- 作者: 小川孔輔
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/01/30
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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内容紹介
ぐらつく、外食の雄・マクドナルド。
10年以上にわたってマクドナルドを追いかけてきた経営学者が、
藤田田・原田泳幸両氏の戦略をレビューするとともに業績不振の真の原因に迫る。
<おもな内容>
第1章 迷走するマクドナルド
第2章 マクドナルドはどう誕生し、世界最大の外食チェーンに成長したのか
第3章 マクドナルドのビジネスモデル
第4章 原田マクドナルドの経営改革
第5章 原田マクドナルドの戦略転換
第6章 悪夢の3年:客はどこへ消えたのか?
第7章 マクドナルドに未来はあるのか?
内容(「BOOK」データベースより)
2011年の最高益から170億円の赤字転落へ。原田泳幸が陥った戦略の罠。ぐらつく、外食の雄。経営学者が業績不振の真の原因に迫る。
業績の悪化が続き、「安全性」を揺るがす事件が伝えられているマクドナルド。
これまでは「外食産業の雄」として繁栄を謳歌していたのに、なぜ、こうなってしまったのか?
僕の実感としては、「一時期よりも明らかにお客さんの数が減っているけれども、それでも、フードコートなどで他の店と並んでいると、『強い』というか、根強い人気がある」のですよね。
息子も、すぐに「マクドナルドに行きたい!」と言い出すので、ファストフードじゃないものが食べたい父親としてはつらいところです。
1971年に創業し、東京の銀座三越に1号店を出店した日本のマクドナルドは、その後30年間、創業者・藤田田氏のもとで成長を続けた。1995年以降は、急激な円高を利してディスカウント路線をひた走り、それまで210円だったハンバーガーの価格を130円に引き下げる。その結果、競合のロッテリアやモスバーガーを圧倒し、1994年に48%だったシェアを1998年には61%にまで拡大、マクドナルドは繁栄を謳歌しているように見えた。
「100円バーガー」というのは、僕にとってもけっこう衝撃でした。
だって、菓子パンとハンバーガーが同じ値段、あるいは、ハンバーガーのほうが安いんですよ、中にハンバーグが入っているのに。
アンパンマンもびっくり、です。
その「安売り戦略」にも限界がありました。
ところが、2001年JASDAQに株式上場後の2年間、減収減益が続く。
2004年、米国本社の意向を受けて、業績が低迷する日本マクドナルドのCEOに就任したのは、アップルの日本法人の経営改革で成功を収めた原田泳幸氏だった。原田改革により、マクドナルドの業績はV字回復を果たし、5期連続で増収(2004〜2008年)、2011年には過去最高を記録した。
しかし、2012年春からは一転して13ヵ月連続で既存店の売上がマイナスとなった。2013年8月、原田氏は日本マクドナルドの社長を退任し、後継者として、カナダ人のサラ・カサノバ氏が就任している。
著者は、日本のマクドナルドを牽引してきた、藤田田・原田泳幸というふたりのトップの手法とその成果、問題点について、具体的なデータをみながら検証しています。
僕の記憶のなかでは、ずっと右肩上がりだったような気がするマクドナルドなのですが、これまでも、けっして順風満帆ではなかったのです。
藤田社長のもとで、日本のマクドナルドは、(アメリカで主体だった郊外型ではなく)都心型で徒歩客を中心としており、フランチャイズ店よりも直営店が多く、社員への「温情主義」の会社として運営されてきました。
最近では、「名ばかり管理職」とか「社員の労働時間の長さ」など、ネガティブな話題でばかり登場するマクドナルドも、最初は、かなり「良い職場」だったのです。
1989年の統計によると、同年齢で比較してマクドナルドの社員の給与水準は、世間一般より2〜3割は高かったのだとか。
マクドナルドの収益源は、ハンバーガーを売ることだけではないのです。
「FC(フランチャイズ)システムを運用することで得られる不動産リース事業」というのが、もうひとつの収入源だったのです。
経理と財務が担当だったソンネボーンは、ハンバーガーの販売事業以外に、財テク投資を考案した。
それが「不動産リース事業モデル」である。巧妙なファイナンスのテクニックを駆使して、マクドナルドを高収益企業に変貌させたのは、あまり目立たない中途入社の財務担当副社長だったのである。
