琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

10分でわかる「電子書籍の現在」

昨日の「本の尊厳をこんなに傷つけられる世の中になるなんて」にはさまざまな反応をいただきました。
そんななかで、ネット上で「電子書籍推し」をしている人たちは、あまり電子書籍の現状に対する知識を持っていないのではないか、と僕は感じたのです。
そこで、これまで、さまざまな人が書いてきた「電子書籍に関する本」を読んできたこともあり、僕なりに、簡単に「電子書籍の現在」をまとめてみます。



2010年4月25日のエントリから。
まずは、アメリカの電子書籍の現状です。

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

内容(「BOOK」データベースより)
『2011年 新聞・テレビ消滅』!?では、本はどうなる!?キンドルに続き、アップルiPad登場。それは、本の世界の何を変えるのか?電子書籍先進国アメリカの現況から、日本の現在の出版流通の課題まで、気鋭のジャーナリストが今を斬り、未来を描く。

僕も活字中毒者として、「電子書籍」に対して、よくわからないながらも、漠然とした期待と不安を抱いていたのですが、この本を読むと「電子書籍の(とくにアメリカでの)歴史と現状」そして、これからおそらく日本にも飛び火してくるであろう、「アマゾン vs アップル」(キンドル vs iPad)の全面対決への流れが見えてきます。正直、iPadに対しては、「あんな中途半端な大きさと性能で、うまくいくのだろうか?」と思っていたのですが、「電子書籍を読むための『iPod』」と考えれば、かなり、しっくりくるマシンなんだなあ。

 アメリカでは本の多くはハードカバーで売られています。でかくて厚くて、おまけに値段は2500円前後。日本のように薄くて小さくて安価な書籍は少ないのです。しかしキンドルストアではこうしたハードカバーの多くが、9.99ドル(約900円)という驚くほど安い値段で売られています。
 出版社が出血大サービスで卸しているのでしょうか?
 実はそうではないのです。アマゾンは紙の本を店頭価格の半値の約13ドルの卸値で出版社から仕入れていますが、キンドルストアの電子ブックにもこの値段を適用しています。つまりアマゾンはキンドルストアで1冊売るごとに、約3ドルの損を出しているということなのです!
 なぜこのような一見バカげていることをアマゾンがやっているのかといえば、それはまさに、「電子ブックのプラットフォームを独占支配したい」という戦略が存在するからにほかなりません。

 アップルが底なしにすごいところは、アップルの戦略を真似したアマゾンに対して、まったく逆の戦略を仕掛けてきたところです。
 先にも書いたようにアップルは99セントという安価な金額で楽曲を販売し、価格決定権をメジャーレーベルから奪ってしまいました。これをアマゾンは踏襲し、9.99ドルという破格の値段で電子ブックを販売し、やはり価格決定権を確保しました。
 そこにiPadを後発で出してきたアップルは、どういう戦略を採ったのか?
 なんと、「価格決定権はあなたたちに差し上げますよ。その代わりに30%の手数料だけください」と出版社に提案したのです。
 音楽の世界でプラットフォーム支配した際に使ったすばらしい戦略だったのにもかかわらず、それが先行するアマゾンに真似されたとみるや、すぐさま転身して別の戦略へと打って出るその変わり身の早さ! やっぱりCEOのスティーブ・ジョブズという人は製品開発力だけでなく、ビジネス戦略においても天才というしかありません。

 僕はやっぱり「物質としての本」への愛着があるし、「読んだ本を積み上げていく」という行為に喜びを感じるのですが、この本を読んでいると、「物質としての本」にあまりこだわる必要はないのかな、とも思うのです。

「インターネット文学」の可能性について(琥珀色の戯言)
↑に書いたように、「その本がどのくらいの厚さかわからない」というだけで、本の読み方は変わってくるものだし、登場人物についての説明や地図が画面にタッチするだけですぐに表示されるようになれば、かなり便利でしょう。
そして、「読んだ本、買った本をデータベース化する」ということが、キンドルiPadによって可能になれば、「うーん、この間読んだ本に書いてあったはずの中国の科挙の話、あの本のどこに書いてあったか忘れてしまったなあ……」ということで、本をパラパラとめくり直す必要もなくなります(こうしてネットで本の感想を書く人間にとっては、その機能はすごくありがたいんですよ、本当に)。



