琥珀色の戯言

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【映画感想】劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト) ☆☆☆☆

北条司の大ヒットコミックをアニメ化した「シティーハンター」の劇場版。

新宿を拠点にさまざまな依頼を解決する凄腕の始末屋「シティーハンター」の冴羽リョウとパートナーの槇村香のもとに、動画制作者の女性アンジーから、逃げた猫を捜して欲しいとの依頼が入る。一方、警視庁の野上冴子は海坊主と美樹の力を借り、バイオ企業ゾルティック社の発明について捜査に乗り出す。その発明は戦場の兵士を超人化する恐ろしいもので、かつてリョウをむしばみ、パートナーの槇村秀幸を死に追いやった「エンジェルダスト」の最新型だった。


cityhunter-movie.com


2023年映画館での鑑賞15作目。 平日の夕方からの上映で、観客は5人くらいでした。
劇場版の前作、『新宿プライベート・アイズ』が公開されたのは、2019年の2月で、もう4年以上前になるんですね。
僕は配信されているのを観て、「これでいいんだよなあ」と納得した記憶があります。
「超大作」ではないし、オリジナルTVアニメ版の声優たちが続演していて、「この声を出すのはつらそうだなあ」とも思うところもあったのですが、それよりも「懐かしさ」と、ラストの『Get Wild』の心地よさが上回る佳作でした。

今回の新作も、冴羽獠は神谷明さん、槇村香役の伊倉一恵は続投されていて、「やっぱり『シティハンター』はこのコンビじゃなくては!」と嬉しくなったのです。『新宿プライベート・アイズ』のときよりも、声はしっかり出ていたのではなかろうか。

観ていて、冴羽獠のヒロインへの「もっこり行為」の数々に、「2023年に映画でセクハラをやって許される男、冴羽獠ってやっぱり『レジェンド』だよなあ」と感心せずにはいられませんでした。
それと同時に「1980年代やTMネットワーク小室哲哉サウンドへの思い入れ」がない人は、この『シティーハンター』を受け入れてくれるだろうか、とも考えてしまったのです。

声優さんも、『シティーハンター』というコンテンツを再起動して幅広い層にアピールするためには、どこかで若手に切り替える必要もあるのではなかろうか。

ただ、この映画を観ていると、スタッフも声優陣も「高齢化が懸念されても、やれるところまで自分たちでやる!」という覚悟がありそうで、昔から観てきた僕は、「もう、ここまで来たら最後まで付き合います」という心境です。
テレビアニメとしてリメイクするには、冴羽獠のセクハラ描写は時代に合わない。でも、依頼人に「もっこり」し、セクハラ行為をしようとして香にハンマーで殴られる「お約束」が無くなったら、もう『シティハンター』ではない。

昔のアニメのリメイク、最近も『うる星やつら』や『るろうに剣心』など、超豪華声優陣を配して鳴り物入りで行われているのですが、どうも今ひとつ盛り上がっていない印象です。
僕も『うる星やつら』は、初回を観て、「おお、昔のアニメに声優さんの演技もかなり寄せてきているな」と感心したものの、2話以降は観ていないんですよね。原作に忠実だと今の時代には「古い」と感じるし、さりとて、あまりにも変えてしまうと「そうじゃ無いんだよなあ……』と違和感がある。

SLAM DUNK』の山王戦の映画化が大ヒットしましたが、声優交代に関してはかなり物議を醸しました。キャストの多くが、まだ現役バリバリの声優さんということもあって。

シティハンター』もそうなのですが、単発、あるいは何年に1回とかの映画であれば、「お祭り感」があって、多少の違和感は「また観ることができた」というだけで嬉しくなるのですが、1クール、2クールとなると、お祭り気分は続かないのかもしレませんね。

正直なところ、今回の『エンジェルダスト編』も、「この戦い、そもそもやる必要あった?」とツッコミを入れたくなるし、物語の鍵を握る重要なアイテムの管理もあまりに杜撰で、「絶対偽物かダミーだと思った」のです。勝手に出てきて、勝手に死んでいく、強そうで大したことない敵たち。アンジーも敵の黒幕も、なんでそんなことをするのかわからないというか、冴羽獠のカッコいいシーンを見せるために動かされているようにも見えます。

……でもカッコいいんだよね、冴羽獠。
逆に、冴羽獠がカッコよくて、ポリコレの壁を乗り越えて「もっこり」し、香にお仕置きされつつ仲良しで、最後に『Get Wild』が流れるエンディングがあれば、もうそれで『シティハンター』なのです。
時代に合わせようとしたり、作家性に溢れたストーリーを創造しようとしたりするよりは、「あの頃の冴羽獠」でいてほしい。
リアルタイムで漫画やアニメをみてきたオッサンとしては「これでいいんだよ、こうして何年かに一度、新作を見ることができるだけで十分。北条司先生と神谷さんに最後までついていきます!」と思いつつ、『Get Wild』を最後に小声で一緒に歌って、機嫌よく映画館を出てきました。

これでいいんだよ、これで。

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