琥珀色の戯言

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たぶん最後の御挨拶 ☆☆☆☆

たぶん最後の御挨拶

たぶん最後の御挨拶

 東野圭吾さんの「たぶん最後の」エッセイ集。僕は今まで東野さんのエッセイをほとんど読んだことがなかったのですけど、小説での「緻密さ」や「作者の顔をなるべく見せない書き方」とは違う、サービス精神旺盛な東野さんの一面がうかがえて、すごく愉しめました。『あの頃ぼくらはアホでした』という東野さんが幼少期のことを書いたというエッセイ集も読んでみたくなるくらいに。前半の「年譜」や「自作解説」「文学賞に落ちまくっていたときの話」などに比べると、後半の舞台のパンフレットに寄稿されたものやスポーツに関するエッセイは、僕にはあまり面白くはなかったんですけどね。たぶん1冊の本にするためにいろんなところから単行本化されていないエッセイをかき集めてきたんだろうなあ。
 東野さんの中には、「良い小説を書きたいという熱意」と「作家として食べていくための冷静な計算」が同居しているみたいなのですが、このエッセイ集には著書が「売れなかった」「売れた」というようなことが赤裸々に書かれています。そして、そのことについて東野さんがどんなふうに考え、悩んできたのかも含めて。東野さんのような人気作家でも、けっして順風満帆な作家生活ではなかったのですよね。
http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20060309
↑で紹介した「東野圭吾さんが『作家になっていちばん辛かった時期』」も収録されていますし、東野さんのファンや作家という仕事に興味がある人にとっては非常に興味深いエッセイ集だと思います。これで「最後」なんて勿体ない。

 そうそう、僕がこのエッセイ集のなかで最も印象に残ったのは、信じられないくらいのボリュームのコース料理が出てくる『梅林』というお店の話です。一生に一度くらいはこんな店に行ってみたいものだなあ。たぶん、一度行けば十分だとは思いますが。

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