次は、2010年11月16日のエントリ。
いまの日本での状況です。

電子書籍の時代は本当に来るのか (ちくま新書)

電子書籍の時代は本当に来るのか (ちくま新書)

内容(「BOOK」データベースより)
iPadキンドルの登場により、日本でもいよいよ電子書籍の時代が始まると騒がれている。しかし、アメリカから来たこのブームはすぐにも定着するのだろうか?そのとき、紙のメディアは生き残れるのか?本書は、こうした不透明な先行きに冷静かつ確かな展望をもつために不可欠の(しかし見落とされがちな)ポイントを、グーグル、アップル、アマゾンらの最新の動向と、それに対峙する日本の出版社・新聞社の試みとを丹念に取材・分析することで、あざやかに浮き彫りにする。

僕は「電子書籍」に関する本をけっこうたくさん読んでいるのですが、この新書は「電子書籍で出版の世界も読者も変わる」という「電子書籍の素晴らしさ」を中心に描く多くの本とは違い、電子書籍の未来に一石を投じる内容でした。
もちろん、著者の歌田さんは、「電子書籍のメリット」を無視しているわけではなく、その利便性をよく理解した上で(たとえば、「参考文献」というのは、いままでの本では、よほどの専門的な必要性がある人以外にとっては、あまり意味がないものだったのですが、電子書籍のネットワークができれば、気になった参考文献や図書を、ワンクリックで参照できるようになるわけです)、「そんなに簡単に、電子図書が紙の本を駆逐することができるのだろうか?」と疑念を示されています。


そして、「電子書籍が普及しても、結局のところ、『本を読む側』はそんなに変わらない」のかもしれません。

 インプレスR&Dの「電子書籍ビジネス調査報告書」によれば、日本の電子書籍市場は、2009年度が対前年比23.7%増の574億円になったというが、そのうち89%は携帯電話向けで、大半をコミックスが占めている。それ以外も写真集が半分ぐらいと、アメリカで立ち上がり始めた電子書籍市場と異なった性格のものとなっている。パソコン向けの電子書籍は11%減と縮小さえし始めていて、市場の拡大スピードが落ちている。
 成長している携帯電話向け電子書籍にしても、増加率は前年度から2007年度にかけてが153%、2008年度が42%、2009年度が28%と伸びが止まり始めている。同報告書も、今後の成長は、スマートフォンや読書端末などの新たなプラットフォームによるものと見ている。

 日本では、電子書籍の価格を紙の本に比べて大きく下げることに出版社の同意が得られず、ダイレクトにコンテンツを購入できる通信環境も整えられなかった。そもそも日本の電子書籍は、読書家以外の人たちを対象としようとする傾向が実証実験のころからかなり一貫してあった。
 日本の読書端末のコンテンツは若者向けのものが多かった。単価が安くコンパクトなマンガや文庫などを読むためにわざわざ高額の端末を買わないだろうというのは容易に想像できる。日本で読書端末の市場を切り開こうとした人びとの話を聞いてきたのでこうしたことを書くのは残念だが、日本では、いわば失敗するべくして失敗した。ケータイ小説やコミックスの電子書籍はとりえあえず成功しているが、それは、こうしたジャンルしか成功しようがないビジネス展開をしたからともいえる。
 それに対しアマゾンは、明らかに本を大量に読む人たちに向けてキンドル電子書籍用の端末)を販売した。


(中略)


