- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/01
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犯罪者や暗殺者たちが住み、国家権力さえ及ばぬ無法地帯である〈途鎖国〉。特殊能力を持つ〈在色者〉たちがこの地の山深く集うとき、創造と破壊、歓喜と惨劇の幕が切って落とされる――極悪人たちの狂乱の宴、壮大なダーク・ファンタジーをお楽しみください。
「在色者」という特殊能力者たちによるバトルロワイヤル!
読んでいて、『光の帝国 常野物語』を思いだしてしまいました。
恩田さん、相変わらず「超能力モノ」好きなんだなあ、って。
この小説、「なんだかわからないけど、とにかくすごい力」をもった「在色者」たちによる、サイキック・バトル。
けっこうグロテスクな殺戮描写も満載で、「ブラック恩田陸」の本領発揮、といったところです。
いやほんと、とにかく人が死んでしまう。主要登場人物以外は、これでもかっ!とばかりに死にます。
鹿のガラス玉のような目、剥製のような身体が有無を言わさず、ちり紙を丸めるように凄まじい力で締めつけられていく光景に耐えられなかったのだ。
骨の折れるなんとも気味の悪い音が耳から離れない。思わず吐き気がこみ上げてきた。
善法とジュンは、青ざめた顔でその光景を眺めている。
男の子は顔色ひとつ変えるでもなく、宙に浮かんだ大小二つの鹿ボールを見上げていた。それは鹿革のボールにしか見えなかった。が、隅っこに蹄の裏側が見えている。
「鹿ボール」ですよまったく!
蹄の話の、「残酷は細部に宿る」という気色悪さなど、たまりません。
いや、とりあえず御紹介するのは「鹿ボール」くらいにとどめておいたのですけど……
すごい能力を持った人たちと、何か「隠された能力」を持っているらしい、主人公・実邦。
こんなサイキックシリアルキラーたちが戦ったら、どうなるのだろう?
誰が生き残るのだろうか?
最後の敵の正体は?
上下巻の、かなり長い作品なのですが、先が気になって、どんどん読み進めてしまいました。
ところが、最後は……うーん、これもまた、恩田陸クオリティというか、シリーズ化するつもりなのかもしれませんが……
なんだか「旅の仲間」だけで終わってしまった『ロード・オブ・ザ・リング』みたいになってしまっている感じです。
せっかくこれだけのタレントたちを集めたんだから、彼らをちゃんと戦わせてほしいなあ。
「これで終わり? 結局、何だったの?」というのと「プロセスは楽しかったから、これはこれでアリなのかな……」というのと。
これでも「恩田作品のなかでは、『結末投げっぱなし』じゃないほう」ではあるのかもしれませんけど。
個人的には「ブラック常野物語」という印象で、「面白いんだけど、これで完結なんだとしたら、物足りない」と感じました。
これだけの分量を一気読みさせられる作家というのは、なかなかいないとは思うのですけどね。