iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)
- 作者: 大谷和利
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 新書
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「スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックという『2人の無名の若者』が、ガレージで作ったコンピューター『Apple2』で、コンピューターの歴史を変え、20代で億万長者になった」という「Apple伝説」を聞いて育ってきた僕にとっては、『Apple』というのは、やはりある種「特別な企業」なんですよね。
この本は、アップル・マニアの人たちには「こんなこと百も承知」というようなエピソードばかりなのかもしれませんが、僕のように「アップルのことが気になりながらも、Windowsを使い続け、iPodでのアップルの『復活』をささやかに喜んでいる人間」にとっては、とても懐かしくて刺激的な本だと思います。
なかでも、僕がとても印象的だったのは、アップルの「歴史に残る広告コピー」が紹介されている章です。
製品そのものはもちろんなのですが、これだけインパクトと自負心に溢れた広告を世に出し続けている企業というのは、たぶん、世界でも数少ないのではないかと。
ジョブズは、手塩にかけた初代iMacを発売するにあたって、ユーザーがなにも迷わずにiMacを買ってくれることを望んだ。このモデルの売れ行きに、会社の命運がかかっているのだから当然と言えば当然である。
当時のプロモーションを思い出してみると、日本の各種雑誌に綴じ込まれたiMacの広告の最後には、こう書かれていた。必要なものは、みんなこの箱に。未来が先取りできる。もう、迷うことなんてない。17万8000円(メーカー希望小売価格)。世界でいちばん親しみやすいコンピューターへ、iMac
日本では、ここまで言葉を尽くすことが必要とされたわけだが、実は、まったく同じビジュアルと構成に基づいた英語版の綴じ込み広告の最後の言葉は、こうなっていた。
"One decision. One box. One price. $1,299."
つまり、仕様やカラーや価格がひとつしかないから迷わずに買える、ということをダイレクトに謳っていたのである。
"Soon there will be 2 kinds of people.
Those who use computers, and those who use Apples."
"The Computer for the Rest of US."
"1,000 songs in your pocket"
どのコピーを見ても、その「時代」がなんとなく頭に浮かんでくるのです。
この本に書かれているように、「iPodには、他社には真似できないような目新しい技術は何一つ使われていなかった」にもかかわらず、iPodはデジタルオーディオ界に君臨し続けています。アップルというのは、昔から、「商品以上の付加価値」を売っている会社だったんですよね。
もしかしたら、デザインや広告こそが「アップル」なのかもしれないな、というようなことを考えさせられる本です。