- 作者: 指原莉乃(HKT48)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/08/11
- メディア: 新書
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内容紹介
メインテーマ「指原莉乃が語る“逆転”の人生論」
様々な逆境に立たされながら、常に話題の中心にありつづけるアイドル・指原莉乃(HKT48)。
歌もダンスもルックスも、特に秀でていない彼女がなぜアイドルとして成功できたのか。
どんなピンチも力に変えて切り抜けていく、さしこ流“逆転力”の秘密を語る。
現代社会をへこたれず、したたかに生きるためのヒントを与えてくれる1冊です。
AKB48グループのファンはもちろん、サラリーマンやOL等にもビジネス書として
読んでもらえるような示唆に富んだ内容となっています!
HKT48・指原莉乃さんの「アイドル生存戦略」。
僕もアイドルが大好き、というわけではないのですが、指原さんというのは、なんだかずっと「気になる人」ではありました。
芸能人のなかでは(AKBグループのなかでも)、「見た目がすごくかわいい」というわけではないし、なにか「特別な技能」を持っているわけでもない。さらに、HKTに左遷される原因となった「スキャンダル歴」もあります。
にもかかわらず、なぜ、こんなに人気があるのか?
内心、「秋元康さんとか、運営に推されているからだろ……」とずっと思っていたんですよ。
でも、いつの間にか、「ああ、なんだかすごく座持ちがする人だよな、指原さんって」と思えてきたのです。
その場の空気を読むのが抜群にうまい、そして、自分の役割をキッチリとこなしている。
この新書は、おそらくインタビュアーによる聞き書きだと思うのですが、そんな指原さんが、自分の「生存戦略」について語ったものです。
「負けること」は、けっしてマイナス面ばかりじゃない、むしろ、「負けることで、次につながる」場合もあるのです。
僕はいままで、指原さんの「テレビに出演している姿以外」をほとんど知らなかったのですが、この新書の中で語られている、「AKBに入るまで」のエピソードに、けっこう驚いてしまいました。
小学校時代、『ASAYAN』でアイドルにハマってしまった指原さんは、その後も、ずっと「女性アイドルマニア」を続けていたそうです。
同世代の女子たちが、男性アイドルに鞍替えしていくなかで。
私の中にある「好き」の気持ちを加速させてくれたのは、ネットです。
家にパソコンがやって来たのは、私が小学校2年生の時でした。世界が変わるってこういうことなんだなと思いましたね。日常生活では絶対手に入らないようなモー娘。情報が、ネットにはたくさん転がっていたんです。
動画を見たり写真を見たり、ファンの人が書いているブログやテキストサイトを読んだり。私は文章を書くのが好きだし得意だと思っているんですが、この頃にネットでいろんな文章を読んでいたおかげです。文章で人を楽しませるための”ノリ”と、ネットで勉強させてもらったんです。
2ちゃんねるを見るようになったのは、小5でした。テキストサイトのリンクを辿っていくうちに、ついにディープな世界に行き着いたんだと思います。
今さらっと言いましたけど、2ちゃんねる見てます。今も。私の人格形成に大きな影響を及ぼしてます。間違いなく。
当時出入りしていたのは、「モーニング娘、(狼)」板。最初は私も、読むだけだったんですよ。途中から、自分でコテハン(固定ハンドルネーム)を作って書き込むようになりました。今考えると相当やばい人ですよね。そんな小学5年の女子、私の他にいなかったです。当たり前ですけど。
「ブログの女王」こと眞鍋かをりさんも、高校時代に個人サイトをやっていて、「ネットに強い」ことで有名だったのですが、その眞鍋さんでも、「2ちゃんねる」をはじめとするネットでの自分への評価に対して、「見たら負け」と仰っています。
しかし、指原さんは「ネットでアイドルを語るひと」からスタートして、いまや、日本のトップアイドルになってしまったわけです。
鳥になってしまったバードウォッチャー!
