
- 作者: 水道橋博士
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内容紹介
芸能界に潜入したスパイ、水道橋博士の極秘レポート!
週刊文春の連載「週刊藝人春秋」に大幅加筆。橋下徹からタモリまで芸能界の怪人奇人を濃厚に描くノンフィクション。
前作、『藝人春秋』が滅法面白かったので、今回の『2』にもかなり期待していました。
どうしても、第2弾となると、最初のものよりはインパクトも楽しさも減ってしまいがちなのですが、この『2』は、質・量ともに大満足の1冊(というか2冊)で、上下巻あわせて700ページもあるのに、ほぼ一日で読んでしまいました。
前作の感想の冒頭で、僕はこんなことを書きました。
以前、「と学会」の本で、会員になった占い師に対する「バードウォッチングの会に入ってきた鳥」だというたとえがあったのを記憶しているのですが、水道橋博士は、その逆で、「バードウォッチングに夢中になりすぎて、鳥になってしまったバードウォッチャー」のように僕には感じられます。
本質的には「観察者」なんじゃないかな、と。
こうして「芸能界に潜入したスパイ」であることが周知されてしまった水道橋博士は、正直、情報収集活動がやりやすくなったところと、対象者の本当の「内面」に入り込みにくくなったところもあったのではないか、と思われるのです。
ジャーナリストには、自分にとって都合の良い情報を流してもらいたい人も、接近してくるでしょうし。
この本を読んでいると、芸能界という世界での、人と人との不思議な縁というか、「こんなところで、あの人と繋がるのか!」と驚かされるのです。
タモリさんの免許証をめぐるエピソードや、ビートたけしさんが乗っていたという、一時は3億円したポルシェ959の現在の持ち主など、読みながら、「そんなこともあるのだなあ」「世の中には、僕の知らない『天上界』みたいなのがあるのか」などと、半ば呆れてしまいます。
今から24年前、たけし軍団に「秋山見学者」という、ボクと同じ歳の芸人がいた。
彼は弟子入り後、長くビートたけしの運転手を務めていた。
やがて同期のボクらが漫才師として名が売れ出した頃、ピン芸人だった秋山は焦り、仲が良かったボクに相談を持ちかけた。
「僕はどうすれば売れるんだろう?」
「秋山は『見学者』なんだからさ、殿の行動を全部メモしたら? 今、日本一の売れっ子である殿の日常を事細かく書けば、絶対それは本になるって」
「僕には無理だよ。文才がないから。俺はメモを残すから博士が書いてよ!」
それから1年近く経ったある日——。
「あの話なんだけど……。結局、出版社が見つけてくれた他のライターが代わりに書いてくれたよ。博士、試しにこれ読んでみて!」
手渡された原稿を預かって一気に読んだ。
翌日、ボクは秋山にこう語った。
「秋山! これはオレの出る幕じゃないよ。めちゃくちゃ上手い! この人の文章は文句なくすごいよ! 絶対売れる!」
ゴーストライターの名前は田村章だった。
その本は1991年に太田出版から『たけしー・ドライバー』というタイトルで上梓され、重版を重ねるヒット作となった。
そして、秋山は1995年に芸人を廃業し、田村章は2001年に本名の重松清で直木賞を受賞する。
『たけしー・ドライバー』という一冊の本の同乗者に、それぞれの岐路がある。
そりゃ上手いよ、相手が悪すぎだよ!と読みながら呟いてしまいました。
重松清さんが「伝説のゴーストライター」だというのは耳にしたことがあるのですが、水道橋博士とこんな縁があったとは。
ビートたけしさんに関するエピソードには圧倒されるものばかりです。
「セリフを覚えられないから、スカーレット・ヨハンソンにカンペを持たせた」なんていうのがサラッと書いてあるのを読むだけで、口元が緩んでしまいます。
ヨハンソンさん、どんな顔でカンペを持っていたのだろう?