 こうした端末で読むのは若者ぐらいだろうと思うかもしれないが、キンドルをおもに購入したのはお金に余裕がある中高年齢層だったことを推定するデータも出ている。
 アマゾンのサイトには、「平均的なキンドル所有者の年齢」というフォーラム(掲示板)がある。そこに書きこんでいるキンドルの平均的なオーナーたちは自分の年齢を申告している。そのデータをもとに、オーナーの世代分布を推定した。投稿者の年齢を調べただけだから統計調査としては不十分だが、参考にはなる。
 私の見たところでは二人の人が調査をしたようで、一人は700人のメッセージ、もう一人は、70ページにもおよぶアマゾンの掲示板の1700のメッセージについて、年齢が明らかな1387の書きこみを調べたという。
 手間はかかったが、やった意味はあった。結果はあっと驚くもので、あちこちの米メディアがとりあげた。
 二人の調査結果には大きな差がないが、多く調べたほうを紹介しよう。
 世代別では、50代がもっとも多く、21.2%、次が40代で19.1%、60代も18.3%、70%近くが40歳以上だ。10歳代はわずか4.25%で、20歳代が13.3%という結果だった。

 この新書のなかで、歌田さんは、キンドル利用者が比較的高齢である理由として、「初代キンドルが399ドルと高価であったこと」「文字の小さい本が読みにくくなってきた世代が、文字の大きさを自由に変えられるキンドルに魅力を感じたこと」などを挙げておられます。
 日本の「電子書籍」は、若者向けのタイトルを充実させようとしているけれど、実際に売れているのは、あくまでも「携帯電話の画面で読みやすいようにつくられた、あるいは、一般書店では買いにくい(アダルトものなどの)商品」であって、もともと本を読まない人たちが、電子書籍化されたからといって、急に本を読むようになるわけではないのです。


 仮に、1万円の電子書籍端末があったとしても(いまの相場からすればかなり安いですが、おそらく数年のうちにこのくらいの値段になると予測されています)、いまの日本の出版業界では、「電子端末版は、せいぜい200円〜300円くらい、紙の本より安い程度」です。
 月に1冊しか本を読まない人であれば、「端末代をとりかえす」ためには、2〜3年はかかってしまいます。
 もともと本を読まない人たちが、「本を読むためだけの機械」に、そんなにお金を使ってくれるというのは、ちょっと考えにくい。
 歌田さんは、「教科書や新聞・雑誌の定期配信には可能性がある」と書かれていますし、僕もそれはメリットが大きい用途だと思いますが、電子書籍を実際に有効利用できるのは、やはり「もともと、紙の本をたくさん読んでいる人」なんですよね。
 でも、これまでの日本の「電子書籍」の市場は、そういう「お得意さま」をかえりみず、「いままで本をあまり読まなかった人たち」のほうばかりを向いていたのです。


 そもそも、ペーパーバックなどの大きくて厚手の本が多く、「文庫本」がないアメリカと日本の出版文化を比較するのはなかなか難しいところもあります。
 日本では、コンビニをはじめとして「本を売っている場所」がたくさんあるし、文庫本を1冊ポケットに入れておけば、数時間の移動くらいであれば、「本好き」は退屈することがありません。
 持っていった本が、よっぽどの「ハズレ」であれば別でしょうが。

 結局のところ、「電子書籍」というのは、「未来に遺す電子図書館」のためには必要不可欠かもしれないけれど、本当に「日常的なもの」になるかどうかというのは、まだまだ不透明なのだと僕は思います。
 これまでは、「本を読む人」と「本を読まない人」がいたのだけれど、これからは、「紙の本と電子書籍を読む人」と「本を読まない人」に分かれるだけではないかと。



最後に、2011年4月6日のエントリから。 

出版大崩壊 (文春新書)

出版大崩壊 (文春新書)

内容紹介
大手出版社に34年間勤め、電子出版に身を投じた編集者が、自らの体験を基に既成メディアの希望的観測を打ち砕く衝撃レポート。


内容(「BOOK」データベースより)
著者は2010年5月、34年間勤めた出版社を退社し、これまで培ってきた人脈をネットワーク化して電子出版のビジネスに手を染めてみて。そうしていま言えることは、「電子出版がつくる未来」は幻想にすぎず、既存メディアのクビを絞めるだけだと思うようになった。

電子書籍」は、これからどうなっていくのか?
僕はいままで、「紙の本」から「電子書籍」へ、という流れは止められないと思っていたのですが、この新書を読んで、その「確信」が揺らいできました。