いまの若者にとっては、「物心ついたときから、ネットがあるのが当たり前なんだなあ」と、30歳くらいからネットにハマりはじめたオッサンとしては、感慨深いものがあります。
それと同時に、指原さんの「自己プロデュース力」「自分自身を突き放して俯瞰し、状況にあった振る舞いができる能力」「バッシングへの耐性」は、こういう「アイドルオタクとしての、自分自身の経験」から培われてきたんでしょうね。
自分を客観視する能力が、ものすごく高い。
「ネットアイドル経由」で芸能人になっても、「自分が見られる、語られる立場になると、やっぱり別」という人も多いので、指原さんは「そのなかでも特別」ではあります。
アイドルになった今、コンサートのグッズ売り場の列に並んでいる、小さい女の子とお母さんの様子を見ると、懐かしいなって気持ちになります。ファンの女の子から手紙をもらったりするのも、昔自分がやっていたことだから、この子は今、昔の私と同じ感覚なのかな、だったらすごくうれしいなって。
だから私は、一度出ますと告知した公演を休むのは絶対にイヤだし、コンサートには何があっても絶対に出ます。自分がもし現場に来ているファンだったら、一番応援している子が体調不良で休んだら、心配にもなるけど、せっかく来たのに残念だなって思うから。
現場に来てくれたひとりひとりがそれぞれ、お金を出して来ている、会社を休んで来ている、学校を休んで来ている、部活を休んで来ている。アイドルオタクだった昔の私がそうだったから、そのことがよく分かるんです。分かるからこそ、私は自分の「現場」で頑張ろうと思えるんですよ。
あの「HKT移籍事件」のときのことを、指原さんは、こんなふうに振り返っています。
秋元さんからは「貢献しなさい」と言われました。私は、48グループのルールを破ってしまった。その人間が何をしたら、48グループのファンのみなさんは許してくれるかと考えた時に、グループ全体のために貢献することだろう、と。活動が始まったばかりのHKT48に移籍して、盛り上げて、そうすることで48グループ全体を盛り上げていくことが、一番の「貢献」になる。
「4位になってこのまま1年間普通に過ごしても、これ以上指原の人気が盛り上がることはない。HKT48に移籍して頑張る、これ以上面白いことってないと思うよ」
もしかしたら今の私の状況は、ピンチじゃなくて、チャンスなのかもしれない。というか、今はチャンスなんだって、そう思うしかない。
結果的には、指原さんは、あのスキャンダルでの「左遷」を乗り越えて、さらにブレイクしていったのです。
あの挫折というドラマがなかったら、一過性の人気で終わっていたかもしれません。
ちなみに、指原さんは、さすがにあの騒動のときだけは「ネットでの反応は絶対に見ないことを決意して、実際にそうした」そうです。
このあたりの状況判断能力が、すごいんだよなあ。
やっぱり気になって、見てしまいそうじゃないですか。
この新書のなかでは、指原さんの「ちょっとズルい処世術」の数々も語られています。
立場が自分より上の人とのコミュニケーションの仕方について、私なりに見つけたコツをお話します。
HKT48の劇場支配人になったこともあり、偉いおじさんたちと話す機会が多くなりました。バラエティの現場にも、偉いおじさんたちがいっぱいいます。
おじさんとしゃべるのは得意だと思います。接し方としては、すっごい立場が上の人には友達感覚で話して、ちょっと偉い人には下から行く。
例えば、私は『笑っていいとも!』で2年半タモリさんとご一緒させていただいたんですが、収録後は普通に一緒にご飯を食べていたし、私に対して普通に話してくれるんです。
偉すぎる人って、心が広いんです。
秋元さんとかもそうなんです。私みたいな人間が普通に話しかけても、ぜんぜん大丈夫なんです。あんまり尊敬モードで緊張しちゃうよりも、友達モードでいくほうが、むしろおもしろがってもらえる。
でも、中途半端に偉い人って、ちょっとの無礼がムカつくんです。ちょっとの無礼に敏感なんですよ。だからなるべく低姿勢でいく。ここを間違ったらまずいです。
おじさんとしゃべるのが得意なのはたぶん、昔からハロプロのファンのおじさん達と、コンサート会場でよくしゃべっていたからだと思います。
ああ、指原さんは、偉い人にかわいがられるタイプだよなあ、と。
そして、それをある程、相手をみて、意識してやっているのか……
そして、指原さんのこんな「苦手」に、僕は共感してしまいました。
私は先輩に対しては、弱いです。後輩に対しては、優しくなれます。
年上の人には”下から”で行けば間違いないし、年下に対しては多少”上から”でもOKですよね。
そう考えると、私にとって一番コミュニケーションを取るのが難しいのは、同い年かもしれない。どう振る舞えば正解なのか、基準がなさすぎる。
これって、よくわかるんですよ。
僕は他者と「距離が近すぎる」で、ある程度お互いの「役割」みたいなものが決まっているほうが、付き合いやすいのです。
でも、同級生って、たしかに「基準がなさすぎる」のだよなあ。
「同級生じゃないか!」って馴れ馴れしくするのもイヤだし、だからといって、それなりに親しげにしないと、不自然な気もするし……
そういう意味では、指原さんには、若い頃から周囲に大人がいて、先輩後輩がしっかりきまっている世界、芸能界での仕事が、合っていたのかもしれませんよね。
こういう、「苦手の見せかた」も上手いんだよなあ、と、感心しつつ。
ひと晩ぐっすり寝て起きた次の日には、「2連覇しなくて良かった!」と思っていました。ハードルが上がり過ぎて、「絶対王者」みたいに思われるのも大変ですから。のちのちのことを考えれば、挫折があるほうがストーリーは面白くなると思うんですよ。人の人生を見ていてもそう思うんです。全部が全部順調な人って、応援したくなくなってしまう。挫折がないからストーリーに起伏がないし、心配もないから、応援しなくても大丈夫だと思ってしまう。
だから、挫折できてラッキー。
弱音を吐けるチャンスをもらえて、ラッキー。
「普通はもうちょっと悔しがるもんじゃない?」
そう言われるのが一番困ります。だって、開票イベントが終わって家に帰って寝るまで、6時間も悔しかったんですから。6時間”も”です!
参考になる、かどうかはさておき、指原莉乃って、面白い人だなあ、と思いながら読みましたし、なんだか元気が出てくる本なんですよ、これ。
僕みたいに、指原さんのことが「ちょっと気になっている」人には、オススメです。