琥珀色の戯言

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赤塚不二夫のことを書いたのだ!! ☆☆☆☆

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

天才漫画家・赤塚不二夫に35年間連れ添った編集者がいる。「武居記者」というキャラクターで赤塚漫画にも登場した名物担当者。その武居記者が、天才との漫画と遊びの日々を初めて綴った。「天才バカボン」引き抜き事件、ヤクザに追われて逃亡生活、美空ひばりと新宿デートなどなど、抱腹絶倒の秘話満載!

 僕がマンガをいちばん読んでいた時期というのは、もう、赤塚さんの人気のピークが過ぎてしまっていた頃だったので、僕はリアルタイムでは赤塚作品をほとんど読んでいないのです。でも、小さかった頃に親に連れて行かれていた美容院で、そこに置いてあった『天才バカボン』を読んで、「何なんだこのマンガは?」と驚いたことを今でも覚えています。『天才バカボン』だけは、コミックスも何冊か家にありました。
 当時の『天才バカボン』って、ゲームブックみたいになっている回があったり、主人公のバカボンのパパが全然出てこない回があったり、それまで「正しい少年マンガ」しか読んだことがなかった僕にとっては、ものすごく異質な存在だったんですよね。
 「この作者は、いったい何考えてるんだろう?」本当に、当時は半ば感動し、半ば呆れていたものです。
 いま読み直してみると、その「発想力」の凄さに圧倒されるばかりなのですけど。

 今まで、赤塚さんのことを書いた本や、赤塚さんの言葉を集めた本は何冊か読んできました。でも、この『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』という本には、これまでの「人間・赤塚不二夫の魅力」を描いた本とは違った切り口があります。
 赤塚さんの「同志」であり、週刊少年サンデーの名物編集者でもあった武居俊樹さんは、「人間・赤塚不二夫」に対して思い入れたっぷりに描くと同時に、「週刊少年マンガの創成期における、一人の天才ギャグマンガ家の栄枯盛衰」をかなり客観的に描いているのです。編集者からみた「赤塚作品」についてもかなり辛口に評価していますし、赤塚不二夫をめぐる人々、とくに歴代のアシスタントの功績にも、かなりページを割いて言及しています。赤塚作品というのは、多くのアイディアマンやアシスタントに支えられて完成していたわけで、むしろ、赤塚不二夫の凄さというのは、そういう「才能」たちに、「この人のために何かをしてあげたい」と思わせるような人間的な魅力そのものだったのかもしれません。

 武居さんは、赤塚不二夫のマンガ家生活晩年の作品について、

 僕は、赤塚の『クソばばあ』を読んで、唖然とした。『クソばばあ』は、赤塚が一人でアイデアをやった。赤塚が一人で描くと、こんなにつまらない作品になるのか。赤塚一人にアイデアをさせちゃいけない、と思った。

 とまで酷評しています。
 その一方で、

 赤塚は、自分のアシスタントを次々に一本立ちさせる。それは、すなわち自分の作品を痩せさせることだ。右腕を、左腕を切り落としていくのと同じだ。アイデアが薄まり、絵が枯れていく。赤塚にも、それが判っている。判っていながら、それをやる。僕は、それを見ていて、本当に立派だと思う。人の道に外れていないと思う。

 と、自分の優秀なアシスタントたちをどんどん「独立」させていった「潔さ」に最大の賛辞も贈っているのです。
 赤塚さんのフジオ・プロからは、高井研一郎(『総務部総務課 山口六平太』)、北見けんいち(『釣りバカ日誌』)、土田よしこ(『つる姫じゃ〜っ!』)、古谷三敏(『ダメおやじ』)、とりいかずよし(『トイレット博士』)など、多くの人気マンガ家が独立していきました。武居さんはこの本のなかで、「神様・手塚治虫のアシスタントからは、とうとうひとりも名の知られたマンガ家は出なかったのに」と書かれています。まあ、それが逆に、人気凋落を経験しながらも最晩年までマンガ家として活躍できた手塚治虫と、40代前半にして、ギャグマンガ家としての大部分の仕事を終えてしまった赤塚不二夫の「差」になってしまったのかもしれませんが。

 語られることが多い、人間・赤塚不二夫だけではなく、「ギャグマンガの巨匠」としてのマンガ家・赤塚不二夫を知る上では、この上ないテキストであり、「マンガはひとりのマンガ家の力だけで書かれるものではないのだ」ということもよくわかる、貴重な本だと思います。
 正反対の存在のように見える、赤塚さんとつげ義春さんとの交流の話も、なかなか興味深いものがありました。

赤塚不二夫 漫画大全集 DVD-ROM (<DVD>(HY版))

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↑このDVD全集、僕もいつか必ず買おうと思いつつ、まだ買ってなかったんですよね……値段分の価値はあると思うのだけど。

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