残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方 (光文社新書)
- 作者: 本間浩輔
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/07/18
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
残業の9割はいらない?ヤフーが実践する幸せな働き方? (光文社新書)
- 作者: 本間浩輔
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/07/27
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
働き方改革は、けっして楽なものではない。働き方改革は、残業代を削減するためだけのものでもない。働き方を変えることは、あなたの未来をより良く変えること。アウトカム(成果)のために、モチベーションを維持し、効率よく働く。そして、「人生100年時代」をサバイブするために、よく学び、何より幸せに生きるための選択をし続けよう―。ヤフー常務執行役員として、数々の人事施策を提唱してきた著者の、「企業が勝つため」「社員が幸せになるため」の希望に満ちた働き方改革論。
残業のない、成果主義の「幸せな働き方」か……
まあなんというか「絵に描いた餅」みたいなもので、偉い人がそういう働き方を著書やブログでアピールしている一方で、社員たちは会社に雑魚寝してクレーム対応や開発の追い込み、みたいな話が多いからなあ、と思いながら読みました。
率直に言うと、「こういう働き方というのは、ごく一部のハイスペックな人には幸せだろうけど、そうでない「ごくふつうの能力の労働者たち」にとっては、かえってキツイんじゃないかな、とも感じたのです。
GoogleとかAppleとかFacebookみたいな「超優秀な人材が集まるIT企業」だからこそ、こういう働き方を進められる、というのも事実ではないでしょうか。
日本でいえば、ヤフーも「IT業界の雄」ですし。
著者は、若いころからベンチャー企業を起業してきた人ではなくて、大学のスポーツ科学専攻から野村総研に入り、そこから「スポーツナビ」のスタートに参加したものの、経営がうまくいかずに会社を畳むことになり、その「スポーツナビ」がヤフーに買収されたことから、結果的にヤフーに転籍することになったそうです。
けっして順風満帆ではなくて、「負け組」の人事担当者として、解雇や減俸を提示したスポーツナビの社員たちに罵声を浴びせられるという苦い経験もされています。
そういう経験が、著者に「幸せな働き方とは何か?」を追い求めさせるきっかけにもなっているのです。
2016年9月25日、日本経済新聞の朝刊に「ヤフー、週休3日制検討 全従業員対象」という見出しで、次のような記事が掲載されました。
ヤフーは、約5800人の全従業員を対象に週休3日制の導入を検討していることを明らかにした。働き方の多様化を進めることが目的で数年来の実現を目指す。
この制度は、ヤフーでは「えらべる勤務制度」と名づけられ、翌2017年の4月に導入されました。当面は、子育てや介護などの事情を抱えた正社員や契約社員が対象で、土曜・日曜以外にもう一日休暇を取得し、週休三日で働くことが可能となっており、記事の通り、いずれは全従業員が週休三日で働けるにすることを目指しています。
このように週休完全三日を念頭に置くと、いろいろと検討しておかなくてはいけないことが出てきます。
そして、私はここに働き方改革の本質があると思っています。
以前、私が、他社で管理職を務める知り合いに、この「えらべる勤務制度」について話したところ、感覚の鋭い彼は即座に、「ああ、ヤフーの社員たちはこれから大変になりますね」と感想を述べてくれました。
たしかにその通りで、週休三日はけっして社員に甘いだけの制度ではありません。
なぜなら、この制度の裏側には、「成果主義の徹底」というコンセプトがあるからです。「時間にとらわれずに自由な働き方をしてください。だけど会社はあなたの成果をもとに評価しますよ」というのは、ヤフーの進めようとしている働き方改革にほかなりません。会社は社員に対して、拘束時間の対価としてではなく、成果の対価としてお金を払う。そういう考え方に立っていると言ってもいいでしょう。
対人サービス業のように「とりあえず、営業時間内はその場に誰かいなければならない」という仕事でなければ、「ダラダラと職場にいて、終業間際になってからとりかかり、残業手当をゲットする」というような働き方は、経営側にとっても望ましくないはずです。
でも、「定時に帰ると、ヒマだと思われて、さらに仕事を押し付けられる」というような面もあって、なかなか帰れない(帰ろうとしない)人も多いんですよね。
