琥珀色の戯言

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洋ゲー通信 Airport 51 ☆☆☆☆☆


洋ゲー通信 Airport 51

洋ゲー通信 Airport 51

内容紹介
話題の海外ゲームの歴史と現在がみるみるわかる!

洋ゲー初心者から洋ゲー冒険家まで楽しめる洋ゲー入門本の決定版!
世界的に注目を集めるエクストリームなクリエータ須田剛一と、洋ゲー冒険家マスク・ド・UHによる初の洋ゲー本!
週刊ファミ通連載の、洋ゲーの歴史がみるみるわかるページ"Airport 51"をまとめて収録!
さらに、洋ゲーの買いかた、業界著名人の洋ゲー談義などがギュッと詰まった1冊です!

内容(「BOOK」データベースより)
『キラー7』や『ノーモア★ヒーローズ』など、独特な作風で知られるゲームデザイナー須田剛一氏と、洋ゲーという大海原にマスクひとつで泳ぎ出る謎の洋ゲー冒険家マスク・ド・UH氏がお送りする、週刊ファミ通の人気連載が、ついに単行本化。これ1冊で、海外ゲームの歴史と秘密がみるみるわかる。

勢いで☆5つつけてしまいましたが、この本、たぶん、「好きな人にはたまらない」と思うんですよ。
でも、「興味がない人には、全く読む動機も愉しさもない」はずです。
以下の感想で興味をもたれた方は、ぜひ一度読んでみてください。そうでない方には、おすすめしません。

この「洋ゲー通信」、『ファミ通』に連載されていたのは知っていたのですが、僕にとってはいつも「読みとばしてしまうページ」だったんですよね。
今回、単行本になったのをきっかけにまとめて読んでみたら、「こんなに面白いページだったのか!」と驚いてしまいました。
僕が「洋ゲー」に興味を持っていたのって、マイコン時代の初期、シエラ・オンラインのハイレゾアドベンチャーゲームの時代から(当時は『ミステリーハウス』にひたすら憧れていたものです。アドベンチャーゲームって、なんて面白そうなんだろう!って)、『ウィザードリー』『ウルティマ』の全盛期、そして、『ログイン』のランキングでフライトシミュレーターが売り上げ上位を占拠していた時代くらいまででした。
今から考えると、『ログイン』は、本当に洋ゲーを積極的かつ好意的に紹介していたし、「こんな面白いものがあるよ!」っていう読者へのサービス精神が旺盛な雑誌だったよなあ……

結局、スーパーファミコン時代くらいから、僕はマイコン(パソコン)ゲームを離れ、家庭用ゲーム機が中心のゲームライフをおくってきたのです。
その後、『グランド・セフト・オート』くらいまでは、ほとんど洋ゲーに興味はありませんでした。
あっ、でもファミコンで『スパイ vs スパイ』は結構やったかも。

この『洋ゲー通信 Airport 51』では、僕にとって、ものすごく懐かしい時代の話(セガの鈴木裕さんに、「そのアドベンチャーゲームは、『タイムマシン』じゃなくて、『タイムゾーン』ってタイトルですよ!ってツッコミを入れたくなってしまうくらい)と、この15年間くらいの僕の人生の「洋ゲー不在の時期」を埋めてくれるさまざまな面白いエピソードが紹介されています。
「なんかヘン」なだけだった「洋ゲー」は、いつのまにか質的にも日本のゲームを追い越す作品が量産されるようになっていったんですよね。

僕がもっとも面白かったのは、この「アタリショック」に関する項。
アメリカで1200万台(全世帯の15%)も普及したアタリVCS。なかでも、この『伝説のクソゲー』こと『E.T.』はすごかった!

UH:はい。かの有名な……、と言いますか、悪名高き伝説のソフト『E.T.』を遊んでもらわないことには、この旅は終われないんですよ!

須田:なるほど、なるほど。”アタリショックの直接の引き金”とされ、売れ残ったカセットがネバダ州の砂漠のどこかに産業廃棄物として埋められているという噂のソフトですよね? いったい何がいけなかったんですか?

