- 作者: 帝国データバンク情報部
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2019/08/06
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Kindle版もあります。
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内容(「BOOK」データベースより)
100年以上、企業倒産の現場を分析し続けて、わかったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には「公式」がある、ということだ―1900年創業の国内最大級の企業情報データベースを持つ最大手の信用調査会社、帝国データバンクだから導き出すことができた、経営者が陥りがちな「企業破綻の8つの公式」とは?
どういう企業が「危ない」のか?
業績が長年低迷していたり、売っている商品やサービスが先細りになるのが確実だったり、「お金を預けるだけで、確実に10%の利子がもらえる!」というような、いかにもあやしげなセールストークをしていたり、というのであれば、「大部分の人には言われなくてもわかる」のだと思います。
それでも、「ラクして儲かる」みたいな話に、少なくない人が引っかかり続けているというのもまた事実ではあるのですが。
「老後に2000万円必要」なんていうのは、投資に興味が無い人を「お金を増やすこと」に駆り立てて、かえって資産を減らしているのではないか、という気もします。
この本、日本最大級の信用調査会社・帝国データバンクが「倒産した企業」の実例を紹介したものです。
「内容紹介」には、「失敗には『公式』がある」と書かれているのですが、この本のなかだけでも8つに分類されており、「倒産しそうな会社を外部から見極める」というのは、そんなに簡単なことではなさそうです。
ジリ貧で、もうどうしようもない、という事例ばかりではなくて、外部からみれば、それなりにうまくやっているようにみえても、実態はとんでもない負債をかかえている、というケースもあるのです。
粉飾決算というのは、内部告発でもないかぎり、証拠を提示するのは難しいものではありますし。
大ヒット商品を出して、おかげで一気に業績を伸ばしたはずなのに、それが転落のきっかけになることもあるのです。
化粧品・ヘアケア製品販売代行の「室町販売委託(旧:ジャパンゲートウェイ)」の項より。
旧社名のジャパンゲートウェイの名を世に知らしめる大ヒット商品となったのが、2010年10月に発売されたノンシリコンシャンプー「レヴール」だ。
従来のシャンプーは、髪の手触りをよくしたり、光沢を出したりするための成分の1つとしてシリコンが含有されているものが主流だった。同社は、「汚れを落とす」という本来のシャンプーの目的に立ち返り、髪に負担をかけるコーティング剤「シリコン」を含有させない新商品、というかたちで「ノンシリコンシャンプー」を売り出したのである。
「レヴール」は、発売するやいなや大ヒット商品になった。若手人気女優たちを起用した大規模な広告キャンペーンを展開、頻繁に放送されるテレビCMで認知度を高め、「1.5秒に1本売れているノンシリコンシャンプー」として一大ブームを巻き起こした。
この間、業績は倍々ゲームで伸びた。2011年5月期に61億円だった年売上高は、翌2012年5月期には135億円に倍増。2013年5月期は217億円にまで拡大した。複数の著名な大手小売チェーンを通じた約1万5000店の販売網を生かし、この頃にはシャンプー・リンスの販売実績で国内トップ5に入るまでに急成長を遂げた。
ところが翌年に入ると、この輝かしい歩みに急速に陰りが見え始める。2014年5月期には年売上高300億円超えも視野に入れていたが、結果は前期比23%の大幅減収となる166億円に急減したのだ。
原因は、同業他社が「ノンシリコン」を謳った類似商品を次々と投入したことだった。競争が激化する中で差別化が図れなくなり、店頭での売れ行きが落ち込んだ。「売上増」を見込んで生産していたために、期末在庫が大幅に膨れ上がった。そこへ加えて多額の広告宣伝費も重荷となり、赤字決算に終わったのである。
「結果」をみれば、「そりゃ、同業他社が真似してくるのは当然だし、いつまでも売上がアップし続けるっていうのは見通しが甘すぎる」と思いますよね。
でも、どんどん「成長」しているときって、まだまだいける!と、冷静さを失ってしまうものなのでしょう。
どんなに素晴らしい商品でも、ずっと「ナンバーワン」「オンリーワン」ではいられないのです。
