琥珀色の戯言

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【読書感想】ミュージアムの女 ☆☆☆☆

ミュージアムの女

ミュージアムの女


Kindle版もあります。

ミュージアムの女 (コミックエッセイ)

ミュージアムの女 (コミックエッセイ)

内容(「BOOK」データベースより)
その隅っこに座っている人は人形ではありません。人間です。岐阜県美術館公式アカウント発twitter&facebook。新聞・テレビ各メディアで話題となった美術館のお仕事4コマ!!


 美術館の隅っこで、ずっと椅子に座っている人=監視係さん。
 僕はあの仕事って、アルバイト募集でやってきて、仕事が終わったら「かったるいよね~」とか言いながら帰っていく人たちがやっているのかな、と思い込んでいました。
 だって、「見張ってるだけ」だし、って。
 本当にすみません、この本を読んで、監視係といっても、美術館の大事なスタッフであり、そんなに簡単な仕事じゃない、ということがわかりました。
 企画や展示を担当する「学芸員」のような(美術館的な)花形業務ではないけれど、作品を守り、さまざまなトラブルに現場で対応するために、欠かせない仕事なのだよなあ。


 退屈そうな仕事だなあ……なんて思い込んでいて、ごめんなさい。

「監視の仕事って、何が一番大切ですか?」という質問にずばりお答えしましょう。


 睡魔との戦いです。


 ……やっぱり、眠くなるんじゃないか……
 ただし、「発生頻度はまれ」なのだそうです。
 
 見ることが仕事なのだけれど、あまりジロジロみるとお客さんのほうも気になってしまう、ということで、「相手に気づかれて不快にさせない程度に見る」技術も必要だとのことです。
 来館者であるこちら側からしても、監視係の人の動きって、ちょっと気にはなるんですよね。あんまり変な動きをする人はいないのですが、あまりじっとしている人だと、動いているところを見てみたい、なんて気分になったりして。


 監視係には、こんな仕事もあるそうですよ。

通称「虫報告」


館内で虫を発見したら、害のある・なしに関らず、すべて捕えて学芸部に「提出」します。美術品の管理はいろいろと大変なのです。


 この本によると、捕まえた虫を「生死にかかわらず」、要らない封筒に入れて、見つけた場所、時間、体長などの「報告書」まで書かなければならないそうです。
 美術館での仕事には、こういうものもあるんですね……
 作品に害を及ぼす可能性のある虫を「文化財害虫」と呼ぶのだとか。


 最近は、作品や時間帯を限定して、写真撮影OKの美術展もけっこうあるのですが、作者が働いている岐阜県美術館では、今のところ「写真撮影禁止」なのだそうです。
 なかには「あのルーブル美術館でも作品の撮影OKなのに」と言うお客さんもいるのだとか。
 作者はこうコメントしています。

 写真撮影の問題には、作品保護やお客さんが鑑賞される際の快適さ、そして著作権のなかの「複製権」などが複雑に関係しています。ちなみに、ルーブル美術館の展示品は、そのほとんどが著作権保護期間をすでに過ぎているのです。


 その美術館の「サービスのよさ」や「先進性のちがい」だけが理由じゃないんですね。
 作品の写真撮影って、けっこう、いろんな要素が絡んでいるみたいです。
 そういうことを知らないと、「あのルーブルだって撮影できるのに」って、思ってしまいますよね。


 正直、美術に興味がない人には、あまり面白い仕事じゃないだろうな、とは思うのですが、休日にも美術館に足を運んでしまう、というスタッフたちの「ミュージアム愛」には、そんなに好きな仕事ができて、うらやましいな、と思うんですよね。
 収入とか将来性はわからないけれど、いま、自分が好きな仕事をしている人が、その仕事について語る言葉には、すごく魅力があります。


 僕はこれを読んで、岐阜県美術館に行ってみたくなりましたし、地元のそんなに大きくはない美術館にも、もう少し積極的に足を運んでみようかな、と思いました。
 

 ただ、こういう「お仕事の裏側」を知り、その存在を意識するようになると、美術館で、ちょっと緊張してしまうかもしれませんね。


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