琥珀色の戯言

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セックスボランティア ☆☆☆☆

セックスボランティア (新潮文庫)

セックスボランティア (新潮文庫)

 2年前に単行本が発売されたときには、かなり話題になった本なのですが、ついに文庫化。某ジュンク堂で購入したのですけど、平積みにしてある文庫本がこんなに次々と売れていくのをはじめてみました。それにしても、都会の本屋ってやっぱり凄いよなあ。正直、僕の地元の郊外書店で、レジのお姉さんにこのタイトルの本を差し出すのはちょっとためらわれるのですけど(ヘタしたら、あの病院の○○先生、このあいだ本屋で、セックスなんたらって本、買ってたらしいよ」なんて噂にもなりかねません)、都会では、みんな平然と買っていくんだものなあ。
 しかしこの本、内容は至極真面目な本で、著者の河合香織さんが「障害を抱える人の性にかかわる人たち」に直接インタビューした内容が書かれているのですが、そんなに生々しい描写はほとんどありません。解説によると、「著者がこんな扇情的なタイトルをつけながらも、『自分自身でセックスボランティアを体験していないこと』を批判する論調もけっこうあった」とのことでした。そんなのまず立花隆に言ってやれよ、という話ではあるのですが。でも、多くの取材対象者がある程度心を開いたのは、取材者が河合さんという「若い女性」だったからなのかな、とも思うんですけどね。そして、この扇情的なタイトルにも「計算」が無いとはいえないでしょう。
「障害を抱えている人々にも性欲があること」を理解するのはそんなに難しいことではないと思うし、「その性欲をなんとかしてある程度は満たせる方法が存在すること」を否定する人もほとんどいないと思うのですが、その一方で、「じゃあ、自分がそれをやるのか?」「自分の家族や恋人がその『ボランティア』をやることを許せるのか?」と問われると、それはまた「別の問題」だと考える人が多いはずです。もちろん、僕もそうなんですよね。いくら「ボランティア」だと言われても、自分の彼女や娘が他人とセックス(あるいは、その類似行為)をすることを許せる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。金なら出してやるから、それは勘弁してくれ、と言うかもしれません。
 でもやっぱり、いくらお金があっても、そこに「人間」がいなければ、「性」というのは満たされない。
 ただ、考えようによっては、「セックスに飢えている人」というのは、世の中にたくさん存在しているわけで、「あなたは五体満足なんだから、自分でなんとかしなさい!」と言うのもまた「差別」なのかもしれませんし。
 僕がこの本を読み終えての率直な感想は、「世の中には、考えても答えが出ないであろうことが、たくさんあるんだよな」ということでした。そして、この本を読んだだけで、こういう問題について真面目に考えているつもりになっている自分は、単なる「悩みたがり」なのではないかなと軽い自己嫌悪にも陥りました。自分が赤の他人のことまで真剣に面倒みられるほど余裕のある人間ではない、というのを自覚するのには、非常に有効な本ではありますね……

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