19世紀末、シンガポール近海に海賊船と一緒に沈んだとされるブルーサファイア“紺青の拳”。その宝石をある富豪が回収しようとしている中、マリーナベイ・サンズで殺人事件が発生し、現場で怪盗キッドによる血塗られた予告状が見つかる。江戸川コナンは、キッドの策略によって、シンガポールへ行かざるを得ない状況に追い込まれてしまう。
2019年、映画館での9作目。
日曜日の夕方の回で、観客は50人くらいでした。
『名探偵コナン』の映画には、「シリーズ全体の謎が解明されていく作品」と「単発の作品として完結・完成されているエンターテインメント」の2系統があるのだけれど、今回は後者のほうだった。僕自身は、『名探偵コナン』にさほど思い入れがなく、映画を子どもたちと一緒に年一回、たまにテレビ放映を観るくらいなのだが、後者のほうが観やすくて助かります。
今回、何年かぶりに映画館で観て、オープニングの豪華さや伏線もしっかり練られたシナリオなど、大ヒットが約束された作品は、ちゃんとお金と手間がかけられていてすごいな、と感心しました。
オープニングの事件発生、江戸川コナン登場、そして、キメ台詞の「真実はいつもひとつ!」からテーマ曲への流れなど、まるで『スター・ウォーズ』や『007』のようなワクワク感があるのです。もう、これを観たから、今日は満足、みたいな。
ただ、こうして映画が大ヒットし続けるかぎり、『名探偵コナン』のメインストーリーはなかなか進まないだろうし、完結もしないだろうな、という気もしてきた。ちゃんと大きなストーリーとして、全体を「完結」させたほうが良いのか、もうこのまま『ドラえもん化』してしまうべきなのか。
ときどき見る派としては、見るたびに、みんな鼻が尖ってるな、とか、脚長いな、とか思うのだけれども。
一緒に観た長男は大変満足していて、僕も面白かったので、良作ではあったと思う。こういう「そんなに作品にこだわりがない親が観ても面白いアニメ映画」というのは、あんまり無いので。
前作の安室透ほどの「キャラ萌え」は無く、京極真というキャラクターには、「格闘ゲームのキャラっぽいな」というほかには、そんなに魅力を感じなかったのだけれど、怪盗キッドとコナンの絡みはけっこう楽しかったのです。
コナンのキャラ総出演の格闘ゲームとかあったら面白いのではなかろうか。蘭ちゃん最強。
プールでの蘭と新一、満身創痍キッドなど、予告編で「これは……」と思ったシーンが本編ではあんまりたいしたことなくて、予告編つくるのうまいなあ、と感心せずにはいられなかったのです。
あと、敵方の関係が複雑すぎるというか、「雑」すぎる、どんでん返しをつくるために、かえってわかりにくくて理不尽になってしまっている、という感じがしました。
シンガポールの街がけっこう壮絶に破壊されているのをみて、よその国なのに大丈夫なのかこれ、と一瞬思ったのだけれど、アメリカのディザスター映画なんて、世界中の文化財を破壊しまくっているのだから、「エンターテインメントなら、あり」なんだろうなあ。
そもそも、実際に行ったときのことを思い出してみると、マリーナベイ・サンズって、マンガのような、というか、現実感のないホテルではあり、シンガポールというのも、シムシティの中に紛れ込んだような気分になる街ではありました。
たぶん、去年の『ゼロの執行人』があまりにもヒットしたため、作る側としては、あの路線で「キャラ萌え」「メインストーリーの謎解き」を進めていくか、ここで一度リセットして、「年に一度のお祭り」に今年は回帰するかを考えた末、後者を選択したのだと思うし、それは堅実な選択だったのではなかろうか。
でも、最初からずっと観てきたファンにとっては、「そろそろなんとかしてくれないと、俺か作者が死んじゃうよ」とも思うよね、僕にとっての『新エヴァンゲリオン劇場版』と同じで。

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