琥珀色の戯言

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【読書感想】知らないではすまされない自衛隊の本当の実力 ☆☆☆


Kindle版もあります。

今こそ知っておきたい
「日本を守る自衛隊」の実力


今、日本を取り巻く国際情勢は、北朝鮮のミサイル問題など、とても安心できる状態ではありません。そんな今だからこそ、多くの人たちに知っておいてほしいテーマがあります。それが「日本を守る自衛隊」です。あなたは自衛隊のことをどれだけ知っているでしょうか。知らないではすまされない自衛隊について、基礎の基礎から解説します。


 僕は子どもの頃、自衛隊が嫌いでした。
 戦後の「平和教育」が盛んだった時代、ということもあったのでしょうし、「自衛隊は軍隊じゃない」と言う大人たちの白々しい言い分になんだか苛立ってしまって。
 みんなが武器を捨てれば、世界は平和になるはずなのに、とか思っていたんですよね。
 今から考えると、自衛隊員たちに、申し訳なかった。
 理想は理想として、世の中は綺麗事だけでは、たぶんうまく回らない。
 いろんなところで出会う自衛隊の人たちは(健診とかで接することもあったのです)、ごくふつうの若者だったりおじさんだったりして、僕にそのキツい訓練のことを苦笑しながら教えてくれました。
 この数十年間、災害救助の現場やPKOでの活動などをみて、自衛隊についてのイメージが変わった僕のような人間は、少なからずいるはずです。
 もちろん、戦争はしたくないのだけれど、「戦争はやめよう」と言っているだけでは、戦争は防げない。
 さりとて、「抑止力としての軍備」が積み重なっていくと、いつか暴発する可能性が高い。
 軍隊ではなくて、災害救助隊みたいなものをつくれば良いのではないか、という議論もあるのですが、「緊急時に大きな集団として規律を持って活動し、補給路も確保する」というのがもっとも効率的にできるのは「軍隊」なのだ、というのも事実なのです。

「もし日本がどこかの国から攻撃されたら、日米安全保障条約があるのだからアメリカ軍が守ってくれるはず」
 こう思っている人はいませんか。
 でも、それは間違いです。最初に出動するのは自衛隊です。日本を守るのは自衛隊であり、その後、アメリカが助けてくれるという構図になっています。
 では、自衛隊は一体どうやって日本を守っているのか。それをこれから見ていきます。まず基礎中の基礎を確認しておきましょう。自衛隊はどれだけの人数で日本を守っているのでしょうか。
 現在(2017年3月31日時点)の自衛官の人数は、22万4422人。このうち女性自衛官が1万3707人です。


 いざとなったら、アメリカ軍が守ってくれる、と僕も思いたいけれど、最終的にはアメリカ軍が出てきて戦ってくれるとしても、いきなり矢面に立ってくれるわけではないのです。まあ、それはそうですよね。向こうからしてみれば、停滞が続いているとはいえ、日本は世界有数の経済大国だし、戦う能力も持っているのだから。


 中学生くらいのときに、「日本は戦争をしないと言いながら、世界で10本の指に入るくらいの軍隊を持っている」という話を先生から聞いた記憶があるのです。
 その先生は、「戦争をしない国」のはずなのに、と嘆いていたんですよね。
 この本のなかで、アメリカの軍事力評価機関であるグローバルファイアパワー(GFP)が年に一度、軍人の数や装備、予算など50の指標から算出した「世界の軍事力ランキング」というのが紹介されています。


 日本は、何位だと思いますか?
 この「世界の軍事力ランキング」では、日本は「7位」にランクされているのです。
 1位はアメリカ、2位ロシア、3位中国、4位インド、5位フランス、6位イギリス。
 日本は7位で、以下、トルコ、ドイツ、イタリアと続きます。
 日本の7位というのは、経済力を考えると、抑えめではあるのかもしれませんが、それでも、自衛隊は「これだけの戦う力を持っている」のです。
 軍隊としての弱点といえば、核兵器を持っていないことと、実戦経験に乏しいことなのですが、それは、日本が平和を享受してきたことの証でもあるのですよね。
 

 この本のなかでは、実際に自衛隊(陸上・海上・航空)の基地を可能な範囲で取材して、その様子をレポートしています。
 これこそ、テレビ番組でみておきたかった、という感じがします。
 人や戦闘機の動きというのは、文章で読むより映像で観たほうが、ずっとわかりやすいので。


 航空自衛隊の吉田昭則1等空佐は、池上彰さんと佐々木恭子アナウンサーの取材に、こんな話をされています。

佐々木恭子隊長が着てらっしゃる服の胸のワッペンがすごい。


池上彰ちょっと、これはドクロじゃないですか。


吉田1等空佐:これは、われわれの部隊が創設された当時から、「空中戦に白旗はない」「負けたらこれになるぞ」という意味を込めて、このマークをわれわれは採用しております。


池上:戒めになっているんですね。こちらの右腕のワッペンは?


吉田:コブラは……


池上:コブラなんですね、これは。


吉田:飛行機の尾翼にもコブラのマークがありますけど、これはキングコブラでして、必殺の毒を持っていることと、非常に知能が高いこと。もう一つは、コブラは頭の後ろに目のような模様があるのですが、それをわれわれ戦闘機のパイロットは非常に重要視しています。チェックシックスといって、後ろの警戒を怠らないこと、後方確認です。だいたいこの三つの意味を込めてコブラを採用しています。


 ああ、当たり前なんだけど、やっぱり、「軍隊」で、おとなしい動物のマークじゃなくて、闘争心をかき立てることも必要なんだよな、と思いながら読みました。
 戦う覚悟がなければ、戦闘機乗りとしては、やっていけない。


 いまの日本にとって、いちばん不安な存在は北朝鮮なのですが、その北朝鮮が日本を攻撃してくる可能性について、池上さんは、こう考えておられるようです。

 ここで押さえておきたいのは、もし北朝鮮がどこかを攻撃するとなれば、アメリカ軍が反撃すると北朝鮮はわかっているわけです。そんなときに「まず日本から攻撃しますか?」という話です。
 北朝鮮にとって一番怖いのはアメリカです。狙うとすれば、まずは日本海にいるアメリカ軍の空母であり、韓国にあるアメリカ軍基地であり、次は韓国軍です。
 その次にくるのが日本にあるアメリカ軍基地です。このように考えれば、優先順位はずっと下になります。
 そして、もし日本にいきなり攻撃を仕掛けたら、当然、アメリカ軍の反撃を受けることになり、そのときは北朝鮮という国が地上から消えて無くなることは、彼らもわかっています。
 だとすると、いきなり日本にミサイルが飛んでくるということは、あまり考えないほうがいいのではないか。「不安だ、不安だ」と心配を募らせるのではなく、もう少し冷静に見たほうがいいだろうと思うのです。
 北朝鮮も、限られた数のミサイルをどのように使うかは、当然、優先順位はあるはずです。日本の優先順位は他よりも低いということは、とりあえず知っておいたほうがいいでしょう。


 たしかにそうだよなあ、北朝鮮にとっては、日本に核ミサイルを撃ち込んでも、それをきっかけにアメリカ軍が押し寄せてきて、ジ・エンドになることは確実でしょう。
 とはいえ、「合理的に考えれば、日本を攻撃する優先順位は低い」はずなのだけれど、何をやってくるかわからない怖さはありますよね。
 結果的に北朝鮮の体制が崩壊するとしても、日本としては、その過程で北朝鮮の核ミサイルによって、多大な犠牲を出してしまうわけにはいかないのだから。


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