琥珀色の戯言

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【読書感想】『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕 ☆☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
競い合うように数々のスクープを連発し、権力に挑み、大物のクビを飛ばし、事件の真相を追い、人間の真実を描いてきた両誌。週刊誌メディアは、なぜこれほどの力があるのか?そもそも、いかに週刊誌というメディアがつくられたのか?スクープをものにすべく記者たちはどう動くのか?権力やタブーといかに闘うか?新聞メディアの驚愕の劣化とは?週刊誌が描いた事件の裏側の人間模様とは?そして、これからメディアはどうなるのか?両誌の歴史と内幕を知り尽くした巨頭OBの二人(元『週刊文春』編集長と元『週刊新潮』副部長)が、すべてを語り尽くす!


 元『週刊文春』編集長の花田紀凱さんと、元『週刊新潮』副部長の門田隆将さんの対談本です。
 『週刊文春』『週刊新潮』という、スクープ週刊誌の両巨頭を代表するOBによる、週刊誌というメディアがこれまでに辿ってきた道と現状、そして、今後の可能性について。


 ワイドショーの元ネタとして、『週刊文春』『週刊新潮』などの週刊誌の記事が使われることが多いのですが、『週刊文春』の現在の編集長・新谷学さんが、「雑誌の記事をテレビが使うときには表紙も映すとかクレジットを入れる、記事の使用一回につきいくら支払うということをシステム化した」のだそうです。
 これが、週刊誌にとってはかなりの収入源となっているのだとか。
 テレビ番組側としても、こういうルールがあると、お金の面では痛いのかもしれませんが、「ガイドラインにのっとれば使える」という、わかりやすさはありますよね。
 花田さんは、『週刊文春』のスクープだった「三浦事件」「ロス疑惑」がテレビに勝手に使われまくっていたことに憤慨しておられたそうです。
 『週刊文春』がこのルールを作り上げたのは2016年になってからで、その後に『新潮』も続いたのですが、ある事件が、『週刊新潮』に予想外の収入をもたらしました。

門田隆将:週刊新潮』(2017年6月29日号)のスクープ「『豊田真由子』その女代議士、狂暴につき」では、ずいぶん儲けたようです。しかも『週刊新潮』は決定的な音声データも握っていました。
 テレビ局は、「この、ハゲーっ!」とか「ちーがーうーだーろー!」などといった豊田真由子代議士(当時)の音声を流すのに、『週刊新潮』に一番組ごとにウン万円の使用料を払う。すると、各局が毎日毎日、朝も昼も夕方も、いろいろな番組でこれを流していましたから、音声を放送した番組の数の分だけウン万円がどんどん『週刊新潮』に入ってくるわけです。インターネットでは、「新潮は、このネタだけで1500万円稼いだ」と話題になりましたね。


花田紀凱それは、雑誌の経営を考えたら、ずいぶん大きな金額ですよね。広告収入は別として、純粋に雑誌の売り上げ利益だけで1000万円以上稼ごうと思ったら、五万部以上、余計に売らなければならないことになります。


門田:私も、よもや『週刊新潮』が音声で儲ける時代が来るとは思いませんでした。これには驚きました。


 最近では、高画質の動画撮影が簡単にできるようになったため、週刊誌も動画で撮影しておいて、そのなかの「画像」をピックアップしてグラビアに載せることが多いそうです。
 それにしても、「この、ハゲーっ!」で1500万円か……
 このお金って、豊田真由子さんやこの音声を録音したハラスメントの被害者にも分配されるのでしょうか?


 『週刊文春』と『週刊新潮』は、ライバルであり、お互いに切磋琢磨して週刊誌というメディアを盛り上げてきました。
 ただし、材料を集めてくる「データマン」とそれをまとめて記事を書く「アンカーマン」の分業システムをとっていた『新潮』と(経験を積むと、データマンからアンカーマンになっていく)、最初から、ひとりの記者が取材をし、自ら原稿も書くという『文春』という大きなちがいもあるのです。


 おふたりは、いまの日本のメディアが抱えている大きな問題として、「新聞ジャーナリズムの堕落」を挙げています。門田さんは「もう堕ちるところまで堕ちた」とも仰っています。

門田:新聞には、「報道面」と「論評面」の二つがあります。報道面というのは、いわゆるストレートニュースで、これは自分がどんな主義主張を持っていようと、きちんとファクト(事実)を読者に伝えなければいけません。一方、論評面はそれをもとに、自分たちの主義主張に基づいて、さまざまな論評を展開すればいい。しかし、朝日を筆頭に、今の新聞は自分たちの主義主張にしたがってストレートニュース自体をねじ曲げている。
 つまり、新聞は主義主張、イデオロギーに基づいて”情報操作をするため”の媒体に成り下がってしまいました。私はなにも、新聞は不偏不党であれと言っているわけではありません。ただストレートニュースだけは、ファクトをきちんと報じろ、ということなんです。これが歪められれば、読者は物事をきちんと判断することができないからです。
 たとえば、「安倍の葬式はうちが出す」という朝日新聞幹部の有名な言葉がありますが、ファクトを二の次にして、あるいは歪めて、安倍晋三首相を貶めることを目的にしたような「印象操作」を新聞は延々とやっているわけです。こういうことは1970年代にもありましたが、今ほどひどくはありませんでした。


花田:主義主張に基づいて情報操作するのは日本の新聞の伝統じゃないですか。


門田:おっしゃるとおり、新聞は記者クラブを通じて、情報をずっと独占してきましたからね。そして、それを自分たちの主義主張に基づいて、自分たちの都合のいいように加工して、大衆に下げ渡していたのです。
 しかし、そのやり方がより露骨になり、どうしようもなくなったときに、インターネットが登場した。それでもう大変なことが起こりました。SNSなどの情報発信のツールを国民の多くが持ってしまったのです。


