琥珀色の戯言

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時をかける少女 ☆☆☆☆☆

時をかける少女 通常版 [DVD]

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高校2年生の紺野真琴(声・仲里依紗)はある夏の土曜日の実験室で不思議な体験をし、それ以来時間を跳躍するタイムリープの力を身につけてしまう。はじめはそれを巧みに利用して日々を楽しんでいた彼女だが、仲良しの同級生・千昭(声・石田卓也)から告白され、それを強引になかったことにしようと時を遡ったときから、運命の歯車が狂い始めていく…。

 こ、この高校スカート短いな……
 というようなファーストインプレッションはさておき、30代半ばのオッサンになってしまった僕が観ても楽しめる、素晴らしい作品でした。声優さんたちも最初の場面はちょっとぎこちない気がしたのだけれど、どんどん物語に「しっくりくる」ようになっていくんですよね。100分足らずの間に、出演者も観客も、ちょっとだけ「成長」しているようにすら思えます。「ずっとこのままでいたい」でも「ずっとこのままじゃいられない」って感じる瞬間って、たぶん、誰の人生にもあるはずで。そしてまた、「今」という時間があるのも、きっと、いろんな偶然の積み重ねだったりするんですよね。まあ、僕にはこんな「青春」は無かったし、むしろ「功介ちょっとかわいそうだな……」とも感じたところもあったのですが。「タイムリープ」っていうのが使っている本人にだけ都合の良いように利用できるのなら、世界なんてムチャクチャになるのではないか、とか、世界はパラレルワールドだらけになってしまうのではないか、というような疑問もあるのですけど、この作品に関しては、「そんな理屈はとりあえずあっちに置いといて」夏の青空を見ながら「あの頃の未来」を思い出してみればいいんじゃないかな、と思います。もちろん、まだ学生の人たちは、「待ってられない未来」を思い描いていただければ。
 それにしても、筒井フリークとしては、これだけ大胆にアレンジされていながらも原作のエッセンスをうまく生かしているというのには感心してしまいました。叔母さんが「若い子にはタイムリープ」なんて珍しくない、なんて言っていて、あなたはどこのビューティフル・ドリーマー?と呆れていたら、そこにもちゃんと「意味」があるなんて洒落てますよね。
 ただ、僕がこれを観ながらずっと考えていたことは、「くそー、タイムリープできたら、今日(もう昨日か)のNHKマイルカップの三連単14-10-18を1万円くらい買うのになあ……という邪まな内容だったということをここに告白しておきます。というか、あれを買えた人って、みんな本当はタイムリープしてたんじゃなかろうか……


参考:アニメ映画「時をかける少女」の原作者・筒井康隆インタビュー(再掲)
 (by「オトナファミ」2006・SUMMER(エンターブレイン))

インタビュアー:オリジナルと変わってしまってかまわないよ、とおっしゃられたとか。


筒井康隆:物語の骨格、ロマンティシズムはそのままに、主人公を含め登場人物のキャラクターが全く変わっています。現代的になったんだけど、それでいいと思うんだよ。今まで何度もドラマ化されたけど、みな原作通りでちょっと飽きてきてた(笑)。


インタビュアー:先生の膨大な作品の中でなぜ『時かけ』が特に注目されるのでしょう。


筒井:僕の作品の中では異質だよね。逆に言えば他の作品が映画化しにくいんじゃないのかな。例えば『旅のラゴス』も、ずいぶんお話をいただきましたけど、なぜか全部頓挫しちゃった。いっぺんに2社から映画化の話が出て、折り合いがつかなかったりね。『パプリカ』映画化も資金的な問題でダメになった。今度こそアニメ化されますけどね。『富豪刑事』も何度か話があったけど、カネがかかり過ぎるってね。


インタビュアー:では深田恭子さん主演のテレビドラマ『富豪刑事』が実現に至ったのは。


筒井:あれはもう覚悟の上で、そうとうカネをかけて作ったんですよ。とにかく衣装から道具から高価だし、料理代が1回100万円だよ。

 しかし、原田知世の『時をかける少女』をリアルタイムで観た世代としては、この新しい『時をかける少女』を観ながら、心の奥底からわきあがってくる「とーきーをーーかーけーるーしょーじょーー」という原田知世さんの歌を消し去ることができませんでした。「あーいーはーかーがーやーくーふねー」の「ふねー」の音程が『ザ・ベストテン』では毎回外れてたんだよなあ。

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