琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】はちま起稿 月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ ☆☆☆☆


はちま起稿  月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ

はちま起稿 月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ


Kindle版もあります。僕はこちらで読みました。

はちま起稿 月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ

はちま起稿 月間1億2000万回読まれるまとめブロガーの素顔とノウハウ

内容紹介
月間1億2000万PVブロガーの正体とノウハウとは!?


人気ゲームブロガーの実体とテクニックを初公開。
どういった人間が記事を書いていたのか、
アクセス数を稼ぐテクニック、炎上記事の真実など、
表に出なかった意外な事実が明らかに!
「はちま起稿」のPV数、情報ソース巡回ルートなど、ゲーム業界人も必見だ。


はじめに
第1章 はちま起稿と清水鉄平
第2章 元管理人が教えるすぐに役立つブログ運営のノウハウ
第3章 元管理人って何者ですか?まじめに答える清水鉄平のQ&A
第4章 炎上の裏側 元管理人の雑記帳
あとがき


 率直に言うと、僕はあまり『はちま起稿』に好感を抱いていなくて、この本も興味本位というか、興味半分、あら探し目的半分くらいの気持ちで手にとったのです(というか、Kindleで読みました)。

 僕が立ち上げた「はちま起稿」は、ゲームを中心にしたエンターテインメント情報を扱うまとめブログです。「ゲーム系」とカテゴライズされるブログの中では日本最大級のアクセス数を誇り、2014年2月の月間ページビュー数は、およそ1億2000万回(livedoor Blogの測定値)。日いよってばらつきはあるものの、1日あたり380〜400万ページは読まれている計算になります。
 2007年6月に個人ブログとしてはじめて以来、はちま起稿へのアクセス数は伸び続けており、今では掲載した記事が他のニュースメディアに取り上げられたり、Twitterで爆発的に拡散したりと、はじめた頃には想像もつかなかったほど大きな影響力を持つようになりました。
 しかし、前述のとおり、ブログや僕の評判は今もってよろしくない。これまで好き勝手に記事を書いてきたし、スキャンダルが多いブログだったので憎まれるのもわかります。

 ステマステルスマーケティング)、ねつ造、釣りタイトル、「アクセス乞食」など、僕自身もあまり良いイメージはなかったんですよ、『はちま起稿』には。
 だからといって、「絶対に観ない」と決めているほど嫌っているわけでもないのですけどね。
 面白い記事もある、というか、『2ちゃんねる』からの転載が禁止されてからのほうが、よく見ているような気もします。


 そんな僕が、なんだかこの本を読んでいるうちに、不思議な気分になってきたのです。
 ああ、こういう話、どこかで見たことがある……


 そうか、これは『ソーシャル・ネットワーク』だ……
 Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグを描いた、デヴィッド・フィンチャー監督作品。
 僕は、この映画、大好きなんですよ。
 もちろん、『はちま起稿』は、Faceebookほどの巨額の富は生み出してはいませんし、世の中へのインパクトや起こしたトラブルのスケールも、Facebookに比べたら小さなものです。
 でも、北海道の普通の高校生だった清水さん(『はちま起稿』の生みの親であり、この本の著者です)が、高校に通っているときに、ふとしたきっかけてはじめた個人ブログ運営にのめりこんでいき、それが「仕事」になっていく過程は、なんだかすごくよく似ているなあ、と。
 それが少なくないお金を生み出し、良くも悪くも、人生を大きく揺さぶってしまった、ということも。


 テレビゲームと、文章を書くことが大好きだった高校生がはじめた「ゲーム系個人ブログ」。
 開設当初は、1日あたり10ユニークユーザー程度だったそうです。
 それが、少しずつ話題になり、大手ニュースサイトに紹介されたりもして、急激に大勢の人に読まれるようになっていきます。
 ブログを通じて、かなりの収益をあげられるようにもなりました(この本には『はちま起稿』を通じて売れたゲームの「ベスト5」が紹介されているのですが、こんなに売れるものなのかと驚きました)。


 あるイベントに参加したことがきっかけで、清水さんは、大学進学よりも「東京でブロガーとして生活すること」を選択するのです。
 いやまあほんと、親御さんもよく許してくれたなあ、という話ではあるのですけど。


 この本のなかで、清水さんは東京に出てきてからのことを、こんなふうに回想しています。

 2010年4月から2011年9月まで、僕には身の回りの記憶がほとんどありません。上京してブログに専念する環境を得たことで、まるで取り憑かれたようにはちま起稿に打ち込むようになり、ほぼすべての時間を部屋で過ごしていたからです。


 目が覚めたらすぐにPCの前に座り、2ちゃんねるで面白そうなネタを探し、記事を書いたらすぐまた次のネタを探す。
 食事にかける時間ももったいないからと、近所の弁当屋にダッシュで買いにいくか出前を取るかの2択。ベッドで寝ると熟睡してしまうからとソファや絨毯の上で眠り、風邪を引いて熱が出たら布団をかぶって更新。
 1日が終わるのは朝のニュースをチェックした早朝4時頃。枕元にPCを置いて寝て、午前9時に起きてまたPCに向かう……そんなブラック企業も真っ青なブログ漬けの生活を1日も休むことなく続けていたのです。

