- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/09
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
読みながら、この「常野」の人たちのような生きかたを作者の恩田陸さんも求めているのだろうか、というようなことを僕は考えてしまいました。
すごい能力を持ちながらも普通の人々のなかに埋もれて生きようとするのだけれど、それでも「普通」の枠のなかにはおさまりきらなくて、ひとところにいられない「常野」の人々。
彼らに野心があれば、支配者になれるかもしれないのに、それを望まず、それゆえに、時代に弄ばれ、悲しい運命を辿ってきた彼らの歴史。
この連作短編集には、恩田陸という作家が抱えている「光」と「闇」の両面が、とてもバランスよく投影されているように思われます。
『夜のピクニック』の「人はいずれわかりあえるかもしれない」という「希望」と、『Q&A』の「物事に対する『理解』なんて、ほんの一面に対する主観でしかないのだ」という「諦念」。その二つが入り混じっているのが、この『常野物語』なのです。
ただ、この『光の帝国』という短編集は、「なかま が そろった!」というところで終わってしまうので、なんというか、『スター・ウォーズ〜帝国の逆襲』を観たあとのような、ある種の「欲求不満」に陥ってしまうのも確かです。
で、常野の人たちは、これからどうなるの? このままやられっぱなしなの?
実は、この『光の帝国』は、10年以上前に上梓された作品で、『蒲公英草紙』という続編もすでに文庫化されています。
次はこちらを読んでみる予定。
ところで、この作品って、ものすごく良質な「物語」であり、「神話」なのですけど、その一方で、「本当はこんなつまらない存在じゃないはずの自分」を抱えている人にとっては、「安易な自分探しの物語」として消費される可能性もあるんじゃないかな、ともちょっと感じました。
なんとなく『幻魔大戦』っぽいような……