ソンネボーンの戦略は、まず地主を説得して、マクドナルドが出店候補の土地を借りるか、買い取ることから始まる。マクドナルドがその土地に店舗を建てて、フランチャイジーに土地付きで建物を転貸する。
賃料は歩合制で、FC売上高の8.5%である。これに、当初の1.9%から3%に値上げされたロイヤルティが上乗せされる。合計では毎月、売上の11.5%が本部の口座に入金される仕組みになっている。
マクドナルド(子会社の「フランチャイズ不動産」)が土地を貸す場合(実際には再リリース)は、家賃・地代に不動産仲介手数料として40%上乗せした。ただし、売上歩合(8.5%)がこれを上回る場合は、固定家賃ではなく、高額な賃借料のほうを請求できるようにしていた。
もともと、アメリカのマクドナルドはこの「FCシステムからの不動産収入重視」だったのです。
藤田社長時代には、直営店が多かったのだけれども、原田社長は「直営店のFC化」をすすめていきました。
また、日本独自の商品(「てりやきマックバーガー」や「チキンタツタ」など)の開発も滞り、「日本発」の新商品はあまりみられなくなってきました。
「経営効率化」と「FC化」という「劇薬」によって、原田マクドナルドは「V字回復」を果たしましたが、それは「マクドナルドの強み」を失い、タコが自分の足を食べて餓えをしのぐような改革でもありました。
2010年以降、大量の店舗閉鎖で、マクドナルドを利用したくてもできなくなる消費者が生まれた。
マクドナルドの店舗は、2009年から2013年までの5年間で545店舗減少している。店舗の減少率は約15%である。
マクドナルドを利用したくても、近くに店舗を見つけることができなくなった人たちはどうなってしまったのだろうか。このタイプのマック難民をタイプ1の「行けない難民」と呼ぶことにしよう。
「行けない難民」には、本来の顧客で、昔からのマックファンやファミリーなど、ロイヤリティの高い層が含まれている。藤田時代、お手ごろになったハンバーガーを、地方都市にできたマクドナルドの店に通って食べるようになった顧客層である。
もう1種類のマック難民が、この時期に生まれた。24時間営業やeクーポンの発行、100円マックやプレミアムローストコーヒーによって引き寄せられた顧客たちである。マクドナルドが新たに誘引したのは、価格感度が高いグループであった。あるいは、24時間営業のマクドナルドを利用するようになった、本来ならばあまり好ましくない層の顧客である。
100円マックやコーヒーで長い間店内に居座る彼らを、タイプ2のマック難民「居座り難民」と呼ぶことにしよう。かつてマクドナルド兄弟が、カリフォルニア州の新興住宅街サンバーナディーノの店で遭遇した「騒がしくて迷惑な若者たち」の新しいバリエーションである。この2種類の顧客が、ここで入れ替わってしまったのである。
この本には、マクドナルドの店舗から「プレイランド」が消えていったことが、その一例として紹介されています。
そういえば、僕が大学生くらい、20年前のマクドナルドには、子どもが遊べる「プレイランド」があったんですよね。
今は、ほとんど見かけなくなりました(この本によると、2014年8月時点でのプレイランド併設店は、全マクドナルド店舗の8%だそうです)。
また、著者は、原田時代の後期から、マクドナルドが顧客の喪失を加速させている三つの追加要因をあげています。
(1)価格の引き上げによる「値頃感の喪失」
(2)他の大手飲食チェーンに対する「競争上の劣位」
(3)再成長を始めた「コンビニエンスストアの脅威
(2)については、「商品のクオリティに対する満足度が低い」というふうに考えていただければ。
「安くもないし、美味しくもない、そして、居心地もよくない」
いまのマクドナルドは、そんな「取り柄のない場所」になってしまっているのです。
それでも、僕の息子は大好きなんですけどね、マクドナルド。
ハッピーセットがなくなったら、行かなくなるかもしれないけれど。
著者は、藤田時代、原田時代の双方で、後期に業績が悪化してしまった理由を、こう述べています。
どちらの時代にも共通していたのは、価格水準が商品力に見合わなくなったことである。しかし、顧客に対するサービスも、店舗の清潔度も、ハンバーガーそのもののおいしさにも、抜本的な変革は起こらなかった。結局は、短期的な対応に終始し、長期的な環境変化に対応するチャンスを逃してしまった。
売上高の成長と短期的な利益を求めて、小手先のマーケティング施策に注力しすぎていたツケが、いま回ってきている。
マクドナルドは、この危機から、また、「V字回復」を遂げることができるのでしょうか?
こうやって、周囲が「赤字だ、経営危機だ」と声高に叫ぶことが、「短絡的なマーケティングにばかり頼る経営」に結びついてしまうのではないか、とも思うのですが。