
2か月後に結婚を控えていた神尾真世(有村架純)は、父・英一が何者かに殺されたと知らされ実家のある町に戻る。元中学校教師として多くの教え子から慕われていた英一が殺されたことが信じられず、真相の解明を願う真世のもとへ、叔父の神尾武史(福山雅治)がやってくる。ラスベガスで活躍した元マジシャンの武史は、卓越したマジックの技術と人間観察力、誘導尋問を駆使して、真世と共に事件解明に挑む。
2025年映画館での鑑賞14作目。平日の朝の回で、観客は30人くらいでした。
時間帯もあって、ほとんどが中高年層。福山雅治×有村架純というキャストだし、もっと若い人が多いのではないか、と思っていたのですが、あらためて考えると、福山雅治さんも、もうそれなりの年齢なんですよね(他人のことは言えませんが……)、ファンもみんな、それなりに歳を重ねてきているわけで。
東野圭吾さん原作で、福山雅治さん主演といえば、映画、TVシリーズの『ガリレオ』を思い出さずにはいられないのですが、今回福山さんが演じている探偵役の神尾武史と湯川先生との差別化ができているのか、と言われると、「よりウザくてお金にうるさい湯川先生」という感じでした。
まあ、東野圭吾さんによると、もともと『ガリレオ』の湯川先生は佐野史郎さんをイメージしたキャラクターだったそうですし、僕は原作未読なので、イメージと違う、のかどうかはわかりません。
ただ、最初は本当に「ウザいなこのおっさん」だったのが、観ているうちになんだか乗せられてきたというか、あまりに過剰演出な神尾武史と、それを真剣と余裕の中間くらいで演じている福山さんを観ていると、「これはこれで、エンタメとしてこっちも割り切って楽しもうかな」という気分にはなったのです。
しかし、正直なところ、もはや大御所の東野圭吾さん作品ということもあってか、制作側が「新しい視点」とか「豪華な演出」だと思っているであろうところが、ことごとく「ちょっと古いな」とも感じました。
以前、芥川賞の選評で、山田詠美さんが「少し古いものが、いちばん古い」というようなことを仰っていたのですが、冒頭のアメリカでのマジックのシーンから、「こんなあからさまなCG(コンピューターグラフィクス)は、今だとかえって古臭くてウケないだろ……」と、感覚的なズレはあったのです。
感動させようとするマジックのシーンが、ことごとく、いかにもCGというCGで、「まあ、CGだったらなんでもできるよね」と思ってしまうし、事件に関しても、そういえば、東野圭吾さんはずっと電子書籍拒否派だったものなあ(数年前にようやく解禁されたみたいです)、ネットでごちゃごちゃ言われるのとか嫌いなんだろうなあ、とか、考えてしまいました。
ミステリーあるあるなのですが、身内が殺されて、いきなり「真実を明らかにするための犯人探しモード」に突入できるって、どんなメンタルなんだよ、とも思うのです。
そうしないと話が始まらない、というのはわかるのですが、神尾真世と英一が疎遠になってしまった経緯や、武史がアメリカから帰国した理由もすっきりしないし、いくら田舎でも、あんなに学生時代の同級生に交流があるものなのだろうか。僕なんか、小中学校の同級生は、名前と顔が思い出せるのはせいぜい5人くらい、まがりなりにも交流があるのは3人くらいです。いや、日本の「地方」ってそういうものなんだよ、ということなのだろうか、そんな地方の閉塞を題材にしたミステリを米澤穂信さんが以前書いていたなあ。
このあたりは、原作を読んでいればわかるのかもしれないけれど。
全体的に、思わせぶりな容疑者たちが、思わせぶりなまま終わってしまった感もあります。
個人的には、木村昴さんの「リアルジャイアン」っぷりがけっこうツボでした。面白いよね、木村さん。
あと、岡崎紗絵さんの「感じ悪い意識高い系女性」も上手すぎて「マンガかよ!」と。
近年の東野さんの作品は「人情寄り」のものが多くて、今回も、「悪者」をつくりたくなかったのか、「えっ、その経緯ではさすがにインターネット正義マンも手出しできないのでは」というのが四半世紀以上ネット民をやっていて、それなりに叩かれた経験もある僕の印象なのです。
東野さんくらいの大物になると、ネットでの不快な経験も僕が高尾山としたらエベレスト級なのでしょうけど。
「マジシャン」という属性を活かしているかというと、事件の解決のため、というよりは、解決編の舞台演出などには役立っている、という印象でした(というか、あの舞台の「仕込み」をわざわざやっている姿を想像すると、「お兄さん殺されたのに!」とは思う)。
これ、神尾さんたちが介入しなくても、そんな精緻な事件じゃないので、警察が解決していただろうし。
あれこれ揚げ足取りをしてはみたのですが、総じていえば、「福山雅治さんか有村架純さん、あるいは、その両方のファンであれば、『悪ノリしすぎだろ!』とかツッコミながら、2時間それなりに楽しめるエンターテインメント作品ですし、制作側も、「そういう映画」に振り切ったのでしょう。
『国宝』や『鬼滅の刃』のような大作と鑑賞料金が同じ、というのは、なんだか不公平な気持ちになるのですが、「ちょっと時間が空いたときに、気分転換に観られる映画」は世の中には必要です。
3時間超えの映画となると、観る側にもそれなりに準備と覚悟が求められます。僕くらいの年齢になると、「朝から水分控えておかなきゃ」とか考えてしまう人も多いはず。
「映画館で観ると微妙だけど配信で観れば得した気分になれる程度」とか僕もよく書いてしまうのですが、スマートフォンが気になって集中できない時代の映画料金は「2時間スマホから離れることができる環境」を買うものなのかもしれません。
正直、謎解きミステリ、としては「意外な結末でしょ、とドヤ顔でありきたりな展開を見せられて苦笑」だったのですが、福山雅治さんと有村架純さん(あと木村昴さんと岡崎紗絵さん)を観る映画としては、たぶん、これで必要十分条件を満たしているのだと思います。
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