琥珀色の戯言

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【読書感想】二塁手革命 ☆☆☆☆


二塁手革命 (光文社新書)

二塁手革命 (光文社新書)

内容紹介
ヒットをアウトにする守備範囲、超シンプル打法で安打量産!
こんなにワクワクする選手、見たことない!!
2年連続ゴールデングラブ賞受賞、メジャーも惚れた“理想形”のグラブさばき


プロ入団1年目から頭角を現し、13年と14年は2年連続でゴールデングラブ賞を獲得。今や日本を代表する二塁手となり、メジャーも驚かせた男、菊池涼介。ライト前と言っていいほど誰よりも深い位置で守るが、打ち立てた補殺の日本記録を自ら更新するほどの確実性。広角に打ち分け、時には悪玉も打ってヒットを量産し、身長171㎝ながら同じく2年連続で二桁本塁打を記録した大胆不敵なバッティング。いったい菊池は試合中に何を考え、プレーしているのか? 野球観からプライベートまで素顔を披露した〝規格外〟の一冊!


 菊池、本出したのか!
 書店で見かけ、嬉しくなってしまって即買いしました。
 目次に「将来のメジャーリーグ移籍はあるか?」というのを見つけたときには、「そのページ読むのイヤだな……」とは思いましたけど。
 一昨年、セカンドの捕殺日本記録を樹立し、その翌年には、自らの記録を更新。
 守備範囲の広さに、難しい体勢から繰り出される正確な送球やグラブトス。
 一昨年は「守備だけでも華がある選手だなあ」という感じだったのですが、去年は打撃にも開眼し、3割に二桁ホームランも達成しています。
 明るく、ポジティブなキャラクターで、チャンスにも強い。
 いまや、ピッチャー・前田健太、センター・丸とともに、チームの顔になりました。
 どこまで行くんだ、菊池涼介


 一昨年、菊池選手がセカンドのレギュラーを獲得したのは、東出選手が怪我をしたからで、入団時の「本職」は、ショートだったんですよね。
 にもかかわらず、生まれたときからセカンドを守っていたかのような、すごいプレーの数々。
 ほんと、カープの内野って、カープファンにとっては、右(セカンド・菊池方面)に飛んでくれれば天国、左(ショートとサード、田中・梵・堂林方面)に打球が行くと、じご……いや、かなり、ハラハラさせられてしまいます。


 そんな菊池選手が、自身の野球観やこれまでの人生について語ったのが、この新書です。
 アクロバッティングなスーパープレーが話題になりがちな菊池選手ですが、本人は野球に対して至って真面目で、基本をつねに意識しているそうです。

 まず、守備の際に最も大切にしていることは「最後まで追う」ということ。僕は、これができるかできないかの見極めをハッキリさせている。その見極めこそが、皆さんに驚いてもらえるようなプレーにつながっているのだと思う(自分では全部同じプレーだと思っている)。
 最後まで追う。そして、抜けてから初めて諦める。そうしないと絶対に悔いが残る。さらにピッチャーにも申し訳ない。
 自分の中で「捕れる」と思った打球は絶対に諦めない。いわゆる“自分のテリトリー”に入った打球は、とにかく追うことを心がける。逆に、完全なヒットの打球は追わないと決めている。
 だから、「これ、どうかな?」と迷ったりする打球がない。常に追うか追わないかの二択。これは中途半端をなくすためだ。

「捕れたかもしれない」という機会はなるべく少なくしたい。この後悔だけは守備をやっていて最も味わいたくないものだ。この思いは幼い頃からずっと同じだった。
 追えると判断したものは最後まで諦めずに追う。これを積み重ねれば自然と守備は上手くなり、誰でも成長できると思う。逆に言うと、守備が上手くなりたいのであれば、どんどんボールを追って守備機会を増やさなければダメだ。
「最後まで追う」は、僕の守備において全てに優先するポイントだ。


 菊池選手の野球や生活についての話を読んでいて感じるのは、物事を「シンプル」「ポジティブ」に考える習慣を持った人なのだな、ということです。
 この「捕れそうなものは、最後まで全力で追う」ことを繰り返していくうちに、少しずつ守備範囲は広がっていくし、プレーの精度も向上していきます。
 「野生の勘」みたいに見られることも多いけれど、守備の際に相手の打者やカウントによって細かく守備位置を変える、というようなポジショニングの工夫もあるし、野球中継では目立たないプレーなのですが、平凡な内野ゴロの際もファーストのバックアップをきっちりやることを心がけているそうです。
 まあ、そういう真面目なところに感心しつつも、石井啄朗コーチからは「『菊池は基本ができていないが応用はできる』とよく言われていた」なんて話を聞くと、「菊池らしい!」なんて、ちょっと嬉しくなってしまうんですけどね。