UH:それをこれから須田さんに実際に触れていただいて検証してもらうんですよ! さぁ! VCSのスイッチを入れてください。

須田:おお? なんかオープニングっぽいものがありますね。なかなかオシャレじゃないですか。ええと、ゲームシステムはどうなっているんですか?

UH:ええと、これはE.T.が科学者やFBIに捕まらないように逃げながら通信機の部品を回収するゲームです。歩いて逃げ回っていると、フィールドの上の穴に落ちます。その中に部品が落ちているので、それを拾ったらボタンを押してください。

須田:あ、落ちました。これが部品ですかね。あああ! ボタンを押すと首が伸びた!?

UH:首が伸びると上昇して穴から脱出できます。別のアイテムを集めると、今度はエリオット少年が助けに来てくれる。基本は穴に落ちて部品を回収。それをいくつか集めて通信機を完成させ、「E.T.,phone home」という案配です。

須田:なるほど、この種にしか見えない部品は、言うなれば”明日への種モミ”なんですね!

UH:そりゃ『北斗の拳』でしょ(笑)。

須田:操作してると、やたら穴に落ちるってのが、ゲームバランスとしてやんちゃですよね。謎が多いというか、まるで『たけしの挑戦状』のようですね。

UH:言うならば『スピルバーグの挑戦状』ですよ(笑)。実際に触れてみると、本当にVCSソフトは濫造されていたんだとわかりますよね。そう言えば、最近このソフトが本当に砂漠に埋められているのか、確かめに行くというドキュメンタリー映画が作られたらしいですよ。

須田:本当ですか? それはかなり興味ありますね〜。見てみたい。

UH:でも大手のプロダクションではなくゲーム好きの学生たちによる自主映画なので、真実に迫るというよりはノスタルジーを目的にした内容らしいんですよ。だから歴史的検証は期待できない。

E.T.』という超大ヒットが約束されたタイトルで、『たけしの挑戦状』とは……
いくら1982年に発売されたゲームとはいえ、たしかにこれはひどい……

ちなみに、この「砂漠に埋められた『E.T.』」の話、僕はよくある都市伝説だと思っていたのですが、「追記」を読んで驚きました。

 また、現地取材で明らかになったのは、『E.T.』がネバダ砂漠に埋められた話は都市伝説ではなく事実であり、マニアが掘り返しにくるので、さらに上から厳重にコンクリートで固めたという話(笑)。

事実なのかよ! そして、それを砂漠に掘り返しにくるマニアたち!!

また、アタリVCSの『パックマン』は、「1000万の顧客に対し、1200万のカートリッジを濫造」して、700万しか(!)売れず、のちの”アタリショック”を引き起こす要因のひとつになったと言われているのだとか。
ダイナミックというか、引き算もできないのか、というか……

あと、『SIREN』を作ったゲームデザイナー・外山圭一郎さんのこんな話も、いかにも「洋ゲー的」でした。

 僕が洋ゲーに惹かれる要因として、”異文化のもたらす驚き”、”高難度”、”作り手の想定外の笑い”という3要素が挙げられるのですが、そのどれもが極まった作品として『リターン・トゥ・ゾーク』が思い出深いです。「ブラジャーを焼く」だとか「ロープを伝って断崖絶壁を下り、お笑い道場を沸かせる」などの異常極まりないクリアー手順が忘れられません。珍妙な吹き替えもお気に入りで、「におうヨ〜ン」などいまだにマネするんですが、いっしょにプレイしていた嫁以外、誰もひろってくれません。

洋ゲー」に限らず、昔のアドベンチャーゲームって、こんな感じだったよなあ……

こういう「オールドゲームファンにはたまらない」エピソードが満載の本。
ここまで読んで「面白そう!」と思った紳士淑女のみなさまは、ぜひ御一読ください。
なんか久々に洋ゲーやりたくなっちゃったなあ。

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