琥珀色の戯言

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【読書感想】女王、エリザベスの治世 先進国の王政記 ☆☆☆


内容紹介
日本の皇室と同様、ロイヤルファミリーの動向が国民の注目を集めるイギリス。第二次大戦後から玉座を守り続けてきた、現代史を体現する女王は何をし、何を見てきたのか? いま、王室から歴史の奔流を見つめ直す!!


ロンドンオリンピックも終わり、この本を御紹介するには、やや機を逸してしまった感もありますが、去年はけっこうイギリスが話題になりました。
オリンピックの開会式や閉会式のイベントをみると、やっぱり歴史がある国なんだなあ、と感心してしまうイギリス。
(もちろん、その「歴史」には、必ずしも良いものばかりとは限らないとしても)


昨年は、エリザベス2世の即位60周年にあたり、6月には記念イベントも行われたのだそうです。
60年といえば、僕の世代にとっては記憶に残っている昭和天皇の在位期間と、ほとんど同じくらいになってきているのですね。
イギリスは、僕が生まれたときから今まで、ずっと「エリザベス2世の治世」ということになります。
エリザベス2世のお父さんは、映画『英国王のスピーチ』の主人公であった、ジョージ6世。


この新書「王室のこと」が書かれているのかと思いきや、半分、あるいはそれ以上は「第二次世界大戦後のイギリス史」なんですよね。
もちろん、王室というのは政治とは切り離せない存在ではありますが、この新書のなかにも「王室外交」や「イギリス連邦諸国への顔見世」以外には、「エリザベス2世が直接歴史を変えたこと」については、ほとんど書かれていません。
「君臨すれど統治せず」というイギリスにおいては、それこそがまさに「ロイヤルファミリーの身の処し方」なのだということでしょう。
その一方で、「スキャンダルの震源地」としての王室の価値(?)は高まっているのです。

 ケニアでジョージ6世逝去の報に接したとき、エリザベスとその夫のエディンバラ公は、巨大なイチジクの木の上に建てられた小屋で、野生の動物の姿を撮影していたらしい。その結果、「王女として木に登り、女王として木から下りてきた唯一の女性」と評されたという。

1952年に王位を継承したエリザベス2世なのですが、第二次世界大戦後のイギリスは、大戦のダメージや相次ぐ植民地の独立、アメリカとソ連が2つの大国となったことによる、国際的な影響力の低下、そして、国内では経済の停滞で、厳しい時代を迎えることになります。アイルランドをめぐる闘争も、悩みの種でした。


「鉄の女」マーガレット・サッチャー首相の「自助」をめざす改革により、イギリスは復活を遂げてくるのですが、この新書では、エリザベス2世とサッチャー首相のこんなエピソードが紹介されています。

 歴史家のアントニー・サンプソンはこんなことを書いている。

 女王とミセス・サッチャーとの毎週一度の会談は、お互い同じ年齢なので、少なくとも一人の人物には恐ろしく思われた。すなわち、女王のほうが普通の人間に見えて、首相のほうが女王に見えたのだ。

 実際、この会談中、サッチャー首相がもっぱらしゃべり続け、それが2時間に及ぶものだから、女王もうんざりした表情を見せたという。

イギリスの首相は、週に1回、国王との面談を行うことになっているのだそうです。
これはあくまでも「主観」+「伝聞」なので、女王が本当にうんざりしていたかどうかはわかりませんが、女王の前でも物怖じしないサッチャー首相の面目躍如というエピソードでもありますね。
それと同時に、イギリス国王は、「王」でありながら、その会話を自分からは打ち切れない立場だったこともわかります。


この新書を読んでいると、現在のイギリス王室というのは、「政治的な影響力」はほとんどなく、「王室」という大企業をいかに経営し、次代に受け継いでいくか、という状況のように思われます。

 エリザベス女王は世界一の金持ちであるとしばしば言われるが、それがいったいどの程度のものなのかははっきりしない。2011年に出たアメリカの雑誌『フォーブス』の記事によれば、エリザベス女王の個人資産は5億ドル、王室が所有する不動産の価値は100億ドルとされている。ただしもちろんこれに、バッキンガム宮殿を初めとする国有財産、あるいは王冠、美術工芸品などを加えれば、この数字はさらに大きなものとなるだろう。ただそれにしても、果たして女王が世界一の金持ちと言えるかどうかは微妙だろう。むしろ、同じ時期に『ウォール・ストリート・ジャーナル』に載った記事のほうが、ウィットに富んでいるのと同時に実態を言い当てているのではないか。すなわち、イギリス王室は「85歳の女性CEOによって経営される非上場の株式会社」というものである。

実際、資産は大きいものの、そう簡単に売り捌けるようなものばかりではなく、「維持費」もすごくかかるわけです。
けっして、「経営」はラクじゃない。
そのうえ、「生まれたときから大資産家」である王室へは、批判的な見方をする人も少なくない。


そんなに目新しい知見が書かれているわけではないのですが、「第二次世界大戦後のイギリスと王室」を概観するにはちょうど良い新書だと思います。
それにしても、王室の人たちの「恋愛スキャンダル」がこんなにおおっぴらにされ続けているというのは、日本の皇室を考えると、ちょっと信じ難いものではありますね。
「そうやって国民に話題を提供するのも王室の役割」なのだろうか……

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