 菊池選手は、人間関係においてもすごく積極的で、チームの若手選手や外国人選手にも気さくに声をかけているそうです。
 それによって、チームの雰囲気が良くなってくれれば、と。
 この本には「真面目な堂林選手」や「慕ってくれる鈴木誠也選手」などの若手選手のエピソードもたくさん出てくるんですよね。

 堂林はかなり真面目で考え込むタイプ。僕とは全く違うタイプで、
「今日も打てませんでした。どうすれば打てますか?」
 と打てない日は落ち込んでいる。そういう時は、
「考え過ぎだよ。明日、ホームラン4本打てばいいんだよ」
 みたいなことを僕は言う。

 先日も鈴木誠也に聞かれた。
「バントを教えてください」
 そこで僕は、
「バットに当てろ!」
 と答えた。鈴木はあまり理解できていないようだったが、これしかないと思う。悩んでいる選手はみんな余計なことを考え過ぎではないか。それに、ランナーを助けないといけないと思い込むのもよくない。
 逆に、ボールを転がしさえすればあとはランナーの側が助けてくれると思ったほうがいい。それくらいに考えれば、肩の力が抜ける。


 後輩たちは、みんな真剣に悩んでいるのに……と言いたいところなのですが、もうけっこう長い付き合いみたいですし、こういう「菊池先輩からの、気持ちがラクになるひとこと」を、後輩たちも求めているのかな、という気もするのです。
 もちろん、技術面でクリアすべき問題というのはあるのだろうけれど、こういう先輩が、一人いるとありがたいよなあ。

 僕はアドバイスする時、何かを教えたりはしない。そうではなく、相手の気分を楽にさせるほうが意味があると思うから。相手は後輩だが、プロ野球選手だ。技術もあり、色々な考え方を持っている。


 菊池選手は技術だけではなく、メンタルを非常に重視しているのです。
 それも、「なるべくリラックスしてプレーすること」。
 2014年のクライマックスシリーズで、1番打者として起用された際、「1番打者の役割」を意識しすぎてしまった、と反省しています。
 菊池選手のような「野生の勘でプレーしているようにみえる選手」でも、打席に入る順番が変わっただけで、こんなに意識し、動揺してしまうものなのか、と驚きました。
 もしかしたら、気にしやすいところがあるからこそ、「リラックスすること」を強く意識しているのかもしれませんね。


 また、カープというチームの最近の成績や戦い方についても、第6章の「なぜ優勝できなかったのか?」で、率直な考えを述べています。

 チームでは、全員でいつも「勝とう」と言ってはいる。だから、チームが一致団結していないとまでは言わない。しかし、勝つために準備して、練習から本気で取り組めているかどうか。準備がしっかりできていれば、一人一人の心にも、チーム全体の雰囲気にも余裕が生まれてくる。
 例えばチャンスで打順が回ってきた人が、「どうすればいいか?」とその場で考え過ぎて焦ってしまうことがある。これでは遅い。いつもの力が発揮できるわけがない。
 試合前から、チャンスでの打席について本気で意識していれば、チャンスに向けてどのような準備をし、そして本番でどのように打てばいいかが分かる。本番でいつも以上に考えてしまっては、その時点で負けだ。普段からの準備が足りていない。逆に、巨人、阪神の2チームは全員がしっかりした意識を持って準備をしている。
 特に巨人とはその差が大きいと感じた。巨人の選手は確実に勝負所が分かっていて、そこで一番の力が発揮できるように準備している。だから、後半戦で少し負けても余裕がある。焦っていない。


 チャンスは作るものの、そこで「1本のタイムリー」が出ないカープの戦いぶりをみていると、こういうことなのだろうな、と考えずにはいられません。
 でもなあ、カープの場合、巨人を過剰に意識しすぎちゃっている、というのもあるんでしょうけどね……DeNAやヤクルトの巨人との戦いぶりをみていると、巨人ってそんなに強いのかな?って思うことも多いので。


 カープファンとしては、ずっとカープを引っ張っていてほしい、というのと、メジャーリーグで、身体の大きくない菊池が「二塁手革命」を起こすのを観てみたい、という、両方の気持ちがあるんですよ。
 守備でもワクワクできる選手って、めったにいないし(内野ゴロが三塁側に飛んだら、それはそれでドキドキ(というか、胃がキリキリ)できるのがカープ内野陣ではありますが)。


 ただ、もしメジャーに行くとしても、その前に一度は、カープファンと優勝の美酒を分かち合ってほしい。
 菊池選手、お願いします!



 ……というエントリを「鯉のぼりの日」のために準備していたのですが、優勝候補といわれた今年のカープの現状は……
 世の中、うまくいかないものですね……でも、まだまだこれから。頼むよ菊池!

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