琥珀色の戯言

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【読書感想】the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 ☆☆☆☆

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

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Kindle版もあります。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

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内容紹介
GoogleAppleFacebookAmazon――GAFA


GAFAが創り変えた世界の姿とは。
この激変を予言した著名教授が断言する、次の10年を支配するルールとは。
米国発、22カ国で続々刊行のベストセラーがついに日本上陸!


【本書の3大テーマ】
GAFAはなぜ、これほどの力を得たのか
GAFAは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
GAFAが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか


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 SAGA佐賀!という、ちょっと懐かしい歌を思い出してしまったのですが、たしかに、今の僕の生活というのは、この「四騎士」がないと成り立たないなあ、と認めざるをえません。本当に、いつのまにこうなってしまったのか。
 iPod以前のAppleは、ちょっと気取った人たちが自慢げにもっている、割高なパソコンを作っているメーカーでしかなかったのに。
 この本を読んでいると、「四騎士」があまりにも突出した存在であることをあらためて思い知らされるのです。

 何十億人がこれらの企業の製品とサービスを便利に使っている。しかし経済的利益を得ている人は腹が立つほど少ない。
 ゼネラル・モーターズGM)の1人当たり時価総額時価総額/全従業員数)はおよそ23万1000ドル。大したものだと感じるかもしれないが、フェイスブックは1人当たり2050万ドルだ。前世紀のアイコン的企業であったGMの約100倍である。同社の従業員数は2万人に満たない。それで先進国1国規模の経済効果を生み出していると考えてみてほしい。
 こうした経済価値の増大はどんな経済原則でも説明できないように思える。2013年4月から2017年4月までの4年間で、四騎士の時価総額はおよそ1兆3000億ドル増加した。これはロシアのGDP総額と同じだ。
 新旧を問わず、そして大企業であれ巨大企業であれ、他のテック企業は存在感を失いつつある。ヒューレット・パッカード(HP)やIBMを含め、老いていく巨人は四騎士の目の端にも入っていない。ハエのように飛び回っている何千もの新興企業は、はたき落とす価値もない。四騎士にとって目障りな存在になりそうな企業は買収される――下々の会社には想像もできない額で(フェイスブック創設5年目で従業員数約50人だったインスタント・メッセージ会社ワッツアップに200億ドル近くを支払った)。
 そしていまや四騎士に対抗できるのは……四騎士だけなのである。


 これまでの製造業に比べて、四騎士は、効率的に(少人数で)莫大な金を稼いているのです。
 ライバルになる可能性がある新興企業は、とてつもない高値で買いとり、商売の範囲も広げています。
 もともとは書店だったAmazonは、いまや一部の生鮮食品を除くほとんどのものが買えるようになりました。
 動画の配信も行っていますし、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)は世界のクラウド市場のシェアの3割を占めるに至っています。
 今や、AWS事業は全社売上の9%、営業利益では74%をAWS事業が占めているそうです。
 ネット通販を効率的に行うために構築されたクラウドコンピューティングのシステムがいまや収益の柱となっており、極論すれば、Amazonは、もう通販で儲けなくてもいい会社になっているのです。
 そこで儲けなくても良い会社に対して、小規模でそこが主戦場の会社が価格競争をしても、かなうわけがない。
 マイクロソフトWindowsでパソコン業界を支配していたときには、まさかマイクロソフトがこんなにあっさりその玉座を譲り渡すことになるとは想像もしていなかったので、四騎士でさえも、永遠の支配者ではないのでしょうけど……


 四騎士は、市井の人々に「自分が発信者となり、主役となれる(ような気がする)世界」を提供し、より安い商品を提供し、クールなライフスタイルを提示しています。
 僕自身、もう、iPhoneAmazonGoogleが存在しない世界では、生きていけないような気がします(個人的には、Facebookは無くても良いのですが)。


 その一方で、「四騎士が支配する世界」には、こんな変化も起こってきているのです。

 最近のカンファレンスで、私の前にジェフ・ベゾスが講演を行ったことがある。


(中略)


 雇用破壊と、社会にとってのその意味について訊かれたとき、彼はこう答えた。「最低限所得保障制度をふたたび採用することを考えるべきだ。そうでなければ、逆所得税によって、すべての国民に貧困ラインを上回るだけの現金を支給するべきだ」。聴衆は口々に褒め讃えた。「弱者のことをそれほど考えてくれるとは、なんと偉い人だ」と。
 

 しかし待ってほしい。アマゾンの倉庫内部の写真が世間にあまり出回っていないのに気づいた人はいないだろうか。それはなぜなのか。あまりにも衝撃的で、不安をかきたてる光景だからだ。
 安全が守られていないとか? 『ニューヨーク・タイムズ』の記事のとおり、従業員を酷使しているとか?


 どちらも違う。不安をかきたてるのは、従業員を酷使するどころか、従業員がいないことなのだ。ジェフ・ベゾスアメリカ人の所得保障を支持するのは、将来の労働事情を見越していてのことだ。少なくとも彼のビジョンには、人間のための仕事はないのだ。ゼロとは言わないまでも、現在の労働人口を養うにはとても足りない。いま人間が行っている仕事の多くは、いずれロボットが遜色なく(ときにははるかにうまく)行えるようになるだろう。しかもロボットは子どもを空手に連れて行くために早退したいといった面倒な要望も出さない。


 著者は、アマゾンの成長により、小売業界で7万6000人分の仕事が破壊されると考えられている、と述べています。
 先進国では人口減少や高齢化が進んでいくことが想されるとはいえ、ITやロボットによる雇用削減のスピードは、人口減少を上回るものになることが予想されます。
 これまでは、人間がやるには退屈すぎたり、効率が悪すぎたりする仕事をロボットがやっていたけれど、これからは「ロボットがやるには高コストすぎる仕事」を人間が安く請け負う時代になっていくのです。

 昔のヒーローやイノベーターは何百万人分もの仕事を生み出した。そしていまも生み出している。ユニリーバ時価総額は1560億ドルで、17万1000世帯の中流家庭を支えている。インテル時価総額1650億ドル、従業員数は10万7000人だ。それに比べフェイスブック時価総額4480億ドル、従業員数は1万7000人にすぎない。
 私たちはあれだけの大企業ならたくさんの雇用を生み出していると思ってしまうが、実は違う。そこにあるのは報酬が高い仕事が少しだけで、それにあぶれた人が残り物をめぐって争っている。この調子だとアメリカは300万人の領主と3億人の農奴の国となる。もう一度繰り返すが、いまほど億万長者(ビリオネア)になるのは簡単だが、百万長者(ビリオネア)になるのが難しい時代はかつてなかった。


 ITのおかげで、都市と地方の情報格差は縮小し、みんなが安い値段でショッピングを楽しめるようになりました。
 その一方で、「ちょっと他人より優秀なだけでは成功できない世の中」「小さな成功がつかみにくい社会」になってしまっているのも事実なのです。
 「中流」が衰退し、ごくひとにぎりの「きわめてすぐれた人や組織」が、総取りしてしまう時代。
 著者の「いまほど億万長者(ビリオネア)になるのは簡単だが、百万長者(ビリオネア)になるのが難しい時代はかつてなかった」という言葉には、同意せざるをえません。
 「生まれたときの属性で将来が決まってしまう時代」よりはずっとマシなのかもしれないけれど、「格差」は今後も広がっていくと予想されます。
 ほとんどの人は「生活の保障をされて、ただ、消費するだけの存在」として生きて、死んでいく。
 もしかしたら、それはそれで、けっこう幸せなのかもしれませんが。


ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち

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