琥珀色の戯言

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【映画感想】スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム ☆☆☆☆☆

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トム・ホランドが主人公ピーター・パーカーにふんする『スバイダーマン』シリーズの第3弾となるヒーローアクション。スパイダーマンであることが世界中に知れわたってしまい、平穏な生活を送ることができなくなったピーターが、自らの宿命と向き合う。

www.spiderman-movie.jp



2022年3作めの映画館での鑑賞です。
観客は30人くらいでした。

いちおう、前作の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を数日前に観返しておいたのです。
以前、マーベル作品として2回シリーズ化されていた『スパイダーマン』に比べて、このトム・ホランド版は全体的に明るい雰囲気です。スパイダーマンのヒーローとしての活躍、というよりは、ピーター・パーカーの高校生活がコメディタッチで描かれている作品、という感じ。

トビー・マグワイアがピーター・パーカーを演じていた最初のシリーズがいちばん好きな僕としては、トム・ホランド版は、「面白いし、観ていて文句なしに楽しい映画なんだけど、ちょっと軽すぎるかな……」という印象でした。

『ファー・フロム・ホーム』とか、「ピーターがイーディスを渡さなければ、あんなに大事にならなかったのに……」って、つい言いたくなりますし。
「まだ子供だ」というのが、魅力でもあり、もどかしさでもある。

この『ノー・ウェイ・ホーム』も、ピーターの「子供っぽいお願い」に、ドクター・ストレンジが応じてしまったことが事の始まりで、「またマッチポンプか!」と思いつつ観ていたのですが、まさか、このシリーズで泣かされるとは思わなかった……

アベンジャーズ:エンドゲーム』が、マーベルのユニバースの中でのひとつの「決着」がつく作品だとすれば、この『ノー・ウェイ・ホーム』は、映画の周辺の現実で起こっていることに対して、「ケリをつけた」というか、「みんなが救われた」ような気持ちになる作品でした。

ただ、僕が「ああ、とりあえずよかったな……」と噛みしめながら映画館を出ていくとき、若い女性二人組が「途中から何が何だか全然わかんなかった……寝そうになって、戦いの大音量で起こされた」なんて話をしているのが耳に入ってきました。

僕自身は、マーベル/SONYの『スパイダーマン』のシリーズをなんのかんの言いながら、トビー・マグワイヤ版から観続け、それぞれの作品についての世間の評判、リセットされてはまた新しい俳優がピーター・パーカーを演じているという歴史を見届けてきたのです。
だから、こういう形で、『スパイダーマン』の歴史にひとつの区切りがついた、ということに、感動せずにはいられませんでした。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に近い余韻、とでも言えばいいのかな。


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ストーリー、役者たちのこの作品への思い、それぞれの会社の関係……
ある意味、庵野秀明監督の「内部」で決着をつければよかった『エヴァ』よりも、この『ノー・ウェイ・ホーム』のほうが、はるかに「さまざまな現実的な障害」があったのではなかろうか。

でも、この『ノー・ウェイ・ホーム』だけ、あるいは、トム・ホランド版だけしか観ていない人たちにとっては、「なんかよくわからないゴチャゴチャした話で、背景がありそうなんだけどよくわからない。置いてけぼりにされた気がする」という感想になるのも、致し方ない。

Amazonプライムやネットフリックスなどの映像配信サービスが浸透しきっていて、サブスクリプションで過去作を予習しやすいアメリカの観客に比べて、日本では、まだまだ過去作を観るハードルは高めです。けっこう昔の映画でもあるし、マーベル作品は、『アベンジャーズ』以外は、日本ではアメリカほどヒットしてもいませんし(『スパイダーマン』シリーズは、そのなかではかなりヒットしたんですけどね)。


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マトリックス・レザレクションズ』の感想でも書いたのですが、最近のハリウッド映画には「ちょっと古めの過去作を予習していないと十分に楽しめない」作品が増えてきています。
もちろん、ヒット作の続編は昔から作られていたのですが、「配信で観られるんだから、予習しているのが当たり前だよね」みたいなスタンスというか、「この作品がシリーズ初見でも楽しめるような配慮」が薄くなってきているように感じられるのです。

僕自身はこれまでの「歴史」を知っているので、この作品がはじめての『スパイダーマン』の人、トム・ホランド版しか観ていない人が、それぞれどんな印象を持ったのかは想像しかできないんですけどね。
「これを観たことがきっかけで、過去作にも興味を持ってもらいたい」という狙いもありそうです。

なんだか作品の外周をぐるぐる回るような話を「感想」として書いているのは、「できれば、なるべくネタバレなくこの作品を観てもらいたい」でも、「観られる人は、過去のシリーズを観ておいたほうが絶対に面白いと伝えておきたい」から、なのです。
まあでも、現実的には、トビー・マグワイア版の第1作から、これまでの実写の7作+アニメなどのスピンオフ作を予習するのはハードルが高い。

それでも、これまでの『スパイダーマン映画』を見届けた人たちにとっては、「みんなが救われたと思える『スパイダーマン』」になっていると思います。
2022年、『アベンジャーズ』後のスーパーヒーローの最大の敵は「自分自身とネット社会」になってしまっていて、映像で魅せるスーパーヒーロー映画は、作りにくい時代になっていますよね……


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