。
若いうちにデビューして、そのままずっと、さまざまな作品を描き続けている。
いくえみ綾さんへのインタビューより。
中学、高校と、漫画ばかり描いていて仕事をしていたのに、漫画では、きらきらした学園生活を描いてきているんですけどね……。
でも、やっぱり、漫画で表現した学園生活も、「まったくの作りもの」ではなかったんですよね。実際に、漫画の中で描いたような楽しい生活を送っているともだちは、周囲にたくさんいましたから。
この人たちは、きっと、こういう感じで過ごしているんだろうな、と日常的な断片から想像をふくらませて、漫画に描くことはできたんです。そんなふうに、想像していく具体的なきっかけがあれば、物語は何でも描けると言うか……。
基本的には、物語というのは妄想ですからね。妄想することは、やっぱり、子どもの頃からずっと好きだったような気がします。
高校を出た後には、ともだちと遊びに行くのが楽しかったですね。一緒にライブに行ったりしていました。その楽しさは、当時の漫画にも、ちょっとしたシーンとして反映させたりしています。
そもそも、漫画として「これが描きたい」とか「このメッセージをこめて」というものがあるもののほうが「上」というわけでもないように思います。……ここで私の言っている意味が、ニュアンスまで伝わるといいんですが、物語というのは、これが描きたいとかいうことから離れたとしても、本当に、「物語そのもの」で自立しているものなんですよね。
人生において、漫画家自身は経験していないような、いわば「妄想」の物語に対して、現実の問題に苦しんだり、悩んだりしている人たちが「共感」したり、「勇気づけ」られたりしている。
もちろん、赤ん坊には物語はつくれませんから、それなりに経験値をためなくてはいけないところはあるのだけれども、必ずしも、現実でさまざまな体験をしていることが、すぐれた作品につながるわけではないのです。
むしろ、想像の産物だからこそ、読者を「キュンとさせる」ことができることもある。
現実って、良くも悪くも、残酷で平凡なものではありますし。
荒川弘さんの回より。
『銀の匙』でも、本当にきつい時には、逃げてもいいんだ、というようなメッセージは、ストーリーの中に忍ばせています。
「逃げてもいいんです」「ありありです」というような余裕のあるセリフで伝えたのは、まじめに言ってしまっても、ぎりぎりまで追い詰められた人は、かえって逃げられなくなるからです。
作中にも描きましたが、人って、逃げるのにも体力がいるんですよね。だから、体力を、残り1ドットでもいいから残しておかねばならなくて。
苦しんでいる方には、その状態で、自らを生かしてくれる作品やセリフに出会ってもらえるといいと思うのですが……。人生からドロップアウトしてしまう方の話を聞いていると、逃げる体力がまったくない状態になって、どうにもならないようなので。
そうなれば、周囲がどれだけ励ましても、ドロップアウトしか見えない状態にもなるので、やはり、頼むから、1ドットでもいいから、その人に体力が残っていてほしいと思いますけれど。
だから、やはり娯楽を提供し続けたいんです。来週、連載の続きを読みたい、単行本の次巻を読みたい、アニメなら、来週も観たい……そうやって生きのびている人も、いますからね。
ゲーム好きの荒川さんらしい表現だなあ、と思いながら読みました。
なんというか、生きるためには、描かなければならない人がいて、読まなければならない人もいる。
作者と読者の距離って、僕が想像していたより、ずっと近いのかもしれませんね。
この荒川さんの言葉は、ものすごく率直なもので、結局のところ、「救える人は救えればいいと思うけれど、それには限界があることもわかっている」のです。
ほんとうの「どん底」にいる人を救う方法は、ないのかもしれません。
この本に出てくる4人の漫画家たちの話には、お金とか、現実での恋愛のことは、ほとんど出てこないのです。
そして、そのことが不自然に感じられないほど、彼女たちは、漫画を描くことに日々を費やしています。
「プロとして漫画を描きつづける」というのは、自分を漫画の神様に捧げることなのかもしれないな、と思いながら読みました。
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読者ハ読ムナ(笑) ?いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか?
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