そこで、二の矢、三の矢となる新しいヒット商品を出せれば、こんなことにはならなかったのかもしれませんが……
そう簡単に、大ヒット商品が出せれば苦労はしません。
この本のなかには、『妖怪ウォッチ』のキャラクター商品が大ヒットしたおかげで業績が回復し、その人気が続くことを見込んで大量に生産したものの、『妖怪ウォッチ』熱が急速に冷めてしまったために膨大な在庫を抱えてしまった企業の話も出てきます。
「大ヒット商品」というのは、企業を大きく成長させる一方で、次の展開を間違えると、致命的なダメージを受けるリスクをもたらすこともあるのです。
また、格安スマートフォン『FREETEL』を運営していたプラスワン・マーケティングは、格安スマホの製造、販売という独自の戦略で大手の寡占状態だった携帯市場に参入し、仮想移動体通信(MVNO)との二本柱で急成長を遂げました。
大手携帯キャリアからの乗り換えで利用回線数は40万回線を超え、2017年3月期の年売上高は約100億5800万円まで拡大。破竹の勢いで急成長を遂げていたが、大手キャリア系の格安スマホが次々に販売されると、新規契約数が低迷し始める。
この状況を打破すべく、新規ユーザーの獲得を目的に人気タレントを起用したCMを打ち、自社店舗の「フリーテルショップ」を次々に出店する。
しかし、多額の広告宣伝費や、販売店に、売上に対する一種の見返りとして支払うリベート費用がかさみ、2017年3月期は営業段階から約50億円を超える赤字を計上。当期純損失は約55億3000万円まで膨れ上がった。この頃から複数の取引先の間で資金繰りを懸念する声が聴かれるようになる。
追い打ちをかけるように、2017年夏頃からは出店スピード停滞。実は、この頃から大口仕入れ先に対する支払いが厳しくなり、7月末から一部の仕入れ先に対して、リスケや支払い条件の変更を相談するほど資金繰りに窮していたという。
結局、プラスワン・マーケティングは主力事業の仮想移動体通信事業を楽天に売却することになりました。
2017年12月には東京地裁に民事再生法の適用を申請しています。
今でこそ、SIMフリーの格安スマホは世間に浸透しているが、それは大手キャリアの寡占状態が続いていた通信業界に風穴を開けた企業があったからだ。プラスワン・マーケティングがそのうちの一社であることには間違いない。
一時は急成長を遂げたが、回線を持ち通信速度の速さを売りにした大手系のUQモバイル、ワイモバイルらに追随され、最後は大手に追い打ちをかけられた。同社の倒産劇は、大手が独占する市場に割って入る中小企業が、学びとすべき教訓をはらんでいる。
プラスワン・マーケティング自体は最終的に倒産してしまったのですが、スマートフォン利用者からすれば、こういう会社があったからこそ、選択肢が広がり、大手も料金を見直したり、系列の安い通信会社をつくったりした、という恩恵を受けているんですよね。
そういう意味では、格安スマートフォン企業の大手への挑戦に感謝すべきなのかもしれません。
会社勤めをしている人向けの「一社員、あるいは外側からでもつかめる『倒産のシグナル』」が紹介されています。
まず挙げられるのは、専務や営業部長、経理部長といった幹部社員の退職だ。彼らは会社の経営状況がよく見える立場にある。その彼らが辞めるのは、何かしら経営を揺るがしかねない問題が起こっているシグナルといえる。
(中略)
一社員が受け取れるシグナルとしては、もう1つ、「社外からの問い合わせ」がある。
たとえば、たまたま出た電話が銀行からの督促の電話だったとか、「入金されていない」という取引先からの電話だったといった話は、実際、倒産した企業の社員からよく聞く話だ。社長から居留守を使うよう命じられていたという社員も少なくない。これに給料の遅配が重なったら、いよいよ危ない。
ただし大企業になると、よほど気をつけていないと、こうした倒産のシグナルは察知できない。何の疑いもなく働いていたら、ある日、テレビで自社の倒産が報じられ、その日のうちに全社員が集められて説明を受けるというケースも、よく見られる。
老舗企業や大企業でも、けっこうギリギリのところで資金を調達し、自転車操業になっている場合も多いのだなあ、と思いながら読みました。
そして、内部がどんなに危機的な状況に陥っていても、プロが粉飾すれば、社員でさえもそう簡単には察知できないものだ、ということも。
後から検証してみると、不正とか放漫経営とか本業以外でのサイドビジネスでの失敗とか、「そりゃ潰れるわ」というケースも多いのですけど。
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