<あらすじ>
夏の日の東京。ギャンブルから足を洗えず、借金まみれのシンヤ(岡田准一)は、オレオレ詐欺に手を染め、老婦人をだまそうとする。しかし、その老婦人と心が触れ合ってしまい、金を引き出せずにいると、街で寿子(宮崎あおい)という女性と出会う。寿子は、母・鳴子(宮崎あおい・二役)の恋の軌跡をたどろうと、とある場所へ向かっていた。(シネマトゥデイ)
この映画を観ながら、僕が考えたこと。
どうして人は「自分のことを好きになってくれる人」を「いちばん好きになる」ことができないのだろう?
どうして人は、一度好きになってしまった人を、「完全に嫌いになってしまう」ことができないのだろう?
僕は原作の劇団ひとりさんの小説に関しては、「まあ、芸人さんの処女作としては、よくできてるんじゃない?」というような斜に構えた評価をしていたのですが、この映画は、その原作をうまくまとめたな、という感じがしました。正直、設定は同じではあるのですが、原作の登場人物たちはもっと「救いようのない人たち」だったので、この映画のほうは「ヌルい世界観」になっているんですけどね。
ただ、原作を忠実にやってしまうと、たぶん多くの観客は引いてしまうでしょうから、このくらいでちょうどいいのかな、とも思います。そういえば、この映画の監督の平川雄一郎さんって、あの堤幸彦監督に師事されていたそうで、たしかに、この映画の「原作の薄めかた」は、堤監督の『自虐の詩』に通じるものがあるような気がしました。脚本の金子ありささんの「巧いんだけどまとまりすぎているような感じ」も、まさにいつも通り。
この映画を「良い話にしようとしすぎている」という嫌悪感から救っているのは、やはり、役者さんたちの力なのではないかと思います。正直、西田敏行さんと宮崎あおいさんに関しては、「うーん、なんかあまりにも『この人がやりそうな役』すぎて、ちょっと食傷気味だなあ」とは思ったのですが。
僕は宮崎あおいさんの「なる子」に結構期待していたんですけど、登場場面も少ないし、お笑いのシーンも「ああ、かわいいね」とは思うんだけど、けっして「面白い」とは感じませんでしたし。
ああ、なんだか悪口ばっかり書いてしまったのですが、僕はこの映画けっこう好きです。DVD化されたら、もう一度観ようかな、と思っているくらいに。個人的には「ドロ子」の話がいちばん好きでした。いやほんと、ベタなんだけど、ああいう「勝負どころで、つい身を引いちゃう人」って、なんだか他人とは思えなくて。
そうそう、あともうひとつ、この映画の画期的な点を挙げるとすれば、「パチンコ依存症」のことを少しだけでも描いていることではないでしょうか。いやほんと、こういうギャンブルにはまって借金漬けになっている人ってけっこういるんですよ、若者に限らず。ところが、マスコミはその実態をほとんど伝えることはありません。だって、パチンコメーカーは、いまや「重要な大スポンサー」ですからね。シンヤの「パチンコ依存」の場面は、テレビ放映されるときにはカットされてたりして……
しかし、この映画に出てくる人たちで、これから「まっとうな人生を送れそうな人」って、寿子くらいだよね。客観的にみると、これほど「救いようのない話」っていうのも、あんまり無いよなあ……
- 作者: 劇団ひとり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/01
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