琥珀色の戯言

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WBC雑感

http://www.nikkansports.com/baseball/p-bb-tp0-20060322-10025.html

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に関して、思ったことをつらつらと。
 率直に言うと、実際に日本が優勝して、王監督が胴上げされるのを見るまでは、「5勝3敗で優勝とか言ってもなんだかなあ」とか思っていたわけです。やっぱり、韓国に喫した2敗というのは、「最強チーム」としては腑に落ちないものではあったわけで。そして、決勝の内容にしても、「初回に緊張していたキューバの先発投手から大量得点」という願ってもない展開になっての勝利で、それこそ、「先攻後攻が逆だったら、結果も逆だったかも…」とかも思います。そして、2次予選で韓国に負けたときは、まさに「国辱」の扱いだったのが、メキシコの勝利でなんとか準決勝に滑り込み、その後韓国・キューバに勝って優勝したとたんに英雄扱いっていうのも、いくらなんでも掌返しすぎなんじゃないかなあ、とか思ってもいたのです。
 でもね、実際にイチロー王監督が顔をくしゃくしゃにして喜んでいる姿を観ていると、なんだかそんなことはどうでも良くなってしまったんですよね。ああ、みんなとっても苦しい思いをして、こうして今、こんなにいい顔をしているんだから、それでいいじゃないか、それ以上、なにが必要なのか?って。ほんと、あんなに嬉しそうな人の顔って、そんなに見られるものじゃない。
 もちろん、WBCそのものには、審判問題をはじめとして、同じチームと何度も戦わなければならなくなるという組み合わせの不可解さや投手の球数制限(でも、結果的には、この「球数制限」というのは、ひとりの大エースの力だけでは勝ちあがれないという状況を生み出したわけで、かえって「国別対抗戦」としては試合を面白くしたのではないかという気が僕はします)など、さまざまな問題点もあったのですけど、日本対キューバというあまりアメリカ人の興味が湧きそうもないような決勝戦になったにもかかわらず球場にはあれだけの熱気があったアメリカという国は、なかなか凄いものがあるなあ、と僕は思いました。だから、メジャーなんてたいしたことはない、というのではなくて、ああいう代表選手たちが集まるところがメジャーリーグなのだから、やっぱりすごいのだ、と。そもそも、イチローだってメジャーリーガーなんだしね。
 昨日は本当にどこのワイドショーも他に大きなニュースがなかったということもあり、このWBC優勝の話題一色だったのですけど、そのなかで僕がいちばん印象に残ったこのは、あるコメンテーターが言っていた【まあ、いろいろ問題点はあったのでしょうけど、とりあえず、「あきらめずに頑張ればいいことがある」という気持ちを世の中のみんなが持つことができたのだったら、それは素晴らしいことなんじゃないでしょうか】という言葉でした。さんざん大言壮語して韓国に連敗して「FUCK!!」と叫んだときのイチローはカッコ悪かったし、勝負どころで落球した今江は情けなかった。韓国戦が終わったあと、「まだ可能性は残っているんだから」という関係者は、未練がましいとしか思えなかったのに。
 それでも、彼らは「世界一」になったのです。
 もちろん、王監督や日本の選手達、多くの野球ファンは「日本が文句なしに世界一の実力がある」と思っているわけではなくて、「日本の野球は、世界一を争えるポジションにいることを証明できた」というのが実感ではないかと思うのです。でも、日本が「そういう位置にいる」スポーツというのは、そんなにたくさんあるわけじゃありません。頑張って決勝トーナメントに進出できるかどうか?というサッカーよりも、より「世界に近い競技」であるこは厳然たる事実です。
 それにしても、WBCを観て思ったのは、「野球はピッチャーだ」ということと、「ディフェンスの重要性」です。とくに韓国チームの守備を観ていると、やっぱり接戦に強いチームというのは、守備が良いチームなのだなあ、と痛感させられました。僕の贔屓の広島カープがあれだけの打者を揃えていても勝てないのは、やっぱり打撃偏重のオーダーにあるのではないかと。とくに外野の守備範囲の差というのは、けっこう大きいなあと思わざるをえません。カープの前田・緒方・嶋の外野陣は、バッティングだけで言えばかなりいい線いっていると思っていたのですが、守備範囲を考えると、やっぱり厳しいなあ、と。広島市民球場だから、と言ってみたところで、守備範囲が広いにこしたことはないわけで。
 ただ、その一方で、すべての野球チームが、「勝つためのスモールベースボール」を志向していくことが正しいのか?という気もするんですよね。豪快なホームランだって野球の醍醐味なわけだし、球場で観ていたら、投手戦よりも少しは点が入る試合のほうが面白いのはまちがいありません。そして、すべての試合が、こんな国際試合のような緊張したゲームになるというのも、それはそれでムリな話だとは思います。ビール飲みながら、「まったく新井は4番だとダメだな〜」とかボヤくような野球にだって、それなりの味わいがあるわけです。
 まあ、正直、いつも周りの視線を意識しながらマイナー球団の応援をしている僕としては、「周りのみんなも掛け値なしに応援している」王ジャパンを応援するのは、けっこう爽快ではありました。自分の贔屓球団しか目に入らない日本の野球ファンにとって、このWBCというのが、「どの球団の選手もみんな日本のプロ野球の選手なんだ」という意識の高まりに貢献してくれればいいなあ、と願ってやみません。

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