琥珀色の戯言

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裁判官の爆笑お言葉集 ☆☆☆☆

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。

 著者の長嶺超輝(ながみねまさき)さんは1975生まれ。九州大学法学部を卒業後、弁護士を目指し、塾講師や家庭教師の指導と並行して司法試験を受験。七回の不合格を重ねて司法試験は諦め、現在はライター業の合間をぬって裁判傍聴に通う日々なのだそうです。最近は「裁判傍聴」がちょっとしたブームみたいなのですが、この本の場合には、法律家志望だった著者から見た「裁判官」たちの姿が描かれているのです。正直、長嶺さんの場合は「プロ野球選手になりたかった若者が毎日球場に野球を観に行く」というようなものですから、寂しくなったりしないのかな、とか僕は思うのですけど。まあ、それはさておき、この本そのものは非常に読みやすいしかなり面白いです。ただ、この本のタイトルには「爆笑」と書いてありますが、実際に読んでいて「爆笑」できるような記述は全然なかったんですけどね。むしろ、「裁判官って激務なんだなあ」という驚きと、「裁判官というのは、自分を見失ってしまいやすい仕事なのだなあ」という恐怖感のほうが僕には強かったです。いや、「裁判官は果たして犯罪者に『説諭』できる資格があるのだろうか?」とも感じたんですよね。それは、僕自身に対する、「医者というのは患者に説教できるのだろうか?」という問いでもあるのです。
 裁判というシステムのなかで、自分を出したい気持ちと寡黙に法律に従わなければならない公的な立場がせめぎあいながら、この「裁判制度」というのは続いているのです。まあ、正直僕はずっと「日本の裁判の(とくに凶悪犯罪についての)量刑は甘すぎるのではないか?」と感じていて、「そんな説諭とかより、もっと厳しい判決を下せばいいのに」と思うことが多いです。
 裁判官にも良くも悪くも人間らしい人がいる(そして、そういう人たちはたぶんあまり偉くなれない)、というのがよくわかりますので裁判員制度が始まる前に、一度は目を通しておいて損は無い本です。
 もっと「面白く」読みたい人には、↓をオススメしておきます。

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)

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