あらすじ
月面探査機によって捉えられた白い影のニュースを聞いたのび太は、それを“月のウサギ”だと訴え笑い者になってしまう。そこでドラえもんのひみつ道具“異説クラブメンバーズバッジ”の力を借りて、月の裏側にウサギ王国の建国を計画する。ある日転校してきた謎めいた少年ルカは、のび太たちと共にウサギ王国に行く。
2019年、映画館での7作目。
平日のお昼過ぎの回で、観客は50人くらい。春休みですしね。
ドラえもん映画を劇場でみるのは、何年かぷり。
テレビで放映されるときには、子供たちに見せるふりをして、僕もけっこう熱心に観ているのだけれど。
前回映画館で観たのは、『のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)』で、のび太とドラえもんの友情に涙しそうになってしまったものです。あのとき、「みゅーじあむ、みゅーーじあむ!」とperfumeと一緒にたどたどしく歌っていた長男はだいぶ大きくなって、今は次男があのときの長男と同じくらいの年齢になったのだよなあ。
『のび太の月面探査記』は、直木賞作家の辻村深月さん脚本なのだけれど、辻村さんの出世作『凍りのくじら』でのドラえもんへの愛着を知っていたので、辻村さんにとっても嬉しい(そして大変な)仕事だったのではないかと思います。
(これは10年くらい前に書いた『凍りのくじら』の感想なのだけれど、辻村さんの藤子・F・不二雄先生への「思い」が詰まった言葉を紹介しているので、よかったら、読んでみてください)
今回の内容としては、仲間たちの友情と勇気、かわいいキャラクターにピンチからの大逆転と、まさに「王道」のドラえもん映画だったのです。いろんな要素が詰め込まれ過ぎていて、「敵」の存在が唐突な感じはしたのだけれど、ドラえもん映画は「仲間」を描く物語ではありますしね。
辻村さんはドラえもん、そして、ドラえもん映画をよく知っている人だと思うので、「王道」でいくか、あえて変化球を投げるか、という選択肢のなかで、「また同じような話」だと言われるのを承知のうえで、「王道、しかもそのど真ん中」を行くことにしたのでしょう。
観ていると、これはムービットのぬいぐるみが売れるよなあ、とか、つい考えてしまうのが大人の邪念ではありますが。
「異説」と「定説」の話、その境界についてのルールなどは、子供にはちょっと難しいかな、と思ったのですが、10歳の長男は「小さい子には難しいかもねー」と自信たっぷりに僕に解説してくれたので、子供たちも、みんな「わかる」のだろうな。心のなかでは、「お前も小さい子だろ!」とツッコミを入れてしまいましたが。あるいは、SFっていうのは、子供たちにとって「ちょっと難しい」くらいで、ちょうどよいのかもしれません。
「異説や想像力が未来をつくる」
思えば、昭和の後半と平成を生きてきた僕にとっては、『ドラえもん』という作品そのものが「多くの人が信じるようになった異説」みたいなものではあります。
マンガに書くときには、出てくる植物のひとつひとつまで、きちんと調べて描いていた、という藤子・F・不二雄先生の意思を受け継ぐような、「月の裏側のウサギたちの世界」の楽しそうなこと!
サノスに人類の半分が絶滅させられるような悲観的な話だけが「SF」じゃないよね(って、僕的には『アベンジャーズ』の続きも気になりますが)。
長男が「やっぱりドラえもん映画は感動するよね!」と嬉しそうなのを見て、僕も満足。
原作マンガの一場面をみて、一瞬、「ああ、こんな話あったな!」と、子供の頃に戻ってしまいました。
「いつものドラえもん映画、トッピング全部入り」という作品であり、目新しくはないのだけれど、「1年に一度の感動できるドラえもん祭り」としての完成度は高いし、「マンネリ」は覚悟の上なのでしょうね。
だって、毎年「卒業」する子どもたちがいて、「初めてのドラえもん」の子どもたちが入ってくるのだから。
しずかちゃんがある役割のために仲間たちから離れて行動する場面などは、「ああ、ポリコレとかフェミニズムの観点からいうと、しずかちゃんは『オンナの役割』を押し付けられている!って怒られるんじゃないか……」と、ちょっと心配になりました。
個人的には、『ドラえもん』が、そういう大人たちに見つかってほしくない、と思うのだけれど、子どもが見るものだからこそ、問題があると考える人もいるのだろうな……
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