琥珀色の戯言

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ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜 ☆☆☆☆☆


内容紹介
漫画史にきらめく不朽の名作「ブラック・ジャック」!!“漫画の神様”手塚治虫先生の創作の現場を関係者の証言で再現するマンガ・ノンフィクション!!

タイトルは『ブラック・ジャック創作秘話』なのですが、内容としては、『ブラック・ジャック』という作品について詳細に語るというよりは、数々の「手塚治虫伝説」をマンガ化したものです。
この本、これまで、『神様の伴走者』など、手塚先生の周囲の人々が書いたものやインタビューなどをけっこう読んでいた僕には、あまり目新しいエピソードはなかったんですよね。
むしろ、手塚先生を、やや「美化」しているようにすら思えました。


僕が『ブラック・ジャック誕生時のエピソードとしていちばん記憶にのこっているのは、

当時の手塚は少年誌的な作風から抜け出すことができず、漫画界で手塚は既に「過去の人」とみなされており、『ブラック・ジャック』は実質的に手塚最後の作品として企画されたものだった。社内でも反対の声は大きかったが、壁村は「先生の最後を看取ってやらないか」という台詞でまわりを説得したという。

というものでした(Wikipediaより)。
でも、この壁村編集長の話も、残念ながら採りあげられてはいません。
もっとも、壁村編集長自身は、このマンガのなかに何度も登場され、かなりの「活躍」もされてはいるのですけど。


そのほかにも、これまで僕が読んできた「手塚治虫についての、周囲の人々へのインタビュー」と比較すると、「手塚先生の負の面」は、かなり薄めて描かれているように思われます。


それでも、この作品は、やっぱり素晴らしいのです。
読み始めたときの僕の最初の印象は「こんなに評判が良いマンガなのに、絵はあんまり上手くないな……」でした。
僕はマンガの技術に詳しくはないのですが、少なくとも、「みんなが上手いと言う絵」ではないはず。

ところが、このマンガを読んでいると、何度も「絵の力って、すごいなあ」と感心させられます。
手塚先生の仕事ぶりを、元チーフマネージャーの福元さんは、

 当時入居していたビルは全館冷房で、深夜12時になるとストップするんです。
 手塚先生は汗だくで 鉢巻きをしめ
 貧乏ゆすりをしながら
 まるで 肉体労働者のように
 眼で原稿を喰らうように描いていました。

と話しておられたそうです。
僕も福元さんが書かれた本を読んだことがあり、こういう手塚先生の「執筆風景」を知っていたつもりだったのですが、どんなに頭で想像しても、このマンガで作画の吉本浩二さんが描かれている「手塚治虫の、けっしてカッコよくはないけれど、鬼気迫るようなマンガを描く姿」ほどの「説得力」は無いと思います。
上手くはないかもしれないけれど、「アツい絵」なんですよ、これは。
そして、このマンガの世界に、その絵が、すごくうまく嵌っているのです。


手塚治虫を、『ブラック・ジャック』を、そして、マンガを愛するすべての人に、ぜひ読んでみていただきたい作品です。
お金とか名誉のためだけに、こんなに仕事ができるものじゃないですよね。
手塚先生は、本当に「マンガを描くための生まれてきた人」だったのかもしれません。


参考リンク:神様の伴走者 手塚番13+2(琥珀色の戯言)

神様の伴走者 手塚番13+2

神様の伴走者 手塚番13+2

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