マーヴェリック(トム・クルーズ)は、かつて自身も厳しい訓練に挑んだアメリカ海軍パイロットのエリート養成学校、通称「トップガン」に教官として戻ってくる。父親と親友を空で失った過去を持つ彼の型破りな指導に、訓練生たちは反発する。彼らの中には、かつてマーヴェリックの相棒だったグースの息子ルースター(マイルズ・テラー)もいた。
2022年12作目の映画館での鑑賞です。
平日の夕方の回を観ました。観客は20人くらい。
最初に映画館で予告編を観たときには「何をいまさら『トップガン』なんだ?そんなに新しい企画が出てこなくなったのか?」と思ったんですよ。
前作が公開されたのは1986年ですから、もう36年も前です。
トム・クルーズの出世作でもあり、セガの『アフターバーナー』にも影響を与えた、「とにかくカッコいいアメリカとエリートパイロットの世界」を描いた『トップガン』。
当時は日本にも勢いがあって、そんなアメリカに憧れ、追いつこうとしていく熱気が、その後のバブル経済につながっていったのです。
僕自身は、『トップガン』をリアルタイムで観たときの記憶がなかったんですよね。
この続編が大ヒットし、『Yahoo映画』などで「観た人の評価」がやたらと高かったので、Amazonプライムビデオで前作を観ました。「どこかで観たことがあるシーン」がたくさんあったので、大学時代とかにレンタルビデオで、あるいは後のテレビ放映で観たのかもしれないし、あまりにも王道の「若者の才能のきらめきと挫折、そして再起の物語」であるがゆえに、そう感じたのかもしれません。
36年前の『トップガン』は、今でもそれなりに面白いのですが、どちらかというと「よくできている映画だなあ」というのが2022年に観た印象でした。
評判も良いし、せっかく予習(復習?)もしたのだから、観ておこうか、というくらいの気持ちで映画館のシートに座りました。
冒頭のシーンと音楽で、僕は頬が緩むのを抑えられなかったのです。
これ、前の『トップガン』と同じだ!
もちろん、「全く同じ」ではないのですが、なんだか、自分がまだ10代だった頃にタイムスリップしたような気分になりました。
リアルタイムでこの映画を観たかどうか、記憶は曖昧になっていたのに。
これが、5年、10年ぶりくらいの続編だったら、「あざとい」というか「ちょっとは進歩しろよ」と思ったかもしれませんが、36年経つと、懐かしくて、テンションが上がります。
36年も経つと、一周まわって、かえって新鮮な感じもします。
空軍のエースパイロットの話で、いまの年齢のトム・クルーズが主役を張るのはさすがに無理があるだろう、とも思っていたんですよ。
この映画のストーリーの中でも、アメリカ軍の上層部は、人が乗る戦闘機よりも、自動操縦システムやドローンに現在は力を入れており、「優秀な人間のパイロット」は絶滅危惧種化しているのです。
36年前のように「男だけの世界」でもなくなっています。
アメリカ軍は絶大な力を持つだけに、そして、パイロットの養成にはお金も時間もかかり、戦闘機も高価であるだけに、「戦死者、自国の犠牲者を出すこと」への抵抗感が大きいんですよね。
この映画で描かれる「至難のミッション」にしても、ストーリーを盛り上げるためにつくられた、テレビゲーム的な状況だとも言えそうです。
地形的な問題、外交上の問題はあるにせよ、ドローンを飛ばすか、トマホークミサイルにあのくらいの精度があるのなら、それを撃ちまくれば目的は達成できるのでは……とも思いました。
しかしながら、実際に、大スクリーンの前で、身体が震える大音響にさらされて、この映画を観ていると、もう、ストーリー云々よりも、2時間、テーマパークのアトラクションを体験しているような感じなのです。
そして、僕のようなオッサンにとっては、「いまさら、あの年齢のトム・クルーズ」が奮闘するからこそ、感情移入してしまうところもあります。
あのトム・クルーズも、もう若くない。
今作では、あれから36年も経っているし、若いパイロットたちの教官として「重厚感のある役割」を果たしてくれるはず。
……だと思ったんですけどね。
これはもう、「死ぬまでマーヴェリック」「死ぬまでトム・クルーズ」だな。
そういう、開き直りとすら思える「潔さ」が、この映画にはある。
「これがエンターテインメントなんだよ!考えるな!楽しめ!」
周囲のキャラクターの変化をみていると、マーヴェリックって、何歳なんだ?と困惑してしまうのですが、そういうことを言うのも「野暮」でしかないのでしょう。
オッサンの心には、いつもマーヴェリック。
ぜひ映画館で、それも、大きなスクリーン、身体が震えるくらいの大音響で。