- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/10/30
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ一億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめ込んだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそり置かれているだけとなった―はずだった。が、ある日を境にトラブル招聘体質の男・平沼平介の日常を一変させる厄介の種へと変貌する。八年ぶりに現れた悪友が言い放つ。「久しぶり。ところでお前、一億円欲しくない?」かくして黄金地球儀奪取作戦が始動する。二転三転四転する計画、知らぬ間に迫りくる危機。平介は相次ぐ難局を乗り越え、黄金を手にすることができるのか。『チーム・バチスタの栄光』の俊英が放つ、抱腹絶倒のジェットコースター・ノベル。
あの海堂尊先生が、『ジェネラル・ルージュの伝説』の自作の解説で「一番気楽で楽しい作品だと思っている」と書かれていた作品。
単行本のときは、気にはなりながらも購入するには至らなかったのですが、文庫化され、書店で平積み+POPで宣伝されているのを見て、躊躇無く購入しました。
「うーん、海堂先生の大ファンで、著作をコンプリートしたいという読者でなければ、わざわざ読む必要はない作品じゃないなあ……」というのが、読み終えての僕の結論です。
最近の売れたミステリっていうのは、「読者を騙すためだけに何百ページも書かれた叙述トリック」や「わけがわかんなくなるくらいの何重ものどんでん返し」、「あるいは、専門的な知識をこれでもかと詰め込んだ、職業小説っぽいもの」か、「ものすごく怖いか気持ち悪い世界を描いたもの」がほとんどなのですが、この作品は、まさに「普通すぎるくらい普通のミステリ」なんですよね。
工業機械についての薀蓄は語られていますが、あまり「魅力的な世界」だとは僕には思えませんでしたし。
登場人物も、あんまり際立った個性がなく、印象に残らなかったしなあ。小夜ちゃんがそこそこ幸せそうなのは安心しましたけど。
驚くようなトリックも、息詰まるクライマックスも、残酷なシーンもない、のどかで爽やかなミステリ+役所批判+友情賛歌。
「一番気楽」であることは認めますが、「楽しい」かと問われると……最初から最後まで、読み流してしまう感じ。
「劣化した伊坂幸太郎みたいな作品」なんですよね、うーむ。
今の御時勢では、こういう「ごく普通のミステリ」、けっこう貴重なのかもしれませんけどねえ。