そもそも、電子書籍は「本」のままでいることができるのか?
この新書のなかで、村上龍さんの『歌うクジラ』の話が出てきます。
この『歌うクジラ』は、2010年7月に紙の本に先駆けて、電子版が発売されたことで話題になりました。
電子版(1500円)は、「iPad」向けのアプリとして発売されたのですが、坂本龍一さんの曲やアニメーションを含めたパッケージで販売されたこの作品は、「紙の本と同じ『本』」と言っていいのかどうか?
逆に、動画や音楽、フォントの変化などが自由自在にできるような状況下で、「言葉や文字だけで表現しなうてはならない」という「活字文化」は、変容せずにいられるでしょうか?
かつて、ゲームの世界で、文字だけの「テキストアドベンチャー」が衰退していったように、文字だけの「文学」が失われていく可能性もあるかもしれません。


この新書のなかで、『歌うクジラ』をめぐる、村上龍さんのこんな話が紹介されています。

 村上氏は、メルマガでコストを公開している。

 『歌うクジラ』では、音楽やアニメーションが入ったリッチコンテンツだったので、グリオの作業チームの人件費を別にして、プログラミングの委託実費が約150万かかりました。

 坂本龍一へのアドバンスが50万、計200万円でした。ただし、わたしとグリオのスタッフの報酬は制作費として計上していません。

 ということで、定価は1500円に設定。

 現在10000ダウンロードを優に超えています。わたしもグリオも確かな手応えを得ました。

 というので、仮に1万ダウンロードとして計算すると、1500万円の売上げにしかならない。このうち、プラットフォーム(アップル「iPad」など)が30%を持っていくとしたら、既存の出版社が外注費をかけて制作したら、収入は微々たるものか、あるいは赤字になる。
 村上氏のような人気作家でもこうなら、それ以外の数多くの作家をかかえる出版社が、すべての作品を電子化できるだろうか?
 村上氏はこうも書いている。

 電子書籍は、グーテンベルク以来の文字文化の革命であり、大きな可能性を持つフロンティアです。電子書籍の波を黒船にたとえて既得権益に閉じこもったりせずに、さまざまな利害関係者がともに積極的に関与し、読者に対し、紙書籍では不可能な付加価値の高い作品を提供することを目指したほうが合理的であり、出版、ひいては経済の活性化につながると考えます。

 村上龍さんらしい「宣言」だと思います。
 しかしながら、その一方で、これだけのコストが必要なのであれば、少なくとも新刊については、「電子書籍の普及によって、本が安くなる」かどうかは微妙ですし、「素人にとって『出版』のチャンスが広がる」ということもないのだろうな、という気がしてきます。
 こんな付加価値が読者から要求されるようになれば、そこらへんの素人が書いた電子書籍が売れるとは思えませんし。
 もしかしたら、いまのネット上のサイトのように「趣味として書いて、無料で読んでもらう本」と「村上龍さんのようなプロが、有料で売る、付加価値が高い本」に二極化していくかもしれません。


 でも、いちばんの問題点は、「そもそも電子書籍は売れていない」ってことなんですよね。
 売れているのは、「携帯電話のエロ系コンテンツ」だけ。
 要するに「書店では買いにくい内容の本」しか、いまのところ売れていないのです。
 もっとも、家庭用VTRの普及時のように、エロ系コンテンツが起爆剤になる可能性も否定はできないのですが、それにしても、「それ以外の電子書籍」の売り上げは、紙の本に遅れて出ているものばかりだとしても、惨憺たるものです。
 2010年に電子書籍化された、池上彰さんの『伝える力』の電子版は約2万ダウンロード。岩崎夏海さんの『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が約9万ダウンロード。いずれも、紙の書籍の数十分の一しか売れていません。
 ソフトバンクグループの電子雑誌販売サイトの「ビューン」は、月額料金を払えば、コンテンツ(『AERA』『エコノミスト』『毎日新聞』『PRESIDENT』など30以上の新聞、雑誌、テレビニュース)が見放題という画期的なサービスだったにもかかわらず、無料版のときに12万人に達した会員のうち、有料化しても残ったのは1万人以下。