 インターネットはネットで「デマ拡散装置」になりやすいのですが、たしかに、さまざまな角度から事実を検証するための武器にとして利用されていますよね。
 

 門田さんは、こんな実例を紹介しています。

門田:加計問題ももちろん、森友問題でも、新聞は本質を絶対書かないですよね。第一章でも紹介したように、森友問題というのは、森友学園が小学校を設立しようとする際、学校建設用地として森友学園が購入した国有地が、安倍首相が裏で便宜を図って不当に安い値段で売られたのではないか、というものでした。
 しかし、森友学園が買った当該の土地は、大阪空港騒音訴訟のまさに現地で、建物の高さ制限もあるなど、いろいろな背景がある場所でした。騒音訴訟の結果、国はここを買収せざるをえなくなったのですが、もし買い主が現れれば、ぜひ手放したい。長い時間が経ったあと、やっと三カ所を売却できた。今、豊中給食センターになっている土地と、野田中央公園になっている土地、そして森友学園の三つです。
 国としては、「とにかく買ってください」という姿勢で、「これも付けます、あれも付けます」と、補助金その他を付けまくって、実質的に豊中給食センターは100%の値引きになっています。野田中央公園は実質98.5%の値引きで、たった2000万円しか出していない。
 それに比べて、森友はまだ86%しか値引きしてもらってないわけです。だから、さらに頑張れば、もっともっと値引きになったかもしれない。そんな事情の土地であることは、少し取材すればわかることで、もともと安倍の「あ」の字も出る話ではありません。
 もちろん大阪の記者たちはほとんどが知っています。しかし、新聞は安倍首相のプラスになることは書かないんです。真実を言えるのは、テレビでは「そこまで言って委員会」(読売テレビ)ぐらいのものではないですか。つまり新聞は、もともと火のないところに煙を立てようと懸命になっている。そのことは、新聞記者なら、もちろん自覚があるはずです。


 森友学園の件に関しては、なるほどなあ、と思うし、朝日新聞のやり方も酷い。
 この話が事実であれば、たぶん、大部分の人は、「なんでこんなに大騒ぎしているんだ?」って思うはずです。
 ただ、花田さんも門田さんも「不偏不党の人」とは言い難いのも事実で、この本も『週刊文春』『週刊新潮』の内幕は面白いけれど、政治の話に関しては、鵜呑みにするのはためらわれます。
 真実を言えるのは『そこまで言って委員会』ぐらい、って……あの番組も、ポジショントークでしかないと思うのですが。


 裁判で「情報源を明かせない」ことや慰謝料の引き上げで、週刊誌の「告発」が難しくなってきていることや、週刊誌が(新聞もですが)売れなくなってきていることなど、現在の危機的な状況についても語られています。

門田:週刊文春』も『週刊新潮』も、そろそろ転換が必要だと思いますよ。最近の文春砲を見ると、パターンがあって、何でも「被害者の告発」にしてしまっていますよね。そんな作り方が必要なのかわかりません。だから、最近は告発記事全般が信用していいのかどうか、怪しくなっています。


花田:しかも、『週刊文春』は芸能ネタのスクープが多い。新谷編集長に言ったことがあります。「AKBの女の子がデートしたっていいじゃない。年頃なんだから。それを、夜の夜中に、大の男ども四、五人が張り込んで、そんな写真を撮ってどうなるの」と。
 ただ、新谷編集長に言わせるそれをネットで先に流すと、テレビが飛びついてくるし、雑誌本体も売れる。それに、第一章でも話に出たように、テレビが雑誌の記事を使うと、お金になる。だから芸能ネタをやることになると。
 だけど、こういうことをやっていると、やめられなくなります。それは自らの首を絞めることになる。『週刊文春』が生き残っていくためには、ぼくも方向転換したほうがいいと思います。今のようなネタをやるのだったら、別の媒体でやればいい。たとえば、ネットだけでやるとか。

門田:たとえば、もし、志あるネット企業が私に「あなたを雇って、軍団を作ってもらいましょう。ただし、お金がかかりすぎるのは困るので10人だけにしてください」と言ったら、それはできますよ。
 しかし現状のように、原稿料も払わず、タダで提供するのがネット文化の本質なのだとしたら、収益をあげるのは難しくなります。人の褌で相撲を取る文化の域を脱せられないわけですから。そこが、今後どうなっていくかですよね。
 ネットでの収益と言えば、一つは、広告収入モデルなのでしょう。たしかにネットに投じられる広告費はどんどん増えています。最初、ネット広告が雑誌の広告を抜いたと聞いたときは驚きましたが、次には新聞広告も抜きました。
 でも、広告収入モデルで、『週刊文春』や『週刊新潮』のような「告発型ジャーナリズム」ができると思いますか(笑)。


 新聞や雑誌も広告収入と無縁ではないのですが、たしかに「告発型」に特化するのは難しいですよね。
 読者のニーズとしては、「芸能人の不倫やAKBメンバーのデート」のほうが高いことも多いでしょうし。
 

 『文春砲』も、けっして安泰ではないというか、認知度はこれだけ上がっても、収益という面では、難しいところも多いようです。
 ネットで『週刊文春』発の記事を読んだことがある人は大勢いても、紙や電子書籍の『週刊文春』を買っている、という割合は、そんなに高くない。
 僕は、『週刊文春』や『週刊新潮』は、今後さらに、テレビやネットに取材した情報を売るためのスクープメディア化していくのだろうな、と予想しています。
 どう考えても、紙のメディアがまた売れるようになっていくとは考えにくいし、少なくとも日本では、ネットの有料メディアがそんなに売れるとは思えませんし。


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「週刊文春」編集長の仕事術

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