琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

【読書感想】面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた →そしたら人生観変わった ☆☆☆


KIndle版もあります。

内容紹介
「遊びが仕事になる時代」に、なぜマンガ(最強メディア)を読まないの?


「遊びが仕事になる時代」なのに、
どうしてマンガ(最強メディア)を読まないの?


本書では、稀代のマンガ・キュレーター堀江貴文が、
「人生観を変えるほど面白いマンガ」の
オールタイム・ベストを厳選して紹介。
仕事のセンス、想像力と観察力、情報、
天才たちの人生、業界の真実……
マンガは人生を面白くする最高のツールだ!


最注目マンガ編集者・佐渡島庸平氏との対談も収録。


 僕は子供の頃、『週刊少年ジャンプ』を定期的に読み、『キン肉マン』や『コブラ』を愛読してはいましたが、そんなに熱心なマンガ読者ではありませんでした。
 その最大の理由は、本を長く読んでいたいけれど、マンガはすぐに読み終わってしまうから、だったんですよね。
 いまから35年前には、学校の図書館に置いてあるマンガって『漫画日本の歴史』と『はだしのゲン』くらいだったし。
 今は、漫画喫茶やインターネットカフェなど、好きなだけ漫画を読める施設もできましたし、レンタルマンガもあります。書店に行かなくても、Kindleで気になるマンガの続きを読むことができる。
 僕自身も、子供の頃に比べれば、本にお金を使えるようになりました。
 そうすると、マンガっていうのは、本当に面白いし、「絵」というのは、1ページ情報量が活字よりも圧倒的に多いということもわかってきました。
 昔は、絵にあまりこだわりがなくて、セリフだけを読んで、ストーリーを追っていたのだよなあ。


 この本は、堀江貴文さんが、「マンガキュレーター」として、これまで読んできたたくさんのマンガの中から、オススメの「人生観を変えるほど面白いマンガ」を紹介したものです。
 今回の堀江さんのチョイスでは、古典的な少年マンガや、少女マンガについてはあまり採りあげられておらず、青年マンガ中心のものとなっています。
 ネットにも「オススメのマンガ○○選」というのはたくさんありますし、それを参考にしている人も多いはず。
 この本に関しては、選ばれているマンガそのものは、そんなに珍しくはないし、マニアにとっては物足りないところもあると思います。
 どちらかというと、面白いマンガを探しているというよりは、「堀江貴文さんが、どんなマンガを選ぶのか」に興味がある人向けの本です。


 あと、堀江さんの人脈などを通じて知った、そのマンガの裏話が紹介されているのも魅力です。

 界隈では有名な話であり、佐渡島(庸平)さんもイベントなどで話していることだが、宇宙航空研究開発機構[
JAXA」との密接な協力関係でつくられたと思われているふしがある『宇宙兄弟』は、もともと作者・小山宙哉さんの想像から生まれたマンガだった。


宇宙兄弟』は南波六太と南波日々人という宇宙飛行士の兄弟の物語だ。宇宙飛行士の弟・日々人を持つ兄・六太は、脱サラし、弟との幼少時代の約束を果たすべく宇宙飛行士を目指す。『宇宙兄弟』で初めて宇宙飛行士の選抜試験について知った人も多いにちがいない。国際宇宙ステーションの特殊環境を再現した閉鎖環境施設で行われた試験で受験者たちが繰り広げる奥深い人間ドラマの数々に、誰もが引き込まれたことだろう。登場人物の行動を見ながら、「自分だったらどうするだろう?」と考えてしまう。
 作中で描かれる「宇宙飛行士候補者選抜試験」は、JAXAが実際に行っているものと同様であり、正確に描写されている。しかしこれらはJAXAの職員が手取り足取り小山さんに教えたものではない。
 小山さんは宇宙飛行士について書かれた本を片っ端から読み漁り、「自分がJAXAの職員だったらどうやって試験するだろう?」と考え抜いたどうだ。小山さんは宇宙飛行士にとって重要な能力を見極めるために、想像の中でJAXAの職員になりきったのだ。そうして自分で選抜試験を考え、描いたところ、実際の宇宙飛行士候補者選抜試験に肉迫するリアリティを持った試験問題になったのだという。
 JAXAを取材したNHKのドキュメンタリーが放送されたり、新書『ドキュメント宇宙飛行士選抜試験』が出版されて、実際の宇宙飛行士候補者選抜試験の内容が明らかになってから『宇宙兄弟』が生まれたと思っていた人もいるかもしれあい。しかし、実際には逆だ。
 作家の想像力が、誰にも知られることがなかった現実を描いたのだ。


