- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/11
- メディア: 文庫
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出版社 / 著者からの内容紹介
あの『となり町戦争』に続く衝撃作!
話題のデビュー作に続く注目の第2作。バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編を収録。
単行本が発売されたときから、ちょっと気になっていた本だったんですが、文庫化を機に購入。
僕は読むまで、表題作『バスジャック』を、佐賀のバスジャック事件をモチーフにした話だとばかり思っていました。
正直、この文庫の前半の作品群は、僕にとっては退屈+読み味が悪いものでした。
表題作『バスジャック』なんて、最初の3分の1くらいで、オチも見当がつきましたし。
「ああ、こういうの筒井康隆さんが30年前くらいに書いてたよなあ」と。
タイトルがセンセーショナルだからといって、こういう作品を表題作にしてしまうのはいかがなものかと。
僕が面白かったのは、後ろに収められている中編2作『動物園』と『送りの夏』でした(あと、『二人の記憶』もまずまず)。
これを読んでいて感じたのは、「三崎さんはSFを書きたいのかもしれないけど、三崎さんの作品は『SF寄り』になればなるほど、なんだか『どこかで読んだことがある作品』のようになってしまう」ということでした。
僕にとっての三崎さんの最大の魅力は、「『恋愛』にうまくフィットできない、『仕事に生きてしまう女性』の描写」なんですよ。三崎さんが突き放して書けば書くほど、僕はそのキャラクターにセックスアピールを感じるのです。
世界観における細部のつくりこみは素晴らしいのだけれど、「ダイナミックなSFとしての発想」には乏しく、なんかこう「あっ、筒井(康隆)!」「星新一にハマってたんだろうなあ」というような「ルーツ」が伝わってくるんですよね。
前も書いたのだけれど、三崎さんは、SFじゃなくて歴史小説かドキュメンタリー向きの作家なのではないかなあ。
「不器用な女性の恋愛小説」とかもいいかもしれない。
生意気な感想で申し訳ありませんが、『となり町戦争』での成功にこだわりすぎないほうがいい、と僕は思います。
ディテールを描くのは、ものすごく上手い人なのだから。