 今となっては笑い話ですが、この頃の僕はブログ漬けの生活を送っていたせいで、文章は書けるけど他人と会話するのが苦手なコミュ障(コミュニケーション障害)になっていたのです。
 外に出かけてもブログの更新が気になり、ネットのつながらない店は即退店。当時はテザリングのような便利な機能がなく、通信網も今ほど充実していなかったため、ネットがつながらない場所につれていかれると凄まじいストレスを感じるようになっていました。


 『はちま起稿』は、さまざまな手段でブログ更新を効率化していたそうなのですが、それを「休むため」に利用したわけでなく、「ひたすら更新頻度を増やすこと」にこだわっていたのです。
 更新し続けないと、人が来なくなってしまうのではないか?という恐怖にかられて。
 たぶん、これを読んでいる多くの人は「それって病気じゃない?」と言いたくなると思うのですが、僕自身もこうして長年ブログを続けていますし、ここまでではなくても「とにかく今日も更新しなきゃ……」みたいな義務感に追い立てられていた時期があったのですよね。
 こういうのって、ブログをやっていた人間にしかわからないだろうし、みんなにわかってもらう必要もないのだけれども。


 「ゲームと文章を書くことが好きだった普通の高校生」が、時代の流れに乗り、トントン拍子に、コントロールできないくらいの「巨大な影響力とお金を生み出すもの」を手に入れてしまったら……


 信頼していた人の裏切りや、お金をめぐるトラブル、ステマ・捏造などの騒動、ネットでの個人情報の拡散……
 もし、『はちま起稿』がこんなに成功していなければ、清水さんは、当初の人生設計どおり、公務員にでもなって、それなりに安定した人生をおくれていたのかもしれません。
 「後悔はしていない」と仰っていますが、自分で育てた「怪物」に追いまくられていたようにも見えます。
 『2ちゃんねる』からの転載禁止は『はちま起稿』にとって大きな転機になりましたが、もしあのままの運営が続いていたら、清水さんはもっと徹底的に傷つけられていたかもしれないな、とも僕は思うのです。
 ブログで食べていくというのは、けっして簡単なことじゃない。


 この本のなかで、「嫌われる理由」について、清水さんはこう分析しています。

 はちま起稿はなぜネットユーザーから徹底的に嫌われるのか。熱狂的なファンの多いゲーム情報を扱っていたこと、誤報を載せてしまったことなど、要因はいろいろと考えられますが、根本的な理由として「顔が見える」ことにあると僕は考えています。


 顔が見えるとは、管理人の主張が見えるということです。はちま起稿の記事には僕と記者の意見や主張が盛り込まれていたため、読者は書き手の人となりをイメージできるわけです。
 たとえば、はちま起稿と他のまとめブログに同じ記事が載ったとして、それがユーザーの怒りを買う内容だったとします。もし叩くとするなら、管理人の顔が見えるはちま起稿がターゲットになるのは当然のことです。

 この件に関しては、「けっこう挑発的な書き方をしていれば、しょうがないよね……」と思うところもありますし、「ネットユーザーっていうのは、『社会の巨悪』よりも、自分の批判の声が確実に届き、傷つけやすい、目の前のブロガーに罵声を浴びせがちなんだよなあ」と共感してしまうところもあるのです。
 

 はちま起稿を嫌う人のなかには、ブログやTwitterで積極的にはちま起稿の批判を発信する人たちが存在します。しかし、不思議なことにそういう人たちはこちらへ直接メールで意見をしてくることはありません。
 ほとんどが自分が運営するブログで他のブログの批判記事を書き、ページビューやブックマークを殖やしたり、批判ツイートをしてRTを増やそうとしているように見受けられます。おそらく自分の共感者を増やしたいのでしょう。


 その様子を見て僕はこう考えました。「ゲーム」という人気ジャンルを褒めるだけではなく、批判もすることでその知名度を上げていったはちま起稿のように、彼らは「はちま起稿」という有名ブログを批判することで自分の知名度を上げようとする人たちなのではないかと。
 はちま起稿も直接ゲームメーカーにゲームの感想をメールで送ったりしたことはありません。ブログでゲームの感想記事を書き、ページビューや共感者を増やそうとしていました。悪い言い方をすれば「ゲームをダシに自分の知名度を高めた」のです。
 ゲームへの深い愛情はありますが、そのように批判されても否定はできません。僕もはちま起稿アンチたちと同じで、彼らもまた僕と同じなのです。

 清水さんは、ネットユーザーの「共通の敵」であり、「仲間」でもある。
 ちょっとしたきっかけで、同じような人生を歩んでいたかもしれないブロガーって、たくさんいたはずなんですよ。
 でも、だからこそ、複雑な感情を持たれやすいのかもしれません。
「なぜ、あいつばっかり」って。


 この本を読んでいると「ああ、これはすごくつらい時期もあったんだな……」っていうのも、伝わってくるんですよね。


 冒頭で、清水さんは、こう宣言しています。

 そしてなにより、読者のために1つ約束をします。


「載せられない話は書かない。その代わり書いたことはすべて事実」


 「万人向け」ではないのですが、「ネットに自分の居場所を探してしまう人」にとっては、考えさせられるところが多い本だと思います。
 

アクセスカウンター