 僕もあの選抜試験の場面は、NHKのドキュメンタリーなどで紹介されたものを参考にして描かれたものだと思い込んでいました。
 というか、作者が自分で考えたなんて、想像したこともありませんでした。
 選抜試験だって、人間が考えたものですから、適切な方法を突き詰めていけば、同じような答えに行き着くのかもしれませんが、それにしてもすごいな……

 刑務所モノといえば、私をおいて他にもっと語れる者はいないと断言できよう(笑)。そして刑務所内ではかなり医師にはお世話になったほうである。そんな私から見ても、非常によく描かれた刑務所担当の医師の物語だ。
 作者はマンガ界で波紋を起こしまくってる佐藤秀峰氏の元嫁といったほうが通りがいいかもしれない佐藤智美。作品の名前はその名も『ムショ医』。


 たしかに、堀江さんほどこの作品のリアルさを語れる人は、あまりいないかもしれません。
 この本を読んでいると、マンガで描かれる職業の世界って、どんどんニッチというか、「こんなことまで題材になっているのか」とあらためて驚かされます。
 食べ物マンガも、『ダンジョン飯』まで行き着いてしまっているし。


 堀江さんは『栄光なき天才たち』を強く薦めておられます。僕もこのマンガ大好きです。
 そのなかで、世界初のロケットを開発したヴェルナー・フォン・ブラウンのことについて、堀江さんはこう仰っています。

 ナチスに魂を売りながらも月や火星、そして他の惑星系まで到達するロケットを構想し、巧妙に自分の意図を隠しながら軍事予算を獲得する。ナチスが危ういと判断したら速攻で亡命を画策しアメリカに渡り、やはり素晴らしい才能でNASAの中枢へと上り詰める。元ナチスの高官だった彼がアメリカの市民権を得たのは、彼の余りある才能によるところが大きい。
 そして遂に彼の長年の夢だった月世界旅行アポロ11号で実現する。本当は彼自身が「人類にとっての大きな一歩」を踏みしめたかったのだと思うのだ。残念なことに彼が癌で若くして亡くなってしまったが、もし長寿を全うすることができていたら、人類は既に火星に行っていると確信する。それくらい彼の夢に向けての実行力は飛び抜けていた。彼のような才能が再び人類を引っ張っていくことを期待する。


 ああ、堀江さんらしいなあ、と思うのと同時に、僕はフォン・ブラウンのような「ものすごく有能だけれど、自分の目的のためなら手段を選ばない人」というのは、「無能な人」よりも危険な存在であり、こういう人には人類を引っ張ってもらいたくない、と考えてしまうのですよね。


 巻末の対談で、作家エージェント「コルク」の代表・佐渡島庸平さんが、こんな話をされています。

佐渡島マンガの現実はすでに大きく変わってきつつあります。今はツイッターを使って、「note」のようなブログでマンガを発表していれば、3ヵ月後には仕事が来はじめる可能性もある。それこそ高校生たちには最高の状況ですよ。次に面白いものを描けるまで2〜3年間も足止めを食らう可能性もある出版社の新人賞よりも、早くプロになれるかもしれない。
 インターネットをうまく使えば10万〜20万程度であれば、もちろん本気でやる必要はあるけど、高校生・大学生でも稼ぐことは夢じゃない。そうした成功体験があれば「ああ、このままマンガ家目指そうかな」とか「小説家目指そうかな」と思ってくれる人も増えて、結果的にシーンが盛り上がっていくと思うんですよ。


 多くの人気作品を手掛け、ロングヒットも生んでいる佐渡島さんがこう仰っているのだから、「そういう時代になってきている」のだろうけど、僕はこれを読んで、 そういうネット経由で注目され、短い下積みでプロになった人って、消耗が早いというか、すぐに「描き尽くして」貯金がなくなってしまうのではないか、という気もするんですよね。
 シーンは盛り上がるけれど、作家は使い捨てられていく。
 実際は、そんな下積みに大きな意味などなくて、人気作家を続けていくためには、みんなどんどん新しいものを吸収しながら書き続けているのかもしれませんが。


 面白いマンガを読みたい、というより、「堀江貴文さんは、どんなマンガを面白いと思っているのか知りたい」という人にオススメです。


宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス)

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ムショ医1

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