この本のなかでも、インド出身の優秀なエンジニアが、著者に対して、「なぜこの会社では夕方6時に仕事を終えて帰る人よりも、仕事が遅くて夜中まで会社にいる人のほうがたくさんお金をもらえるのか?」と問いかけてきた話が紹介されているのです。
放置していれば、優秀な人から他所に転職してしまう、という状況になるかもしれないと、著者は危惧しているのです。
それは確かにそうですよね。本来は、同じ仕事を短時間でやったほうが良いはずなのに。
2016年の9月から、ヤフーでは、通勤に2時間以上かかる従業員を対象に、新幹線代を含む通勤交通費を負担しているそうです。東北新幹線なら福島、上越新幹線なら越後湯沢、東海道新幹線なら静岡くらいまでが通勤圏になるのだとか。九州在住の僕の感覚としては、毎日静岡と東京を往復するなんて、ちょっとした旅行みたいなものではないか、と思いますし、通勤時間を減らすために職場と住居は近いほうがいい、というアドバイスを耳にすることも多いのですが、著者は「地方に住むメリット」も考えています。
もともと右記(新幹線通勤可能)の圏内に住んでいる人であれば、わざわざ東京に移り住んで、毎朝、満員電車に閉じ込められて会社に通うよりも、地元から新幹線でゆったり通う方がストレスにならないでしょう。また、新幹線の車内は本や資料を読んだり、じっくりものを考えたりするのにも向いているように思います。
そういう通勤スタイルの社員が増え、仕事でパフォーマンスを発揮してくれれば、この制度は「企業として勝つため」という改革の目的に沿ったものとなります。
また、新幹線で通勤することで地域のコミュニティに根差した生活を送ることができる社員が増えれば、そのことも「企業として勝つため」の競争力の源泉にもなりえます。
ヤフーが掲げるミッションは「課題解決エンジン」です。そして、課題は各地にさまざまな形で存在しています。その課題をITによって解決する方法を各地のヤフー社員が考え出せれば、ヤフーは地域に貢献できる企業になれるし、そのことが企業としての競争優位性にもつながるはずです。
(中略)
人事の責任者である私がこのようなことを言うと、「企業はそんなことを考えずに、社員の給料を上げるべきだ」と感じる人もいるかもしれません。それはその通りで、企業は貢献度に応じた給料を社員にしっかり払うべきです。
けれども、「社員が幸せになるため」に、生活費をセーブできる働き方の選択肢を提示することも、私はこれからの企業には必要なことだと思うのです。今後、この国では消費税も社会保障費も必ず上がります。そうした中で、仮に月に1万円昇給したとしても、そこから税金や社会保障費が引かれて手取りが6000円しかアップしないのであれば、生活費を1万円下げることが可能になる施策を考えることも大切なのではないか、というのが私たちの考え方です。
新幹線通勤は、都会で働きつつ、プライベートでは田舎暮らしを楽しむというライフスタイルの実現にもつながります。
これからの人口が減っていく日本という国や、社員のプライベートの充実を考えると、給料がどんどん上がっていくことを期待するよりも、生活費を抑えられる環境を整えることを考えたほうが、結果的に使えるお金を増やしたり、生き方の選択肢を増やすことにつながるというのは僕にも理解できます。
田舎暮らしが楽しいかどうかは、人それぞれなのだとしても。
著者はこれからの労働環境について、こんな予測をしています。
さて、ここまで30年後の日本社会について想像を交えつつ述べてきましたが、やがて迎える将来においては、もう一つ見落としてはいけない変化が起こると私は考えています。
それは、働く人の所得格差が広がるということです。
働き方改革が私の考えているような形で進めば、人々は個人契約に近い形で企業に属するようになります。雇用条件はその人の労働市場における価値によって決まり、報酬は成果に応じて支払われます。そうすると所得に差が出てくるのは、ある程度仕方のないことで、私たちは自由で多様な働き方を享受する代わりに、そういう厳しい現実も受け入れなくてはなりません。
この本には、そういう「厳しい現実を受け入れていく覚悟と能力がある人が、どう生きていくべきか」が書かれているんですよね。
今後も格差はどんどん広がっていって、一部の超有能な人がほとんどの利益を手に入れ、残りの人たちは、ロボットやAIがやるにはコストがかかりすぎる仕事を安い賃金で請け負うことになるのです。
果たしてこれは「幸せな未来」なのかどうか……好むと好まざるとにかかわらず、そうなっていくのが既定路線なのでしょうけど。
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