琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ゲーム職人 (第0集) ☆☆☆☆


ゲーム職人 第0集

ゲーム職人 第0集

「ゲーム職人」たちの数々の名言を収録
組織のトップ。プロデュースをする人。シナリオを書く人。曲を作る人。快適なアタッチメントを開発する人。それらを批判し記事を書き人…ゲーム文化の発展は、さまざまな役割の人達が、それを担ってきた。全員が、それぞれ違う立場から、同じひとつのものを支えて…。
そのクリエイターたち37人の証言を、過去10年分にわたり収録したのが本書である。
その中には大作のみならずマニア好みの作品や、未発売作の裏話までが含まれる。現役ゲームファン、かつてゲーマーだった世代、ゲーム業界志望者すべて必見の充実の書。

10年分のゲーム業界人インタビューを収録
マイクロマガジン社のゲーム専門誌「ユーズド・ゲームズ」「ナイスゲームズ」「ユーゲー」誌面で収録された貴重なインタビューの数々をぎっしりと凝縮した!まさに「ゲーム文化を支えた37人の証言」が一冊になりました。

この本を愉しめるかどうかは、「昔のゲーム、そして、ここでインタビューを受けているゲーム製作者たちに愛着を持てるか」ということに尽きるのではないかと思います。
こういうインタビュー本としては、かなりマイナーなクリエーターたちの話が収録されているのは非常に興味深いのですが、以下に紹介する話を読んでもピンとこない人は、たぶんあまり縁がない本のはずです。

岩崎啓眞さん(『イース1・2』『天外魔境2』)


PCエンジンCD−ROMの『イース1・2』での「アクセスを早く見せるための技法」)


インタビュアー:それはどういった技法ですか?


岩崎:すごく簡単です。要はプログラムデータのトラックっていうのは一番CDの内側になるわけなんですよ。ということは、よく使う曲(オーディオトラック)ほど内側になったほうがスピードが速いんです。


インタビュアー:よく使うものをトラックの内側にまとめておくんですね。


岩崎:ええ、インチキですから(笑)。『イース1・2』って実はすごくズルいソフトなんです。ものすごくアクセスが速いって思われているんですけど。後半に行けば行くほどアクセスが遅くなる(笑)。なぜかと言うとオーディオトラックは後半の曲になればなるほど後ろ(外側)においてあるんです。だから、オープニング時が一番速いんです。(中略)ゲームの印象は最初の15分で決まるって僕は今でも思ってるんですよ。逆に言うなら、その15分間に持てる限りのモノをぶち込んで、それで一発目に人の心をつかむんだろいう。当時CD-ROMってアクセスが遅くて、何がスゴイのかわからないってイメージがあったので、わかりやすくオープニングが始まった瞬間にいきなりガツンとビジュアルとオーディオサウンドでたたく。「ああっ、CD-ROM持ってて良かった!!」と思わせる(笑)。

遠藤雅伸さん(『ゼビウス』『ドルアーガの塔』)


(『ファミリーサーキット』の開発秘話)


インタビュアー:次は『ファミリーサーキット』についてですが、あの車同士が「当たらない」という思いきりの良さはすごいですね。走る爽快感を、純粋に追求したというか。


遠藤:ただし、「当たらない」と決めるのは結構大変でした。さすがナムコだなぁと思ったのは、一応当たるバージョンも作ってみたんですが、「確かに当たらないほうが面白いですね」と言ってくれたこと。それで決断できましたから。

ゾルゲール哲さん(『セガガガ』プロデューサー)


(『セガガガ』発売時に企画した「セガ信者募集」の際のエピソード)


インタビュアー:どんな人が「セガ信者」として応募されてきたんですか。


ゾルゲール:もうすごいですよ。「放送部で校内にセガガガマーチをかけたんですが、ところでセガってなんですか?」という十代の人や、「コンピュータの歴史」と称して学校の視聴覚室にマーク3と32Xとセガサターンを並べて、それぞれに『アフターバーナー』を入れて、「このようにコンピュータは進化してきました」と説明した小学校の教師とか。すごいネタばかりでしたよ。

三遊亭円丈さん(『サバッシュ』)


(円丈さんのインタビュー中に出てきた『HARAKIRI』というゲームについての欄外での脚注)


『HARAKIRI』:ゲームアーツの「偽史」シミュレーション。源頼朝織田信長徳川家康ショー・コスギが天下を争い、元寇や黒船が攻めてくるむちゃくちゃな時代設定と、恥をかかせると武将が腹を切る「ハラキリ」システムが素晴らしい。

 ここで御紹介したのは、あくまでも(この本に登場しているなかでは)有名なゲームクリエーターたちなのですが、この本に登場しているクリエーターの過半数は、長年のゲームファンである僕もあまり聞いたことがない人たちでした。でも、だからこそ「マイナーなメーカーでキラリと光る佳作を創ってきた人たち」の実感みたいなものが伝わってきますので、コアなゲームマニアには堪らないインタビューの数々のはず。彼らのなかには僕と同世代の人が多いのですが、読んでいたら、僕も学生時代にゲームクリエイターに憧れていたことを思い出さずにはいられませんでした。「ゲームを創れる」という羨ましさと、みんなが『ドラクエ』『FF』を創れるわけじゃない、という現実の厳しさと。

 読む人をものすごく選ぶ本ですが、楽しめる人にはとことん楽しめる内容だと思いますよ。

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