そんなたけしさんが、息子さんに対しては、身内だけにかえって距離がつかめなくて、困惑している姿をみせていた、というのもすごく印象深かったのです。
ずっと仕事漬けで忙しく、家庭を顧みることも少なかったであろうたけしさんと、その子どもとして、たぶん、良いことばかりではなかった息子さん。
ビートたけしは、まさに「超人」だけれど、それでも、子どもの前では、ひとりの父親でもあるのです。
そして、自分は必ずしも「良い父親」ではないのだろう、と考えてもいる。
なんだか、読んでいて、すごくしんみりしてしまう親子の関係だったのですよね。
もちろん、破天荒な芸人たちの伝説も収録されています。
武井荘さんと寺門ジモンさんの直接対決は読み応え十分です。
最後に行われた観客との質疑応答タイムにも見せ場があった。
「災害が起きた時の危険回避法は?」という質問に対して、「それは簡単!」とジモンが即答。
「それには普段からの人脈作りが大事なんだよ! まず天変地異の兆候は、築地に知り合いを作っておくのが一番早いから。そこから魚の水揚げ量の変化を常日頃聞いておくこと!」
いきなり普通の人にはハードルが高い。
「あと、自衛隊幹部と知り合いになれば、非常時に事前情報が得られるはずだよ!」
と、ご家庭では簡単に真似できない対処法を客席に投げ返した。
しかし、ここでもスマイリーキクチが割って入る。
「ちょっと説明を加えますが、それウソじゃないんです。本当にジモンさんが日頃からやっていることなんですよ」
なんでも、スマイリーが自衛隊官舎近くに住んでいた頃、ジモンから「毎朝、官舎の様子を見てこい!」と頻繁に偵察指令が下されたらしく、その面倒さに大迷惑していたと事実を裏付ける証言がなされた。
すると「それが何か?」とでも言いたげな表情でジモンが平然と続ける。
「いいかい? じゃあ今日はライブだからもっと良い方法を教えてあげようか? 日本国の最高権力者である総理大臣が官邸にいるか、首都圏を離れたか、総理の居場所を把握して非常時を判断するの! ホントだよ。だから俺は、番組で知り合った小泉総理の息子の小泉孝太郎くんに電話番号を聞き出して、その後、さりげなく彼に電話して、世間話のフリをしながら、毎日、父親の行動を確認するの!」
百獣の王たるものライオン総理の動静を知るべし、というわけか……。
衝撃的かつ全く無意味な、最高権力者へのストーカー行為を告白して、この日は散会となった。
これ、ヤバい人だよ……
こんな話を聞くと、いろいろ批判もされるけれど、一国の総理大臣っていうのは大変だな……と思うのです。こういう人は、ジモンさんだけじゃないでしょうし。
小泉孝太郎さんも、自分の親のこととはいえ、大変だよね……ちゃんと教えていたのだろうか。
この『藝人春秋』、芸能界の面白おかしいエピソードを採りあげただけの本ではなくて、これまでオフレコにされていたことを明らかにしたり、みんながなんとなく信じていた「通説」を、博士自身が取材をしたり、資料にあたったりして検証しているんですよね。
水道橋博士自身のコメンテーター降板事件や、やしきたかじんさんの『殉愛』騒動の背景にあったもの、石原慎太郎さんと三浦雄一郎さんの間に起こった「ある事件」について、三浦さん本人に直接確認した話は、本当にすごかった。
その件に関する事実だけではなくて、人というものの「思い込み」や「誤解」「真実が失われている過程」について、考えさせられました。
本人に対して、ど真ん中に直球を投げれば、ちゃんと受け止めてくれるのに、みんな「忖度」して、あたってみることもしないまま、わかったようにふるまっていたのだよなあ。
こういう「徹底したジャーナリズム精神」が、水道橋博士の凄さなのだけれど、うまく手が抜けないキツさもあったはずです。
江口寿史先生の挿絵もすごかった。
藤圭子さん、しばらく目が離せませんでした。
水道橋博士は、32歳のとき、「芸人として実績もないまま、評論家のように『芸』について文章を書く」ことに疑問を持っていて、それを立川談志さんに相談したことがあったそうです。
「ワタシがねー、『現代落語論』を書いたのは20代ですからねー」
そう言うと、数秒、間を置いて頭上を見上げた。
そして、自らが問いかけ自らが答える、いつもの談志口調でこう言った。
「ンーー、芸人が話すだけでなく本を書く……。それは全部、言い訳なんです。芸人は己の芸だけでは気が済まない。言い訳したいんだ。言い訳したいから話すんだ。話すだけでは収まらないから記すんですなー。そんなことは、全部自分が欲するからやってんだ。自分が好きでやってることなのに、なんで人の評判を気にかける? 他人は関係ない。自分のことは自分で認めてやればいいんだ。芸人なんてえのは、自分の好みになるのが一番いいんです!」
その瞬間、長くまとわりついていた心の澱が流れ、「芸人が書く」ということに対する躊躇いが自分の中でハッキリと吹っ切れるのを感じた。
「ワタシがねー、いつも言うんですけどね、芸には完成はない。その芸人のプロセスが芸である。だからブレようが、昔と言っていることが違おうが、その変化もしれはそれでイイんです。書くことだって同じでしょう。同じテーマを与えられても全く同じことを何度も書かないでしょう」
ボクは沈黙しながらも、心の中で深く頷いていた。
芸能人や芸人、政治家など「別世界にいる人」の真似できないような武勇伝を面白おかしく書いたもの、のはずなのだけれど、僕は落ち込んでいるときにこの本を読んで、なんだか元気が出てきたんですよ。
ああ、いろんなしがらみとか面倒くさいことがあるけれど、人間って、「自由に生きる」こともできるんだな、って。
「自由に生きる」「自分らしく生きる」って言いながら、実際にやっていることは出会い系サイトや投資や仮想通貨の宣伝で、セミナーにファンを集めて、「私みたいになりたいでしょ」とお金を貢がせる人がいる。そんなニセモノの「自由主義者」に引きずられる前に、この本を読んでみてほしい。
芸能界には、いろんな変わった人がいるし、独特のルールもあるけれど、「社会」のなかでは生きづらそうな人たちが、自分の人生や命を担保にしながら、「自由」に生きている。
自由には責任が伴う。
でも、逆に考えれば、責任をとる覚悟があれば、人は案外、自由になれる。
寺沢武一さんのマンガ『コブラ』に、僕が大好きなセリフがあるんです。
この本を読みながら、何度もこれが頭に浮かんできました。
「死ぬのは、たった一度だぜ」
fujipon.hatenadiary.com
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