 電子書籍が売れないのは、kindleなどの電子ブックリーダーやiPhone,iPadがまだ普及していないためかもしれませんが、いまでも高性能の携帯電話は普及し尽くしているわけですし、そもそも、「プラットフォーム」として考えるのであれば、紙の書籍を読むために必要な「目」や「手」の普及率(もちろん、「目」や「手」を必要としない形態の書籍もあります)には、永久にかなわないでしょう。


 電子書籍で広がると言われている「自費出版」の可能性も厳しい。

 じつは、セルフパブリッシングでの成功は、万に一つのような確率でしか起こらない。メディアは成功例となると大げさに取り上げるが、その向こう側にある膨大な数の失敗例については報じない。
 アメリカでは2009年に約50万タイトルの書籍が発行されている。このうち出版社から販売されたのは4割の約20万タイトルで、残りの約30万タイトルは自費出版である。つまりこのなかから1人のメジャーが出るとしたら、その確率は30万分の1だ。
 セルフパブリッシングが進めば、自費出版の点数はさらに莫大になるが、プロ作家以外でセルフパブリッシングで成功している人間は、いまのところ、前述したカレン・マクエスチョンさんほか数人しか見当たらない。
 このマクエスチョンさんにしても、インタビューでこう言っている。
「(私の本が売れたのは)1.99ドルという値段、アイキャッチする表紙。女性をターゲットにしたロマンチックコメディというライトなコンテンツだったから。それに、自分で書籍系のブログに頻繁に書き込みいをしたからでしょう」
 つまり、値段を安くし、コンテンツの内容をわかりやすくしたうえ、自ら積極的に宣伝しなければ売れないのである。
 アメリカには多くのセルフパブリッシング・サービスがある。なかでも有名な「Lulu」というオンデマンド印刷サービスは、PDF版の電子書籍配信も扱っているが、これがまったく売れていない。ほとんどの電子書籍が数十部単位の売上げしか上げておらず、これは紙の書籍の販売数から見ればケタが二つ以上違っている。


 ごめん、10分で読むのはちょっとムリだったかも。


 ちなみに、ここでは3冊の代表的な書籍を紹介していますが、僕はこれ以外にもたくさんの電子書籍関連の本を読みました。
 そのなかに、「日本の電子書籍の未来はバラ色だ!」と楽観しているものは、ひとつもありませんでした。
 こうしてみると、「日本の電子書籍の現状」というのは、実に難しいことになっているというか、「始まる前に、すでに行き詰まっている」ような状況なのです。
 ユーザーは、「お前らが電子書籍化しないから、『自炊』するしかないんだよ!」「本は高いから、電子書籍にして、もっと安くしろよ!」と言うけれど、出版社・作家サイドからすれば、「電子書籍にしても、お前ら買わないだろ!だいたい、電子書籍化したって、そんなに安くなるようなもんじゃないんだよ!」というのが本音なはず。
 たぶん、「電子書籍なら売れる」という実績があれば、なんのかんの言っても、出版社も作家も、そちらにシフトしていっているのだろうと思いますが、いままでのところ、「電子書籍化しても、(少なくとも売る側にとっては)ほとんどメリットが感じられない」。


 もちろん、既存の本、もう紙の書籍としては賞味期限が切れかけている本を、ダンピングして安売りすることは可能でしょう。
 App Storeでは、そうしている本もたくさんあります。
 だからといって、顧客がみんな「あの本は85円で売ってるのに」と言って、文庫本の500円すら出さなくなってしまったら、少なくとも「専業作家」はいなくなり、「出版業界」は壊滅することになるでしょう。
 で、ロクに校正もされていない本が氾濫し、カレン・マクエスチョンさんのような作家しかいなくなってしまうのかもしれません(それは極論だと、僕自身も思うけど)。

 
 僕としては、紙の本に愛着はあるけれど、昨日書いたように「電子書籍という選択肢」はあったほうが嬉しい。
 ただ、「紙の本」と「電子書籍」のあいだの壁よりも、「本を読む人」と「読まない人」のあいだの壁のほうが、はるかに高いような気はします。
 いずれは、「電子書籍が基本になる時代」が来るのだろうとは思うけど、現状では、それはまだまだ先のことで、いま40歳の僕が、そんな時代を目にすることができるのか、疑問ではありますね。

 

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