琥珀色の戯言

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【読書感想】ニトリの働き方 ☆☆☆☆

ニトリの働き方

ニトリの働き方

  • 作者:似鳥 昭雄
  • 発売日: 2020/08/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


Kindle版もあります。

ニトリの働き方

ニトリの働き方

増収増益日本一! これがニトリの仕事の基本!

現状を否定するところから仕事は始まる
「観察・分析・判断」をする力を磨き上げる
「現場・現物・現実」三現主義を徹底する
「即断・即決・即行」でなければ、成功はつかめない
優れたアイデアは「不平・不満・不便」の発見から生まれる

……ニトリ創業者が社員に語り続けた33の「仕事の原理原則、商売の心得」を大公開!


 最近、『ニトリ』に行くのが、けっこう楽しみになっているのです。
 これまでの人生で、家具にはほとんど興味がなかったのですが、長男の勉強机を買いに行ったのがきっかけで、すっかり、『ニトリ』にハマってしまいました。どんどん新しい家具を買う、というのは金銭的にも家のスペース的にも難しいのだけれど、ちょっと思いきれば買えそうな値段で、座りやすそうな椅子や寝心地のよさそうなベッドが並んでいるのは、見ているだけでもけっこう楽しいんですよね。

 この本では、その『ニトリ』での仕事のやり方について、創業者の似鳥昭雄会長のメッセージと、実際にニトリで働いている社員たちが自分の仕事について語った話が紹介されているのです。
 良い家具を他よりも安く、上手にディスプレイして売っているだけ、だと僕は思い込んでいたのですが、それを実現するというのは、本当に大変なことなんですね。考えてみれば当然のことで、競合他社だって、みんなそうしようと努力をしています。そのなかで、「頭一つ抜き出て、好業績を続ける」というのは、並大抵のことではないのです。こんなに「意識が高い」人たちが働いているのか……と驚かされました。

 ニトリがまだ2店舗だった1972年、私は第1期「30ヵ年経営計画」を作り、「2002年までに100店舗に増やし、年間売上高を1000億円にする」という目標を社内外に宣言しました。これがニトリが最初に設定したビジョンです。
 当時の売上高は1億6000万円ほどでした、実現不可能だと誰もが思ったことでしょう。しかし31年後の2003年に、1年遅れではありますが、これを達成しました。そのために私たちが行ってきたのが、「未来から逆算し、今日一日、すべきことを実行する」ということでした。
 まずはビジョンを「30年、10年、3年、1年」という形に分解していきます。たとえば、ニトリであれば、2002年までの30年を10年ごとに大きく分け、最初に店づくり、次に人づくり、最後に商品と仕組みづくりと定めました。それを3年、1年、さらに年間計画は週ごとに分け、「その週に何をするのか」という具体的な行動計画にする。そして、行動計画をもとに、今日一日、すべきことを、徹底実行していく。計画通りにいかないなど問題があれば、その根本原因が何か、事実を調査したうえで対策を決め、即座に行動に移しました。このように、ビジョンから逆算して行動するということを、30年以上、ひたむきに積み重ねていったからこそ、当時は不可能としか思えなかった大きなビジョンを達成できたのです。


 僕は半世紀くらい生きてきて、それなりに「頑張って」きたつもりたのですが、自分に足りなかったものは何か、と考えることがあるのです。
 それは、「自分がどうなりたいか、何をしたいか」という具体的な目標をちゃんと定めなかったこと、そして、それを実現するために、今の自分は何をすればいいのか、という「逆算」をしてこなかったこと、ではないかと思うのです。
 「完成系」をちゃんと自分の中に持たずに、設計図もないまま、ただ、「目の前のことを頑張る」ことを漠然と続けてきたんですよね。
 みんな、「幸せになりたい」とか「成功したい」とは思っているはずだけれど、「どうなったら、自分は幸せなのか?」「何が自分にとっての『成功』なのか?」を、ちゃんとわかっている、あるいは設定している人は、意外と少ないような気がします。
 この似鳥会長の話を読んで、それを、あらためて思い知らされました。


