- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/05/10
- メディア: Kindle版
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内容紹介
今、何を学び、どう生きるのか
時代を理解し、本質を見極めるために。
あなたがあなたらしく生きるための、「学び方」・「働き方」・「生き方」
池上先生と一緒に考えてみませんか。
「高校では知識を覚えることばかり……これで教養は身につくの?」
「受験勉強や部活に追われ、心の豊かさを見失っている」
「池上先生のように多くのテーマを考え話せるようになるには、どのようにアンテナを張ればいい?」
「最近は論文しか読んでいないんです……」 「大学を出てからも勉強したい」
「アメリカという国をどのように理解すればよいのでしょうか」
「日本企業の不祥事が相次いでいますが、経営は大丈夫?」
いま、国内外で不穏な空気と不透明感が広がる出来事が多く起こり、
私たちの未来への不安は増えていく一方のように感じられます。
本書では、世界・日本で「いま何が起こっているのか」を若者たちの質問を交えてわかりやすく解説しながら、
私たちはどうすればよいのか、時代を理解し物事の本質を見極めるための「学び方、働き方、生き方」を
池上先生が一緒に考え、伝えていきます。
ジャーナリストと教育者、筆者が持つ2つの顔がうまく溶け合った
悩める若者たち、未来を生きていく私たちへ贈る、池上彰の「生き方」講座。
池上氏の温かなまなざしとメッセージが一冊に詰まった、
日本経済新聞の朝刊・電子版の連載コラム「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」の書籍化第4弾。
池上彰さんの「大岡山通信」の書籍化も4冊め。
池上さんの本を読んだり、番組を観たりしている人にとっては、「どこかで聞いたことがある話」が多いかもしれません。
あんまり政治とか経済の話には興味がなかったんだけど、という若い人たちが、とりあえず手にとって、勉強してみよう、とやる気を出すには、けっこう有用な本だと思うのですが。
この本のなかで、池上さんは、高校生や大学生との対話のなかで、自分自身の経験も交えて「学ぶということの意義」を繰り返し述べておられます。
高校で受験勉強に追われていた当時、「こんな勉強をしていて将来、一体、何の役に立つのだろう」と感じていたことを覚えています。ところが不思議なものですね。社会に出てから、意外な発見が何度かありました。
たとえばNHK記者時代、気象庁で地震の原稿を書くとき、マグニチュードが1大きくなると地震のエネルギーは32倍になることを知りました。この変化の仕組みは、数学の「対数」に基づいています。基礎的な事柄を理解していれば、分析の仕組みもわかります。高校時代、「対数なんて何の役に立つのか」と思っていたのですが。
その後、「因数分解」の勉強が役立っていることも知ります。2005年にNHKを辞めてフリーのジャーナリストになってからのこと。テレビ番組づくりに関わりながら、定期的に新聞コラムを何本も書くようになりました。その際、複雑な情報を整理するには「共通項を見つけて括り出す」という因数分解の考え方が役に立つのです。
高校生のころ、苦手で楽しくはなかった科目でも、定期試験や受験のために必死に学びました。覚えた知識が後の人生で役に立つのかわかりませんでしたが、いま花開いたのです。
こんなの、社会に出たら使わないよ……と言いたくなるような「学校の勉強」って、案外、いろんなところで実際に使われているのです。
この因数分解のように、そのままの形ではなく、「応用」できる場合もあります。
池上さんは、こういった経験を踏まえて、2011年3月の東日本大震災のあと、理系と文系の間を橋渡しする手伝いができれば、と東京工業大学で教えることを引き受けたそうです。
僕もこの年齢になって、高校レベルくらいは、数学を学びなおしでみよう、と思っているのです。高校時代は教科書を見るのも嫌なくらい苦手だったのですが、今なら、少しは楽しんで勉強できるのではないか、という期待とともに。
ある大学での講演会でのやりとり。
質問:核廃絶は可能ですか。2017年のノーベル平和賞は核廃絶を目指す国際団体が受賞するなど、世界的に機運が高まっているように思います。
池上:現実としては非常に難しい問題です。トランプ大統領は核兵器の運用を強化する方針を持っています。「核なき世界」を掲げたオバマ前大統領からの大転換です。
ただ、国連で核廃絶に関する決議があったように、国際的な世論になりつつあるといえます。アメリカでも最近は若者を中心に核兵器批判的な考え方をする人々の比率が高まっています。
私も国内の被爆者を取材する中で勇気づけられる言葉がありました。「私たちが核廃絶を訴えてきた取り組みは微力だったかもしれないけれど、決して無力ではなかった」。機運を高めるには、諦めないことが大切なのだと思い知らされました。
池上さんは、こうして長年「学ぶこと」についての啓蒙活動をしていても、あまり世の中が変わってきているようには思えないことに、どう向き合っているのだろう?と疑問だったのです。
このやりとりを読んで、池上さん自身にも無力感はあるけれど、「微力であっても、無力ではない」と自分に言い聞かせて頑張っているのではないか、と感じました。
微力でも、それを積み重ねていく努力を続けていくことでしか、変わらないものがある。
あと、野球好きの池上さんは、エンゼルスの大谷翔平選手について、こんな話もされています。
私なりに経済学を定義してみれば、「資源の最適配分を考える学問」といえると思います。ここでいう「資源」とは原油や鉱物などもあれば、企業の人材も含まれるでしょう。最適配分を考えることによっていかに最大の効果を得るかという学問なのです。
少し脱線しますがシーズンが始まったプロ野球の選手を例にしてみましょう。アメリカのメジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスへ移籍した、元北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手です。
これまで日本の球団は、非凡な才能を伸ばそうと、投手と打者の両方で出場する「二刀流」として起用してきました。才能を資源と考えた場合、どう配分すればよいのでしょう。
試合に登板した後は休養も必要でしょうし、打者としてのトレーニングも欠かせません。投打の才能を最大限に引き出して、前人未到の記録に挑むこともできるかもしれません。ただ、長い野球人生考えると、果たして”二刀流”のままでよいのか疑問です。
そんなときは歴史がヒントになります。偉大なホームラン記録を残したアメリカのベーブ・ルース、日本の王貞治氏は、いずれも、もともとは投手でした。意外な共通点があります。大谷選手も、あえて投打のどちらかに挑戦の道を絞ることも、新たな可能性を導き出す上で重要な判断になるかもしれません。メジャーリーグでの活躍を期待しています。
僕はこれを読みながら、さまざまなデータを集めたら、AI(人工知能)で、大谷選手は二刀流を続けるべきか、投手か野手のどちらか一方に絞るべきかを決めることはできるだろうか、と考えていたのです。
でも、少なくとも今のAIでは、それを決めるのは難しそうなんですよね。
大谷選手は「ピッチャーとバッターの両方ですごい成績を残せる選手」であることが、それぞれの数字を合計した以上の「価値」というか、「ロマン」みたいなものを生み出していて、それを数値化するのは、とても難しいのです。
「両方できるから、大谷はすごいんだ!」という人もいれば、「10勝、ホームラン20本」よりは、ピッチャーに集中して20勝してほしい、と考える人もいるはずです。
なんらかの記録にチャレンジするのであれば、どちらかに集中したほうが良いのだろうけど、プロ野球を興行としてみれば、「二刀流」にはものすごく魅力があります。
どんなにAIが進化しても、「受益者が不完全な存在である人間である」というのが、これからの最大の問題点なのかもしれませんね。
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