琥珀色の戯言

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編集者という病い ☆☆☆☆

編集者という病い

編集者という病い

ダ・ヴィンチ』での見城徹さんへの著者インタビュー(「幻冬舎」と「太田出版」の不思議な友情(by 活字中毒R。('07/3/14))を読んで、「絶対に買おう!」と思っていた本なのですが、読みながら、「見城徹というのは本当にたった独りの人間なのだろうか?」と、ただただ圧倒されるばかりでした。ひとりの編集者でありながら尾崎豊の「復活」を献身的に支え、石原慎太郎に『弟』を書かせ、村上龍とテニスに明け暮れ、中上健次ゴールデン街で文学論を闘わせる……
 この本は「書き下ろし」ではなくて、見城さんが書かれたもの、あるいはインタビュー等に答えられたものを集めたものなので、同じような内容が何ヶ所かで繰り返されていたり、「成功したオヤジの自慢」っぽいなと思ってしまうところもあるのですが、そんなのは些細なことです。こんなものすごい「編集者」がいたのだということ、そして、「編集者」という仕事は、僕がイメージしていたような「作家とそれなりに仲良くして、原稿の催促をするだけ」なんて甘いものじゃないんだな、ということを思い知らされました。
 願わくば、見城さん、あるいは見城さんに近い人が書いた「自叙伝」あるいは「半生記」を読んでみたいものです。

 尾崎豊の場合は、彼と抜き差しならないほどやりあわなければならないときがよくあった。逃げ道もなくなり、「もうこれ以上無理だ、死ぬしかない」と、何度自殺しようと思ったか分からないよ。彼は、気分が滅入るとスタジオで暴れるわ、外に出て自動販売機に殴りかかるわ。『月刊カドカワ』の編集部に来て、突然机の上に飛び乗って叫びはじめたことがあった。「お前らみたいにのうのうと生きてるやつに原稿を書いてるかと思うと、腹が立つんだーっ」と、絶叫すると持ってきた原稿を破って空にバラまいてしまう。
 僕は、そんな尾崎を、羽交い絞めにして会議室に押し込み、背中をさすってやる。「尾崎、何してるんだ、しっかりしろよーっ」と。毎日、それを繰り返していた時期もあったんですよ。

 僕などは、こういうエピソードを読んだだけでも「こんな人とずっと付き合って『書かせる』のは無理だ……」と愕然としてしまうのですが、見城さんは、こういう「表現しなくては生きていけないクリエイターたち」に全身全霊をかけてぶつかっていき、彼らから「作品」を引き出していくのです。
 ものすごく面白いところと、読み飛ばしてしまいたくなるようなところとの落差がけっこうあったので☆4つにしましたが、「本」「作家」「本を創る人」に興味がある方には、絶対に楽しめる本だと思います。

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