琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
マーケティング発想へ切り替えることで「売らなくても儲かる」仕組みの作り方を詳説。ネスレマクドナルド、ジャパネットたかた…売らないことでV字回復を遂げた企業の意外な戦略とは?身近な具体例からゲーム理論ブルーオーシャン戦略などの基本を学べる入門書。


 最近のマーケティングについて、ひととおり学べる入門書、という感じです。
 僕は門外漢なので、さまざまな企業での実例に、「今はこういうふうになっているのか」と感心しながら読んだのですが、専門的な知識を求めている人や著者のこれまでの本を読んできた人にとっては「どこかで読んだことがある」内容が多いのではないでしょうか。
 

 GUが原宿に商品を売らない次世代型店舗「GUスタイルスタジオ」をオープンしたというので、実際に行ってみた。
「次世代型店舗」という割には、意外と狭い。
 大阪、心斎橋にある超大型店と比べて1/3の面積。でも,品揃えはほぼ同じだという。
 それもそのはず、この店は試着専門の店なのだ。気に入った服はスマホで買う。
 準備は簡単。スマホにGUアプリを入れて、ユニクロのネット販売で使っているIDでログイン。これだけだ。
 早速、店でいい感じのTシャツを見つけた。Tシャツのタグに印刷されたQRコードをアプリで読み取り、その場でアプリから注文。これで決済は終了である。
 翌日、自宅にTシャツが配送された。
 レジに行列してお金を払い、家まで商品を持ち帰る必要はない。


 この方式ならば、店には見本の服だけあればいいので、在庫を置かなくてもいいし、人手も少なくて済みます。
 狭い店内でも、多彩な服を扱うことができる。

 ネット通販が当たり前になる一方で、だからこそ、「実際に商品を確認したい」というニーズも生まれているのです。
 あのAmazonも、リアル店舗を試験的に運営しています。
 
 GUも、これはあくまでも「ひとつの試み」としてやっているようです。
 正直、高級ブランドの何万円もするような服ならともかく、わざわざ店まで足を運んで、試着だけしてネットで注文って、かえってめんどくさいような気もするんですよね。
 後日に受け取るという手間を考えると、その場で持って帰ったほうが手っ取り早いし。

 先日、ユニクロのはじめて行った店で、自動レジというか、商品を大きな箱に入れたら自動的に会計してくれる、というシステムになっていて、これはけっこう便利だな、と思いました。
 現状では、自動レジに慣れていない人がボトルネックになって、かえって時間がかかる、ということもありますが。

 さまざまな業界で、人手不足もあって、「どのくらいまで省人化するのがベストなのか」という試みが行われているのです。
 著者は、一等地の有名デパートが、商品を直接売る店ではなく、顧客に「体験」してもらうためのショールームとして使われるケースが増えていることも紹介しています。
 
 
 2018年の年末に、閉店した青山ブックセンターの跡地にオープンした「文喫(ぶんきつ)」という書店も紹介されています。
 この書店、入店時に「入場料(入店料?)」が必要なのだとか。

 店の入口で1500円+消費税を払うと、バッジが渡され、入店できる。
 店の構造自体は、かつての青山ブックセンターと大きく変わらない。
 しかし、空気感がまったく違う。いい感じになっていた。
 お洒落で、空間的にゆったりとした余裕があるカフェ、といった感じだ。
 ソファー、テーブル、さらに床の間なども用意され、お客は思い思いの姿勢でくつろいで本を読んでいる。Wi-Fiも使えるので、パソコン作業もできる。
 営業時間は朝9時から夜11時まで、本は読み放題。コーヒーは無料で何杯もおかわりし放題。食事もできる。大きなビーフの塊がゴロッと入っているハヤシライスも美味しい。制限時間はなく、本を読みながら飲食ができるので、何時間でも滞在できる。
 店内には3万冊の蔵書がある。新刊だけではない。書店員が目利きした本ばかりだ。
 1冊本を取ると、その下には関連した別の本が出てくる。こうして新たな本との運命の出合いを提供してくれる。気に入った本は買うこともできる。
 読んだ本は戻す必要がない。店内に何ヵ所かある返本台に置いておけばいい。
 いまや、休日には10人以上が入店待ちという人気店である。


 いくら読み放題、コーヒー無料といっても、わざわざ書店にお金を払って入る人がいるのだろうか、と思いますよね。
 読みたいのがマンガだったら、マンガ喫茶もあるし、最近は店内の本を無料でゆっくり読むことができる書店も少なくありません。
 それでも、この「文喫」は人気になっているのです。
 居心地のよさ、というのはもちろんあるのでしょうけど、有料であることによって、新刊書店の試し読みスペースよりも気兼ねなく本を読める、とか、わざわざお金を出してまで利用したい人が集まるので、マナーが良い人が多い、というようなメリットも生じます。
 それでも、こんな業態で儲かるのかな、と疑問になるのですが、著者によると、この「文喫」には、多いときで1日200名が来店し、滞在時間は平均3~4時間。来店客の4割が書籍を購入し、それは通常店舗の4倍になるのだとか。入場料や他の商品の売上も含めると、客単価は通常の書店の3倍。
 都会だからこそ、という気もしますが、収支は取れているそうです。

 今までの常識では「それじゃ、儲からないだろう」と思うようなやり方が、やってみるとけっこううまくいっているのです。
 顧客側も、「所有する」ということにこだわらず、「ふだんから手元に置いておかなくても、必要なときに使えればいい」という人が増えてきているのです。
 そうなると、これまで通り「商品を売るだけ」のビジネスモデルは、縮小していく一方です。

「もう終わりだ。イオンがウチの真横に出店する。あの品揃えには絶対に敵わない……」
 郊外で小さな八百屋さんを経営するヤマモトさんは、頭を抱えていた。
「同じ食料品店の経営者仲間も、近所にイオンができてさ。品揃えを増やして対抗しようと頑張った。でも、しょせん零細店舗。大砲に竹槍で戦うようなもんだよ。客をゴッソリ取られて店をたたんだ。ウチもオレの代で終わりかな」
 あなたは、ヤマモトさんにどうアドバイスするだろうか?


 この問いの答えに興味はあるけれど、自分ですぐに答えは思いつかない。
 そういう人にとっては、この本はけっこう「面白い」のではないかという気がします。
 まあでも、経営コンサルタントの話って、「机上の空論」とか、「うまくいった事例ばかりを採りあげて、強調しすぎ」ではあるのですよね。
 

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