琥珀色の戯言

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ジーン・ワルツ ☆☆☆


ジーン・ワルツ [DVD]

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◎内容◎
医療の最高峰、帝華大学病院の医師・曽根崎理恵(菅野美穂)にはある疑いが向けられていた。
院長代理を務める廃院寸前の小さな産婦人科医院・マリアクリニックで、禁断の治療をしているというのだ。そこに通うのはそれぞれ
事情を抱えた4人の女性たち。
その謎を嗅ぎつけたのは、同じく帝華大学病院に勤め、教授の地位が約束されたエリート医師・清川吾郎(田辺誠一)。
「私も一緒に闘っているんです、あの4人の妊婦さんたちと・・・」と主張する理恵は一体、何を計画しているのか。


彼女がマリアクリニックに隠した秘密とは。
清川は理恵の周辺を探り始める。

僕はこの映画の菅野美穂さんを観ながら、「ああ、こういう産婦人科の女性医師っているいる!」と思っていました。
僕の観測範囲では、産婦人科の若い女性医師って、クールで、優秀で、同性の患者さんに対しても、少し距離を置いているような人が多いんですよね。
町医者よりも、研究者的にみえる感じの。
逆に、男性の産婦人科医というのは、「フレンドリーなおっちゃん」か「色男」のいずれか。
(ここまでは与太話なので、あんまり真剣に読まないでくださいね)


この映画『ジーン・ワルツ』、原作小説も読んでいる僕としては、菅野美穂さんや田辺誠一さんの存在感には魅せられたのですけど、ストーリー的には、「なんだか『感動の出産ドラマ』になっちゃったなあ」という感じでした。
冒頭には、あの「大野病院事件」を彷彿とさせる「産科医逮捕」のシーンがあるのですが、産科医の「その後」については何も言及されません。
「体制内での変革を目指す」清川に対して、「体制外から革命を起こす」という理恵の言葉が出てくるのですが、理恵が具体的にどうするのかも、この映画のなかでは描かれません(小説版では書かれています)。
代理母」についての医者と患者、それぞれの葛藤も、あまり触れられていません。
そして、産科医が現在直面している「苦境」も、ほとんど伝わってこないのです。


とりあえず、赤ちゃんが生まれてきてよかったね!
どうです、出産って感動的でしょ?


いや、僕だって、「出産シーン」には感動しますし、自分の息子に「よく生まれてきてくれた」と感謝したい気持ちにはなりました。
でも、この映画の場合、「どうやって2時間にまとめていいかわからなくなってしまって、結局、どこからもクレームがつかない『出産ドラマ』にまとめてしまいました」というふうに見えるんですよ。
なんだか、もったいないというか、不甲斐ないというか……


うーん、この映画だけをみるなら、「平均点の中規模予算日本映画」なんですよ。
原作のココロザシを知らなければ。


代理母」「産科医療の現状」「大野病院事件」などについての問題提起を含まない作品が『ジーン・ワルツ』だと言ってよいのかどうか?


ジーン・ワルツ (新潮文庫)

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↑文庫も最近出たので、興味をもたれたかたは、読んでみてください。
原作本の『ジーン・ワルツ』への僕の感想はこちらです。

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