 1998年新卒入社・商品部のJ・Sさんの話。

 現状を否定するときには、自分の成功体験を否定する場合もあります。会長の話にもあるとおり、ニトリでは売れている商品でも、品質・機能を向上させるために入れ替えます。
 売れているときに入れ替えてしまうのは抵抗があるかもしれません。私は今商品部にいるのですが、売れている商品というのはあっという間に、他社も似た商品を販売するようになるものです。同じものを売り続けていては、すでに追い抜かれてしまいます。だからこそ、売れる商品ほど、むしろ他の商品よりも早く進化させたものに入れ替える必要があるのです。
 新しいサンプルを製作したら、それが既存の商品よりも格段に良い商品になったり、原価の改善によって値段を安くできるようになったりする。これは非常に理に適っていると思いますし、今は実務で日々行っていることです。
 大なり小なり会社から要求される課題は常に現状否定を前提にしたものです。それを実践で繰り返し行う習慣があるからこそ、スピード感ある意思決定と行動ができるようになったと、自分の成長を実感しています。


 いま、売れている商品であれば、なるべく「変えない」ほうが良いのではないか、と僕は思っていたんですよ。でも、「売れているからこそ、需要があるということで他社との競争が激しくなるし、どんどん改善していかなければならない」ということなのです。
 コンビニの商品も、ヒット商品がすぐにリニューアルされて、「前のほうが良かったのに」と思うことが少なからずあるのですが、それでも「現状維持よりも、どんどん入れ替えていく」ことが重視されているようです。


 似鳥会長は、こんな話もされています。

 仕事で指示を出すのであれば、作業の目的や方法を妥当な根拠をもとに、誰が聞いても納得できるよう、相手に合わせてわかりやすく伝えるスキルが求められます。しかし、私たちが普段使っている言葉には、状況や文脈によって意味が変化するために、誤解を生んでいることが多くあるのです。
 たとえば、「なるべく早くやっておいて」と伝えた場合、これだけでは優先度や期限が不明瞭なために、言われた相手の受け止め方によって、進み具合に差が出てしまいます。現実に、言った・言わない、言っていることが違うなど、コミュニケーション上の問題の数々は、不完全な伝え方が原因で起こるのです。
 こうした問題は、相手とのトラブルを引き起こしたり、指示した内容と違う作業を進めてしまった場合は、再度説明し、やり直すなど大きなムダが発生します。これを避けるため、伝達、指示には「目的、道具、動作、手順、期限」を必ず入れることが重要なのです。内容は具体的にし、誰が行うのか、役割分担も明確にします。
 こうした伝え方を習慣化するには、できるだけ短い文章にして、区切って話すよう意識することが有効です。
 また、伝えて終わりではなく、伝えたことを相手がきちんと理解しているか確かめるために、相手に内容を復唱してもらいます。自分が上司や先輩から伝達された側であれば、理解した内容を復唱し、「~ということでよろしいでしょうか」と確認しましょう。


 この本に出てくる社員たちと同じくらいのモチベーションを自分の仕事に対して持つのは、なかなか難しいと思うのです。
 でも、この「指示の出し方・受け方」くらいは、今後の自分へのお土産として、この本から持って帰ることができそうです。
「伝達、指示には『目的、道具、動作、手順、期限』を必ず入れることが重要なのです」
 「なるべく早く」という曖昧な指示しか出していなくて、「まだできていないの?」なんて部下を怒るのは筋違いなんですよね。
 僕自身も、こういうことをきちんと「相手に合わせて」やってこなかったな、と読みながら反省せずにはいられませんでした。
 この本を読んでいると、「『ニトリ』って、こんなに厳しい会社だったんだ……」と感じるのですが、あらためて考えてみると、「厳しいけれど、けっして『理不尽』な目には遭わない」という環境は、案外「優しい」し、「納得できる」のではないか、という気もします。挑戦しての失敗には寛容な会社でもあるみたいですし。


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