- 作者: 武豊
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/10/02
- メディア: 新書
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内容紹介
ダービー5勝、通算3500勝超えと前人未踏の記録を打ち立ててきた騎手・武豊。
数々の栄光の陰には、どんなプレッシャーにも立ちむかう勝負師として一流の考え方、身の処し方がある。
栄光、そしてスランプ、再起・・・・・・どんな場面でも自分を貫く武豊のスタイルは働く男たちにも大きなヒントになる。
キズナでダービーを制覇し、その競馬界での存在感をあらためて見せつけている武豊騎手の新刊ということで、けっこう楽しみにしていました。
でもこれ、もともと『週刊大衆』に連載されていた『勝負師の作法』というコラムをまとめたものだったのですね。
週刊誌のコラムらしく、「その週に行われるレースに関して、武豊騎手が思い出のレースを振り返る」というような内容がほとんどです。
けっこう字も大きいし、あのダービー制覇による「武豊復活ブーム」にあやかってつくられた本、という感じもします。
長年交流がある伊集院静さんとの対談も面白かったのですが、残念ながら、2012年末に行われたもので、キズナのダービー制覇の話は出てきません。
あの「伝説の出遅れ」となった桜花賞のシャダイカグラは、「本当に単なる出遅れだった」という話などは、僕ははじめて知りました。
阪神競馬場の1600mのレースで、絶対的に不利といわれる大外枠での発走をカバーするため、わざと出遅れて馬に内側を走らせることにしたのではないか、と言われつづけているんですよね、あの桜花賞は。
でもまあ、それを「本当は単なる出遅れだった」となかなか言わないところもまた、武豊の凄さではあります。
そういう「伝説」を身にまとうことによって、少しでも相手を気後れさせられれば、という。
僕も武豊騎手の全盛期は、「あんな良い馬に乗っているんだから、たくさん勝てて当然だろ」と思っていました。
しかしながら、武豊騎手への一極集中が解消されてみると「一番人気で、涼しい顔をして勝つ」というのは、そんなに簡単なことじゃないんだな、ということが身に染みました。
競馬って、そんなに甘いものじゃない。
武豊騎手の場合は「武豊が乗るから」ということで人気になった分も加味すると、「そんなに実力がないのに、人気になっていた馬」もいたわけですし。
とまあ、マイナス面の話ばかりしてしまったのですが、競馬ファンにとっては、やはり、武豊騎手の話には、聞き逃せないところがたくさんあるのです。
あのオグリキャップの「伝説のラストラン」となった有馬記念の勝因を、武豊騎手は、こんなふうに語っています。
ちなみに、あのレースのパドックでオグリに騎乗したときの感触は「『勝たせてあげたい』けれども、『勝てる』とまでは思えないデキ」だったそうです。
なぜ、オグリは勝てたのか?
レース後、いろんな人が、さまざまな角度から分析をしていました。
運に恵まれたから。
展開が向いていたから。
なかには、「神様のプレゼントだろう」という方までいました。
どれも正解なんだと思います。でも、僕はこう思っています。
――オグリキャップだったから。
そして、それが正解のような気がしています。
凱旋門賞、キズナは4着でした。
世界の強豪を相手にしての成績ですから、たいしたものです。
武豊騎手は「来年もまたこの馬で来たいですね」とレース後のインタビューに答えていました。
勝って奢らず、負けて落ち込まず。
あらためて、すごい人だなあ、と最近思うようになりました。
まあ、馬券を買っていたりすると「レースに負けたのに、そんな他人事みたいなコメントするなよ!」って言いたくなることもあるんですけどね。