- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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内容紹介
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。
大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。
そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。
表題作ほか、前向きで軽妙洒脱、料理の描写でヨダレが出そうになる、読んでおいしい短編集。
2014年の『本屋大賞』にノミネートされていたこともあり、読んでみました。
率直に申し上げると、「ああ、ありがちな『スイーツ小説』だなあ」という感じです。
すごく読みやすいし、わかりやすい小説ではあるんですよね。
若い女性、非正規派遣労働、女の友情、そして、「食べもの」。
そんなに食べものだけで人生変わる話が読みたければ『美味しんぼ』で十分ではないか?などと思ってしまうのですが……
料理の描写も、そんなに「おいしそう!」とは感じなかったしなあ。
短篇4作が収録されており、共通の登場人物が登場するのですが、後半の2編に関しては「リンクしているというよりは、カメオ出演みたいなもの」ですし。
ただ、この本が激烈につまらないかというと、そうでもないんですよね。
「食べることは生きること……。一杯の温かい飲み物が人と人の心を繋ぐんですねえ」
ワゴンはまるで異国のおうな、深夜の銀座を突っ切っている。和光の時計台は午前三時を回ったところだ。助手席の三智子がうっとりしていると、アッコさんは鼻を鳴らした。
「『かたつむり食堂』や『食堂かもめ』みたいなほっこりしたこと言ってんじゃないわよ!」
「アッコさん、それを言うなら『食堂かたつむり』と『かもめ食堂』ですよお」
僕はあんまり「食」へのこだわりがないので、これらの作品もちょっと苦手なんですが(「現実ぶったファンタジーって、なんかあざとい感じがしてダメなんです。完全なファンタジーの世界だと、すんなり受け容れられるのですけど)、世の中には、これらの小説で「ちょっと元気をもらって、明日もがんばろうと思える人たち」がいるわけです。
そういう「栄養ドリンクみたいな小説」に「ありきたり」とか「スイーツ」なんて言葉を浴びせるのは、あんまりフェアじゃないのだろうな、と。
まあ、それこそ『食堂かたつむり』とか『かもめ食堂』が好きな人は、たぶん好きになれるのではないでしょうか。
ああいう系統の「食べもの+ちょっと良い話小説」が苦手な人には、向いてないと思います。